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ケンヨウの階層

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自分自身に関わる文章を書きとめていきます。仕事のこと、生活のこと、いま夢中なことなど僕自身についてです。
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記事一覧

[ちょっとしたエッセイ]世界の片隅でもやっぱり孤独だった

[ちょっとしたエッセイ]世界の片隅でもやっぱり孤独だった

 先日ニュースを見ていたら、東京での若者の孤独死が、この3年間で700名を超えたという話題を目にした。老年層の孤独死が増えてるいるのは前々から問題となっていたが、若年層においても孤独死が増えていることに、なんだか居た堪れなくなった。背景には、社会との接点や関係を断ち、生活能力や意欲を失ってセルフネグレクトに陥っているということがあるらしい。これだけ人がいる場所で、そんな事実があることにどこか驚くと

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[ちょっとしたエッセイ] エスカレーター・ラブレター

[ちょっとしたエッセイ] エスカレーター・ラブレター

 夕方に外で打ち合わせがあったので、今日はこのまま会社に戻らず、仕事を終えることにした。最寄駅についたのは午後5時過ぎ。このまま家に帰るのは少しもったいない気がして、駅中にあるファストフード店でコーヒーでも飲むことにした。夕方なのにも関わらず、外の気温は30度を越している。季節のスイッチが壊れているような、初夏の一日。夏はこれからなのに、すでの残暑のような厳しさが背中から押し寄せていた。冷房の効い

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[ちょっとしたエッセイ] 僕らは、ちいさな安心のために生きている

[ちょっとしたエッセイ] 僕らは、ちいさな安心のために生きている

 仕事柄、深夜にメールが届くことがしばしばある。内容にもよるが、すぐに返信してしまうことが多い。特に、フリーランスの仕事相手には、すぐ返信してあげた方がいい場合が多い。担当者として、一区切りの合図というものがあると、お互いに安心するからだ。
 先日、深夜2時に届いた、とあるデザイナーから少し様子の変なメールが届いた。ひと通り依頼している制作物のデザインのことが書かれていたのだが、最後に「今日は星が

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[ちょっとしたエッセイ] 世界はなんでもいいであふれてる

[ちょっとしたエッセイ] 世界はなんでもいいであふれてる

「今日なんにする?」と聞くと、「なんでもいい」と言う。
「映画なに見る?」と聞かれると、「なんでもいい」と答える。
 日頃から、自分の周りで飛び交う会話の一部というか、すべてというか、大体のどうでもいい会話に蔓延る「なんでもいい」。昨日入った喫茶店でも、隣にいた若い女性がスマホを見ながら、目の前に座る彼の問いに、目も見ずに「なんでもいい」と答えていた。
 この「なんでもいい」は結構な意思表示なんじ

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[ちょっとしたエッセイ]なんで昼食わないんですか?

[ちょっとしたエッセイ]なんで昼食わないんですか?

「なんで昼食わないんですか?」
 後輩に聞かれた。僕は普段、あまり昼食を摂らない。どうしてそうなったかは置いておいて、もうそうなって4〜5年になる。今じゃ、「お腹がすかない」とか「面倒くさい」とか、至極単純な理由になっている。
「お腹空かないんだよね」と答えることが多い。でも食べたくないわけではなく、外へ誘われれば行くこともある。なので、結局どっちでもいいが正解で、でもひとつだけ、昼休みにはやって

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[ちょっとしたエッセイ] 知らない場所へ、旅したい

[ちょっとしたエッセイ] 知らない場所へ、旅したい

 朝の駅のホームで満員電車に乗り込むことをわかっていて、並ぶ乗車列はつらい。たかただ20〜30分だからといって、この疲労感、疲弊感は朝に経験するには早すぎる。せめて、これを過ぎたらあとは寝るだけとなればいいのにと祈りながら、実際はこれが1日のスタートの号砲なのである。乗車列に並んでいると、反対側のホームはガラガラで、東京に向かう自分とは違う静かな雰囲気に、あちら側に行きたい衝動に駆られる。目的なん

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[ちょっとしたこと]気づけば春だったよ

[ちょっとしたこと]気づけば春だったよ

「春に疎い」のは、仕事柄、いや勤めている会社のせいだと思っている。なにせ一般的な会社と比べて会計期が3月で終わらない会社であるためである。それは仕方がない。晴れやかに迎える4月がないことは、季節感を失わせるには十分すぎる。
 今朝、電車に乗ると他人事の世界で新しく生きる新社会人を何人も見かけた。見ていて清々しい。他人事の世界ではフレッシュな人たちが大いに会社を盛り上げてくれるだろう。そんな自嘲を込

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[ちょっとしたエッセイとおしらせ]一寸先にある未来

[ちょっとしたエッセイとおしらせ]一寸先にある未来

 昨年末、1カ月ほど、ちょっとしたアルバイトをいた。年の瀬の週末だけの、なんだか特別な時間に働くのはなんだか悪くないといのが、働き終わっての感想だ。
 電車に乗って、各駅停車しか停まらない駅で降りる。仕事場は、住宅街の中にある古い木造の家で、ガラガラと扉を引くと、ミシンの音とシンナーの香りがした。仕事内容は至ってシンプルで、ハサミで革を切り、仮止めのためのテープを貼ったり、たぶん教えられれば誰でも

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[ちょっとしたエッセイ] 深夜に思い出すのはいつも

[ちょっとしたエッセイ] 深夜に思い出すのはいつも

 noteで詩を書く人の作品を読んでいると、7〜8割くらいの作品が「恋」や「愛」について書かれている、もしくはそれらを想起させる言葉が散りばめられている。男女問わず、いかに「恋」や「愛」が人の心をトリコにしているかがわかる。
 それらを読んでいると、時にはくすっとしてしまったり、時にはなんだか心をくすぐられたり、時には、自分とは正反対の方法におどろいたりと、人の恋というものは奇想天外で、自分とは違

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[ちょっとしたエッセイ] 渡り廊下とルサンチマン

[ちょっとしたエッセイ] 渡り廊下とルサンチマン

 記憶に残るものは、どんなことがあっても何かの拍子に思い出すことが必ずある。それがどんなに忘れたいことであっても、生きている限りは仕方ないのかなと思ったりもする。
 長かった、夏とも秋とも言えない季節が終わり、ようやく冬の兆しが見えてきた12月のある平日の夕方、家の近所にある学校の脇を歩いていると、学校の裏門と見受けられる場所で、3人の学生が1人の学生にカバンを振り回して当てている光景に出会した。

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[ちょっとした短歌を]2024年を迎えて

[ちょっとした短歌を]2024年を迎えて

風が吹き
見えた余白に傷痕が
残したくないあってよかった

時のスピードは、相も変わらず人の気も知れずに過ぎてゆく。
そんなことを思いながら1日が過ぎ、気がつけば年を跨ぐグラデーションは、あっという間に2024年の感じにシフトしている。もう数日過ごせば、もう完全に23年は過去になる。
40代も半ばを迎えて、改めて人生の後半戦を始めるにあたり、さて「どう生きるか」を少しずつ命題にすることが必要になっ

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[ちょっとしたエッセイ]光と闇と

[ちょっとしたエッセイ]光と闇と

 今年はいつもよりあたたかな12月で、つい先日まで本当に寒いと思える日はいつも以上に少なかったが、ここ1週間くらいは底冷えで、あ、いつもの冬がやってきたな感が出てきた。そのせいで、いつもより遅くなったが、クローゼットの奥からヒートテックのタイツを引っ張り出して、これでようやく冬の準備が完了したような気がした。そして、気がつけば今年も終わりつつある。
 この季節は寒さと相まって、いろいろと昔のことを

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[ちょっとしたエッセイ]寝ることが、もったいなかったあの頃

[ちょっとしたエッセイ]寝ることが、もったいなかったあの頃

 先日、久しぶりに食事をしながら眠ってしまった。とは言っても、一瞬意識を失った程度のもので、ガクンと目の前が上下する現象に見舞われてことなきを得た。しかし、食事をしながら寝落ちとは、学生時代の2徹明けの吉野家以来だった。
 とにかく、最近眠い。酒を飲もうことなら、すぐに酔い、横になった瞬間に寝られる自信がある。この週末も朝に起きられず昼まで寝て、起きてまたボーッとしていたら、夕方になっていた。天井

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[ちょっとしたエッセイ]メコンで泳ぐ、いつまでも

[ちょっとしたエッセイ]メコンで泳ぐ、いつまでも

 「今年は例年になく猛暑だった」と、方々のメディアで取り上げられ、確かに気温も数字として高くて、いつも以上に暑かったのだと思わせられる2023年の夏だった。ジリつく暑さは、暑いといった感情よりも、息苦しいとかそういった類の苦しさに近いもので、サウナの中にいるような(そんなにスッキリするようなものでもないが)、我慢を糧に生きるような日々だったように感じる。世界の人口は80億人を超え、僕が記憶している

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