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袖振り合うも多生の縁

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記事を取り上げていただいたり、画像を使用していただくと、ちょっぴり嬉しい気持ちになりますので、こちらにまとめさせていただきます。
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#小説

【ショートショート】グミ

【ショートショート】グミ

「ただいま」
 私はリビングのソファに腰かけ、テレビをつけた。
「お、グミか。懐かしいな」
 ローテーブルの上にあった袋をあけると、なかに入っていた細長いグミをいくつか取り出して口に含んだ。
 そのままニュースを見ていると、階段から降りてきた息子が私の姿を見て、
「ひっ」
 と叫んだ。
「おとうさんがグミを食べた-」
 シャワーを浴びていた妻もやってきて、
「なんてことをするの」
 と鬼の形相にな

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『その名も”不謹慎カフェ"』

『その名も”不謹慎カフェ"』

脱サラをして

夢だったカフェを開いた

この俺のことだ

そこらのカフェとは

一線を画す

その名も”不謹慎カフェ"

色々な体験型カフェが

巷を賑わせていると思う

そんななか

俺が思いついたのは

不謹慎な光景を見ながら

食事や雑談を楽しめる店

たとえば最初の企画はこれ

徳の高い坊さんを呼び寄せ

説法をしてもらうという趣旨

ところがそれは表向きで

店の庭先に落とし穴を掘って

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200.三題噺「現状維持、クエスト、小躍り」

200.三題噺「現状維持、クエスト、小躍り」

 放課後、僕は先輩と一緒に帰っていた。

「もうすぐ11月も終わりだね〜」

 先輩はなんとはなしに呟いた。

 12月がやってきて冬休みが明けてしまうと、三年生はほとんど登校しなくなる。

 一緒に帰れるのは、あと何回あるだろう。
 そんなことを考えると切なくなる。

 このまま卒業してしまって、疎遠になってしまうのかもしれない。

 時々近づく時はあるけど、僕と先輩の間はいつも拳ひとつ分。

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Beautiful

Beautiful

彼女は、いつも遅れてくる。

席に着くとシンハービールを頼んで、テーブルに無造作に置かれたメニューを取り上げた。パパイヤのサラダに生春巻、エビのレモングラス炒め。豚のから揚げは多分わたしだけが食べることになるだろう。

適当にオーダーしてビールをグラスに注ぎ、一気にあおって一息ついたころ、彼女がようやく現れた。綺麗に巻かれた栗色のロングヘアーに薄桜色のシースルーのシャツ、白い小ぶりなバッグを腕にか

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思いやり急便(中編)

思いやり急便(中編)

バイクを止め、辺りを見渡す。一面の田んぼに、のどかな風景が広がっていた。大きく深呼吸すると、僕の中にある毒のようなものが、一気に洗い流されていくようだった。そのくらい空気は澄んでいた。

畑の中に、何やら茶色の麦わら帽子が小さく揺れていた。よく見ると、座り込んで畑いじりをする70代くらいの女性がいた。
「あの!」
僕の声に気がつくと、その女性はゆっくり立ち上がった。
「杉村留子さんですか?」
少し

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思いやり急便(前編)

思いやり急便(前編)

「お待たせしました」
待ち合わせは、よくあるファミリーレストランだ。突然、ヘルメットを片手に現れた僕に、お店の客は驚きを隠せない様子で、視線を向けた。
「島村様はいらっしゃいますか」
窓際の席に座る男が、慌てて席を立つ。一緒に食事をしていただろう女性が、何事かと不思議そうな顔をした。
「あぁ、ちょっとこっちに」
女性に断りを入れると、男は、慌てた様子で僕の腕を引っ張った。女性から少し離れた瞬間、男

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イノベーターとしての資質が、逆に仇となる

イノベーターとしての資質が、逆に仇となる

もしかしたら、みなさんお忘れかもしれませんが、少年には「イノベーター」としての資質も備わっていました。

時代の先を読み、未来を見通す力。人と違った発想で、組織や世の中に革新をもたらす者。

たとえば、「学校や会社に通わず、家に居ながらにして学習や仕事を行う」というやり方。これは、未来においては採用されるでしょう。そういう意味では正解の1つです。でも、この時代、この考え方は「異端」とされていました

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いつもの

いつもの

「おばちゃん、いつもの」
「はいよ。えっと、サラリーマンセットだね」
「そそ」
「相変わらず、よく働くねえ」
「おばちゃんのおかげ。ここでいつも英気を養うから」
「ほんと、あんたは上手だねえ。えっと、今日は、『嫉妬』と『怨恨』がいいの入ったよ。活きが良くて。『後悔』をちょっとおまけしとくよ」
「ありがと。あ、『殺意』も付けてくれる?」
「なに、明日勝負かい?」

あなたへの情は密なのに、それ以外に薄くなるのは薄情なの?

あなたへの情は密なのに、それ以外に薄くなるのは薄情なの?

大切な人、知り合い、同僚、恋人、クラスメイト、師匠、取引先の人、ご近所さん。
私たちは様々な関係性の中で生きていて、その他者へ、情や想い・心配りをどれだけ、どんな風に分配させて注いで生きてるか。

*

今日も風埜いろはさんの投稿で響くものがありました。
いつも素敵なインスピレーションをくださってありがとうございます。

先日、ブルーインパルスが空を駆けた。
以前勤めていた職場の先輩が、その様子を

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つらいことは手放せられたら良いのにね。

つらいことは手放せられたら良いのにね。

つらいながらも抱えてしまってる自分の問題は、本当に手放せないものなのかな。
手放せるのに抱えてるのだとしたら、それは何故だろう。

*

いつも深い考察で、キレのいい文章を書かれてる風埜いろはさん。
読んでいてとても学びになることが多いです。

私は、自分の意思であえて「悩み」を抱えているのではないだろうか、と。
(中略)
大した悩みでもないというのが本当のところだが、解決できる方法を知っているの

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幸福

幸福

僕は麻雀が好きだ。
友達4人で折半して80万の全自動雀卓を買うくらいには

麻雀は良い。ゲームとしてとても奥深く出来ている。
打つのが好きな人とのコミュニケーションツールにもなるし、打ち方に性格が出るのもとても面白い。
そして何より初心者でも上級者に勝てる可能性がある。

どこかの記事の紹介で
「運と実力が最高の塩梅でミックスされたゲーム」
と言われていたような覚えがある。

麻雀然り、あらゆる物

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