マガジンのカバー画像

ケンヨウの階層

68
自分自身に関わる文章を書きとめていきます。仕事のこと、生活のこと、いま夢中なことなど僕自身についてです。
運営しているクリエイター

#日記

[ちょっとしたエッセイ] 知らない場所へ、旅したい

[ちょっとしたエッセイ] 知らない場所へ、旅したい

 朝の駅のホームで満員電車に乗り込むことをわかっていて、並ぶ乗車列はつらい。たかただ20〜30分だからといって、この疲労感、疲弊感は朝に経験するには早すぎる。せめて、これを過ぎたらあとは寝るだけとなればいいのにと祈りながら、実際はこれが1日のスタートの号砲なのである。乗車列に並んでいると、反対側のホームはガラガラで、東京に向かう自分とは違う静かな雰囲気に、あちら側に行きたい衝動に駆られる。目的なん

もっとみる
[ちょっとした短歌を]2024年を迎えて

[ちょっとした短歌を]2024年を迎えて

風が吹き
見えた余白に傷痕が
残したくないあってよかった

時のスピードは、相も変わらず人の気も知れずに過ぎてゆく。
そんなことを思いながら1日が過ぎ、気がつけば年を跨ぐグラデーションは、あっという間に2024年の感じにシフトしている。もう数日過ごせば、もう完全に23年は過去になる。
40代も半ばを迎えて、改めて人生の後半戦を始めるにあたり、さて「どう生きるか」を少しずつ命題にすることが必要になっ

もっとみる
[ちょっとしたエッセイ]光と闇と

[ちょっとしたエッセイ]光と闇と

 今年はいつもよりあたたかな12月で、つい先日まで本当に寒いと思える日はいつも以上に少なかったが、ここ1週間くらいは底冷えで、あ、いつもの冬がやってきたな感が出てきた。そのせいで、いつもより遅くなったが、クローゼットの奥からヒートテックのタイツを引っ張り出して、これでようやく冬の準備が完了したような気がした。そして、気がつけば今年も終わりつつある。
 この季節は寒さと相まって、いろいろと昔のことを

もっとみる
[ちょっとしたエッセイ]寝ることが、もったいなかったあの頃

[ちょっとしたエッセイ]寝ることが、もったいなかったあの頃

 先日、久しぶりに食事をしながら眠ってしまった。とは言っても、一瞬意識を失った程度のもので、ガクンと目の前が上下する現象に見舞われてことなきを得た。しかし、食事をしながら寝落ちとは、学生時代の2徹明けの吉野家以来だった。
 とにかく、最近眠い。酒を飲もうことなら、すぐに酔い、横になった瞬間に寝られる自信がある。この週末も朝に起きられず昼まで寝て、起きてまたボーッとしていたら、夕方になっていた。天井

もっとみる
[ちょっとしたエッセイ]メコンで泳ぐ、いつまでも

[ちょっとしたエッセイ]メコンで泳ぐ、いつまでも

 「今年は例年になく猛暑だった」と、方々のメディアで取り上げられ、確かに気温も数字として高くて、いつも以上に暑かったのだと思わせられる2023年の夏だった。ジリつく暑さは、暑いといった感情よりも、息苦しいとかそういった類の苦しさに近いもので、サウナの中にいるような(そんなにスッキリするようなものでもないが)、我慢を糧に生きるような日々だったように感じる。世界の人口は80億人を超え、僕が記憶している

もっとみる
[ちょっとしたエッセイ]忘れてもいい日に

[ちょっとしたエッセイ]忘れてもいい日に

 僕らは毎日さまざまな人の記憶をスルーして生きている。こう書くと聞こえが非常に悪いが、今日が、隣のあの人の記憶に残る日であっても、それを共有していない僕が、それに気がつくことはほぼ無理である。そう考えると、お互いに知らないことを前提に生きている。
 
 先日、友人とふたりで新宿三丁目で仕事終わりに一杯やっていた。40代のおじさん二人で、なんだか人生後半戦についてシメっぽい話をしていると、隣ではスー

もっとみる
[ちょっとしたエッセイ]うれしさは伝染しやすい

[ちょっとしたエッセイ]うれしさは伝染しやすい

 毎朝、満員電車に乗りながら本を読むのを日課としている。ただ、扉の脇を陣取った時は、車窓の外を見ながらボーッとするのも悪くない。西東京の彼方に住んでいると、今日みたいなよく晴れた日には、富士山が見える。末広がりに延びる山肌には、白い雪化粧。同じ景色を見てる人がいるかもしれないと、辺りを見渡してもほぼほぼみんな目線は下にあり、スマートフォンに夢中になっている。そして漏れなくイヤホンもしている。キレイ

もっとみる
[ちょっとしたエッセイ]六本木という街に騙される日々

[ちょっとしたエッセイ]六本木という街に騙される日々

 先日、久々に六本木を訪れた際、休憩にと駅前の喫茶店に入った。ここは駅前の割に、結構広くゆったりしているので、ちょっとした打ち合わせなどで長居するにはもってこいの場所だった。ただ、古い佇まいと、土地柄か、スーツの人とラフな私服の人のペアが多く、なんだか胡散臭いさは拭えない。でも、ひとりでゆったりするには良い場所だった。
 運ばれたコーヒーを飲みながら、あたりを見回していると、背筋をピンとしながら項

もっとみる
[ちょっとしたエッセイ]30数年、歳月人を待たず

[ちょっとしたエッセイ]30数年、歳月人を待たず

 ふと、思い立って、歩道橋から僕はシャボン玉を吹いていた。
 時は夕方、これだけのために100均でキットを買って、ここまでやってきた。
 トントンと、吹き口を液体につけ、咥えてやさしく吹く。徐々に息を強めに出す。上手く吹けると、信じられないくらいにシャボン玉が連続して空へ舞い上がる。
 側道を歩く若い女性たちが、空に指を差しながらうれしそうな声をあげているが、こちらを見ると、目線を外してそのまま過

もっとみる
[ちょっとしたエッセイ] 忘れられない空

[ちょっとしたエッセイ] 忘れられない空

 気がつけば、当然のように12月も半ばが過ぎた。終わりのないように思えた仕事も、途中であっても時が待たず、終わらせるしか選択肢がなくなり、そんな中でも気持ちだけは年末モードになる。そして、あらゆることが年末という言葉に浄化あるいは免罪化されているように見える。すると、それを目的とする勢力も笑顔で現れ、会社の中がカオスと化す。
 まあ、そんないつもの年の瀬の風物詩に呆れ果てながら、会社の屋上へ出て、

もっとみる
[ちょっとしたエッセイ]知らなすぎた人を想う

[ちょっとしたエッセイ]知らなすぎた人を想う

 かつて。とかいうには少し大袈裟なのだが、今の時代から遡った時の変遷で考えると、かつてと言ってもいいくらい生活の多くが変化した。その、「かつて」の時代に、僕は文通をした経験がいくつかある。
 どれも携帯電話が普及していない時で、今よりも「手紙を認める」ことに時間を割いていた。僕は手紙を書くのが苦手なので、1通の手紙を書くのに、何枚も何枚も便箋を破っては捨てていたのを覚えている。でも、書きたい衝動は

もっとみる
[ちょっとしたエッセイ]「行かなきゃよかった」でもそれはたぶん嘘

[ちょっとしたエッセイ]「行かなきゃよかった」でもそれはたぶん嘘

 先日、会社を休んで都内の大学病院で検査を受けてきた。ここのところ、体からジワッとしたSOSが出ていたのかもしれない。人生も半ばを過ぎて、五体「超」満足というのは、土台無理な話で、どこかしこにちょっとした不安の塊を抱えながら生きる方が普通だろう。少し諦めに似た感情で、検査を受けてきた。
 終わったのが昼前だったので、病院のある場所から最寄の不便な地下鉄には戻らず、フラフラと散歩がてらアクセスのよい

もっとみる
[ちょっとしたエッセイ]計画のその先にあるもの

[ちょっとしたエッセイ]計画のその先にあるもの

 先日、小雨の降る街中を急ぎ足で歩いていると、電柱の脇にふと怪しく淡い色で光るものが目に入った。それはずいぶんと懐かしく、立ち止まってしまった。
 最近は特に減少傾向だろう「それ」は、昔のままの姿で立ちすくんでいる。僕の腹くらいまである1本足になんとなく不安定さが拭えないその自販機は、昭和世代の人間なら「ああ、あったね」とか懐かしんで言える「それ」である。
 でかでかと主張するそのコピーは、未だ健

もっとみる
[ちょっとしたエッセイ]逆巻く波間の小舟の上で1000年

[ちょっとしたエッセイ]逆巻く波間の小舟の上で1000年

 実は直前まで躊躇していた。人混みは嫌いじゃないんだけど、どうも…というテンションだった。 半袖を着ようか、長袖にしようか、そんな迷いもあったからかもしれない。ただ、これまでもそうやって何度も、言い訳ばかり並べて実現していなかったのだから、今回は…と重い体を引きずった。
 
 東京の湾岸は強烈な暑さだった。普段は、内勤ばかりで外気から逃れた生活を送っているわけだが、こういう休みの日の外出ほど、体に

もっとみる