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ケンヨウの階層

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自分自身に関わる文章を書きとめていきます。仕事のこと、生活のこと、いま夢中なことなど僕自身についてです。
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記事一覧

[ちょっとしたエッセイ] 十人十色のエイリアンズ

[ちょっとしたエッセイ] 十人十色のエイリアンズ

 会社の屋上に上がった。すこし厚めの扉を開けると。風がワーっと吹き荒んだ。夏のある日。空を見上げると、雲がもくもくと奥の方に広がっている。雨の気配はなく、青空はいつも以上に青かった。すると、北の方角からまっすぐ南の方へ進む飛行機が、頭上を駆けた。するとそんな間隔も空けずに、また大きな飛行機が続くように空を駆けていた。しかし音もなく進むその鉄の塊は、どこかこの世のものではないような気がした。

 先

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[ちょっとしたエッセイ] 僕に東京を教えてくれる人は、もういない

[ちょっとしたエッセイ] 僕に東京を教えてくれる人は、もういない

 とある休みの日。急に暇な時間ができたので、スマートフォンでどこに行こうか調べていた。渋谷や新宿、上野…いや面倒くさいな。時計をぼーっと見ながら出掛けあぐねていた。でも、せっかくできた時間だからと、とりあえず外へ出て電車に乗り込む。電車に乗れば、ものの数十分程度で大きな街へ出られる。東京近郊に住んでいると、娯楽には困らない。結局、映画館にふらっと入り、終わったら近くのカフェでお茶を啜り、優雅な時間

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[ちょっとしたおしらせ] ケンヨウ、ZINEはじめたってよ

[ちょっとしたおしらせ] ケンヨウ、ZINEはじめたってよ

 たぶん誰も気にもしていないだろうと思いますが、今年のはじめの投稿で、ひっそりとしめやかに宣言したこと。あれからずいぶんと時が経ってしまい、当初の予定である春は過ぎ、いつも以上に暑い今夏、ようやく宣言していたZINEが出来上がりました。
 先日の投稿で一応のお知らせをさせていただきましたが、販売窓口の方の準備も整いましたので、改めてお知らせいたします。

 僕が、初めてnoteへ投稿したのは、40

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[ちょっとしたエッセイとおしらせ] 夏は嫌いだったけど

[ちょっとしたエッセイとおしらせ] 夏は嫌いだったけど

 夏も本番を迎えて、なんだかじっくりと煮込まれる鍋にいるような感覚を覚える。今年も暑いな、そんなことを毎年言っているような気がするけど、実際はどうなんだろう。よくわからない。けれども、なんとなく夏を過ごしていると「ああ、生きてるな」っていう得体の知れない生命の本音のようなものが体に流れてくるから不思議だ。暑すぎて、何にもしなくても、暑さから命を守る生物の本能的なものなのかもしれない。仕事をしていて

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[ちょっとしたエッセイ]世界の片隅でもやっぱり孤独だった

[ちょっとしたエッセイ]世界の片隅でもやっぱり孤独だった

 先日ニュースを見ていたら、東京での若者の孤独死が、この3年間で700名を超えたという話題を目にした。老年層の孤独死が増えてるいるのは前々から問題となっていたが、若年層においても孤独死が増えていることに、なんだか居た堪れなくなった。背景には、社会との接点や関係を断ち、生活能力や意欲を失ってセルフネグレクトに陥っているということがあるらしい。これだけ人がいる場所で、そんな事実があることにどこか驚くと

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[ちょっとしたエッセイ] エスカレーター・ラブレター

[ちょっとしたエッセイ] エスカレーター・ラブレター

 夕方に外で打ち合わせがあったので、今日はこのまま会社に戻らず、仕事を終えることにした。最寄駅についたのは午後5時過ぎ。このまま家に帰るのは少しもったいない気がして、駅中にあるファストフード店でコーヒーでも飲むことにした。夕方なのにも関わらず、外の気温は30度を越している。季節のスイッチが壊れているような、初夏の一日。夏はこれからなのに、すでの残暑のような厳しさが背中から押し寄せていた。冷房の効い

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[ちょっとしたエッセイ] 僕らは、ちいさな安心のために生きている

[ちょっとしたエッセイ] 僕らは、ちいさな安心のために生きている

 仕事柄、深夜にメールが届くことがしばしばある。内容にもよるが、すぐに返信してしまうことが多い。特に、フリーランスの仕事相手には、すぐ返信してあげた方がいい場合が多い。担当者として、一区切りの合図というものがあると、お互いに安心するからだ。
 先日、深夜2時に届いた、とあるデザイナーから少し様子の変なメールが届いた。ひと通り依頼している制作物のデザインのことが書かれていたのだが、最後に「今日は星が

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[ちょっとしたエッセイ] 世界はなんでもいいであふれてる

[ちょっとしたエッセイ] 世界はなんでもいいであふれてる

「今日なんにする?」と聞くと、「なんでもいい」と言う。
「映画なに見る?」と聞かれると、「なんでもいい」と答える。
 日頃から、自分の周りで飛び交う会話の一部というか、すべてというか、大体のどうでもいい会話に蔓延る「なんでもいい」。昨日入った喫茶店でも、隣にいた若い女性がスマホを見ながら、目の前に座る彼の問いに、目も見ずに「なんでもいい」と答えていた。
 この「なんでもいい」は結構な意思表示なんじ

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[ちょっとしたエッセイ]なんで昼食わないんですか?

[ちょっとしたエッセイ]なんで昼食わないんですか?

「なんで昼食わないんですか?」
 後輩に聞かれた。僕は普段、あまり昼食を摂らない。どうしてそうなったかは置いておいて、もうそうなって4〜5年になる。今じゃ、「お腹がすかない」とか「面倒くさい」とか、至極単純な理由になっている。
「お腹空かないんだよね」と答えることが多い。でも食べたくないわけではなく、外へ誘われれば行くこともある。なので、結局どっちでもいいが正解で、でもひとつだけ、昼休みにはやって

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[ちょっとしたエッセイ] 知らない場所へ、旅したい

[ちょっとしたエッセイ] 知らない場所へ、旅したい

 朝の駅のホームで満員電車に乗り込むことをわかっていて、並ぶ乗車列はつらい。たかただ20〜30分だからといって、この疲労感、疲弊感は朝に経験するには早すぎる。せめて、これを過ぎたらあとは寝るだけとなればいいのにと祈りながら、実際はこれが1日のスタートの号砲なのである。乗車列に並んでいると、反対側のホームはガラガラで、東京に向かう自分とは違う静かな雰囲気に、あちら側に行きたい衝動に駆られる。目的なん

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[ちょっとしたこと]気づけば春だったよ

[ちょっとしたこと]気づけば春だったよ

「春に疎い」のは、仕事柄、いや勤めている会社のせいだと思っている。なにせ一般的な会社と比べて会計期が3月で終わらない会社であるためである。それは仕方がない。晴れやかに迎える4月がないことは、季節感を失わせるには十分すぎる。
 今朝、電車に乗ると他人事の世界で新しく生きる新社会人を何人も見かけた。見ていて清々しい。他人事の世界ではフレッシュな人たちが大いに会社を盛り上げてくれるだろう。そんな自嘲を込

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[ちょっとしたエッセイとおしらせ]一寸先にある未来

[ちょっとしたエッセイとおしらせ]一寸先にある未来

 昨年末、1カ月ほど、ちょっとしたアルバイトをいた。年の瀬の週末だけの、なんだか特別な時間に働くのはなんだか悪くないといのが、働き終わっての感想だ。
 電車に乗って、各駅停車しか停まらない駅で降りる。仕事場は、住宅街の中にある古い木造の家で、ガラガラと扉を引くと、ミシンの音とシンナーの香りがした。仕事内容は至ってシンプルで、ハサミで革を切り、仮止めのためのテープを貼ったり、たぶん教えられれば誰でも

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[ちょっとしたエッセイ] 深夜に思い出すのはいつも

[ちょっとしたエッセイ] 深夜に思い出すのはいつも

 noteで詩を書く人の作品を読んでいると、7〜8割くらいの作品が「恋」や「愛」について書かれている、もしくはそれらを想起させる言葉が散りばめられている。男女問わず、いかに「恋」や「愛」が人の心をトリコにしているかがわかる。
 それらを読んでいると、時にはくすっとしてしまったり、時にはなんだか心をくすぐられたり、時には、自分とは正反対の方法におどろいたりと、人の恋というものは奇想天外で、自分とは違

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[ちょっとしたエッセイ] 渡り廊下とルサンチマン

[ちょっとしたエッセイ] 渡り廊下とルサンチマン

 記憶に残るものは、どんなことがあっても何かの拍子に思い出すことが必ずある。それがどんなに忘れたいことであっても、生きている限りは仕方ないのかなと思ったりもする。
 長かった、夏とも秋とも言えない季節が終わり、ようやく冬の兆しが見えてきた12月のある平日の夕方、家の近所にある学校の脇を歩いていると、学校の裏門と見受けられる場所で、3人の学生が1人の学生にカバンを振り回して当てている光景に出会した。

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