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建築とデザイン

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土壁の記録①「左官」のものづくりを現代のオフィスビルに蘇らせる

土壁の記録①「左官」のものづくりを現代のオフィスビルに蘇らせる

吉野杉の丸太が取付けられた日のこと。

現場では、様々なことが同時並行して進んでゆきます。
この日は、デザインパートナーである建築家の川島範久さんと「土壁」についての相談が行われていました。

今回は、外観と内部に異なる土壁を塗ります。
足場に出て吉野杉とのバランスを見たり、また様々な場所の自然光の中でどのように見えるか丁寧に確認しながら、色味と質感を決定しました。

なぜ土壁を使用するのか「人に

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GOOD CYCLE BUILDING、はじめます。

GOOD CYCLE BUILDING、はじめます。

みなさんはご存知でしょうか?

今、あなたのいる建物の、壁や柱が何からできているのか。
その材料はどこから来て、
その家具は誰が組み立てたのか。
そして、その建物が壊される時、どこにいくのか?

総合建設会社の淺沼組は現在、築30年の名古屋支店のリニューアルにおいて新たな挑戦をしています。名古屋支店がどのような思いによって、実際に作られ、育っていくのか。
このnoteでは、ものづくりの原点に立ち返

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循環することと、建築について

循環することと、建築について

アートビオトープ 水庭にて那須塩原にあるart biotop「水庭」に訪れた時、印象的だったのは静かな森の中で聞こえてくる「ポコポコポコ」という水の音だ。
ここは、建築家、石上純也によって作られた約160個の池からなる人工的な庭。かつて水田だった土地に、大きさや形状の異なる池と、318本の木々が移植され作り上げられた。
この「ポコポコポコ」という水の音は、近くを流れる川から水を引いて池に流される水

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人は「土から離れて生きられない」ラピュタでシータが言ったこと。

人は「土から離れて生きられない」ラピュタでシータが言ったこと。

【鴨川古民家再生プロジェクト①】出会い

2021年、年が明けて私はふとこの言葉を思い出した。

人は、「土から離れては生きられないのよ。」

これは宮崎駿監督の『天空の城ラピュタ』でシータが言うセリフ。
改めてこの言葉を思うと、今、まさに人は「土と共に生きる」ことを再び取り戻す時代なのではないかと感じる。
2020年、パンデミックの影響で都市から田舎へ移住する人、移住まで行かずとも、キャンプが出

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渋谷に文化をつくった男

渋谷に文化をつくった男

引っ越しの荷物を纏めて本棚の整理をしていた時、特別な思いを持って久しぶりに手に取った2冊の本がある。
2冊とも、書いたのは別々の人だけど、両者とも私にとっては生前とても近くにいた人物だ。
一人は、元東急文化村の社長、文化村開発の中心人物で、渋谷に文化をつくりあげた田中珍彦さん。もう一人はスーパーポテトの創設者、無印良品のブランドや日本のインテリアデザインをつくりあげたうちの一人である杉本貴志さんだ

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開業「THE AOYAMA GRAND HOTEL」   バレリーナの夢の跡

開業「THE AOYAMA GRAND HOTEL」 バレリーナの夢の跡

私が舞台女優をしていた頃、ミュージカル女優という枠なのに踊りの苦手な私は、必死にバレエのレッスンに通っていた。
場所は青山にある「ベルコモンズ」へ。
ここ、ベルコモンズの上階にあった「青山ダンシングスクエア」は故・小川亜矢子先生が日本で初めてチケット制で、様々なジャンルが習えるダンススタジオを開いた場所。

沢山の女優やバレリーナが、大舞台に出ることを夢見て通った場所。
私は、先生の凛とした美しさ

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虎屋のある景色  デザインを巡る、場所と時間の旅①

虎屋のある景色  デザインを巡る、場所と時間の旅①

富士山に向かうと心が弾む。どこに行くのにも、旅は心弾むものなんだけど、東名高速で静岡方面に向かっていて、突如そこに富士山の形を見つけた時、必ず「富士山だ!」と言ってしまう。それが、バスに乗って一人で移動していても隣の人に共有したくなって、そんな自分を律しながら携帯を取り出し写真を撮る。
私が御殿場に訪れたこの日は、まだ梅雨明けが待ち遠しい、霧雨のけむる日。その日は生憎富士山の姿を拝めなかったけれど

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ストーリーをつくる建築デザイン。今、環境にも人にも寄り添う建築が求められること

ストーリーをつくる建築デザイン。今、環境にも人にも寄り添う建築が求められること

昨日、小学校の同級生が建築と内装を設計した、中規模オフィス賃貸ビルの内覧をさせてもらったのでレポート。
高校時代、二人で地元のケンタッキーで自習していた時から何十年。
彼は東大出て、アメリカの大学行って、東工大で助教をして現在明治大学で教鞭をとる建築家になりました。
元々、環境に配慮した建築の研究を行っており、その検証に基づいた設計を行ってきました。SDGsが声高に唱えられ、私たち設計事務所でも環

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石と水、空間デザインのイマジネーション

石と水、空間デザインのイマジネーション

「行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。世の中にある人とすみかと、またかくの如し。」(鴨長明『方丈記』)
鎌倉時代初期に書かれた方丈記は古典三大随筆の一つである。
鴨長明の生きた時代は、源平の争乱があり、福原遷都があり、安元の大火あり、震災、飢饉と、、度重なる人災天災に見舞われた。その中で、鴨長明は賀茂川のほとりに小さな

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