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詩集

42
私の紡いだ言葉たち。 全部のせ。
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【詩】ピアノの木

【詩】ピアノの木

白鍵と
黒鍵と
それらがずらりと並ぶ八十八の玉座

そして
沈んだ鍵(けん)の窪みから
人の姿に似た木が芽吹く

ピアノから生まれた木は
母なるピアノに還るべく
八十八の玉座を尋ねる

その軌跡を律とし
隠されたパターンを解き明かした時
かの扉が開くのだ

そして
浮かんだ鍵(けん)の頂から
人の姿に似た木が還っていく

私の耳に残った響きは
その生命の旅路
私の心に残った響きは
その生命の循環

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【詩】鍵のない錠前

【詩】鍵のない錠前

僕を縛る苦い記憶
引き止める優しさに
「No」というナイフを突き立てた日

不思議な自信に溢れていた10代の終わり
僕の甘い言葉で引き寄せた人を
自ら辛い言葉で傷つけた日

10年以上も前 今でも思い出してしまう僕の罪
その罪悪感が鎖のように伸びて絡みつき
脳の深い場所でずっと外れないでいる

その鎖に下ろされた錠前の鍵が
いつまで経っても見つからない
仕事もし 結婚もし 子どもも生まれ
親という

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【詩】ずぶ濡れ

【詩】ずぶ濡れ

そっと差し出された傘を
私は受け取らない

他人の言葉の陰に身を寄せることなく
私は雨に打たれたい

そっと差し出された傘を
私は受け取らない

無遠慮に降り注ぐ雨に打たれるものたちと
私は同じ気持ちになりたい

そっと差し出された傘を
私は受け取らない

傷つけてしまったことを忘れぬよう
私はこの身を曝し刻みたい

そっと差し出された傘を
私は受け取らない

雨に打たれる姿が憫然たる有り様だとし

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【詩】お化けの皮

【詩】お化けの皮

社会に出れば
大人の 皮かぶり

家の中では
パパの 皮かぶり

家の外でも
ママの 皮かぶり

身ぐるみ
着ぐるみ 総ぐるみ

いくつになっても 大人のフリ
いつまで経っても 青春のまま

大人なんてナイさ
大人なんてウソさ

おどけたコドモが
皮かぶっただけさ

だけどちょっと、
だけどちょっと、

背伸びなんかしちゃって

偉くなんかないさ
歳食った

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【発露】居残り授業

【発露】居残り授業

詩を考えれば考えるほど
小学生の頃の
あの授業に引き戻される

よくあるテーマ
ただの授業の1コマ
それが私にとっては
生涯に渡って今も横たわっている大問題

私の授業は終わっていない

あれは50分経ったことを知らせただけのチャイム

いつも
いつまでも
小学生の私がいる

同じ疑問に今も首を傾げている

呆けるまで居座り続けるだろう

ここに帰ってくるたびに思い出す

書かねばと

理解された

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【詩】黄金の精神

【詩】黄金の精神

黄金の

気高さを撒き孤独に伏す

危うさを燃える煌きに隠す

柔く 柔く

金色の幕引き

すべてを覆い

翳りを生む

その暗がりで

私は佇む

黄昏れる貌が見えぬよう

眩く 眩く

閃光を間借りして

景色を溶かし

その金波の余韻を束ね

脆く 脆く

精神を織る

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

己の繊細さに悩むあなたは、きっと脆くも

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【詩】湖畔

【詩】湖畔

ある人は絵にしたらしい

ある人は詩にしたらしい

ある人は写真にしたらしい

ある人は音楽にしたらしい

ある人は涼みに来たらしい

ある人は泳ぎに来たらしい

ある人は釣りに来たらしい

ある人はキャンプをするらしい

ある人は何が棲んでいるか調べるらしい

ある人は大事な何かを落としたらしい

ある人はあの辺りで浮かんでいたらしい

ある人は恋をしているらしい

ある人は

湖は長い長いあ

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【詩】名札

【詩】名札

あそこを見てみなさい
言葉を覚えたばかりの人間が
こちらを仰いで
君たちをなんと呼べばいいものか
困っている
だから
ほら
名札をつけなさい
君は「月」
あなたたちは「星」
そこの大柄なのは「夜」
と神さまは用意した名札を渡しました

しばらくすると

聞いてください
わたし
「星」なのに
人間は
「ベテルギウス」って呼ぶんです
わきのしたって意味らしいです

報告する者が現れました

それを聞

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【詩】シルバニアファミリー

【詩】シルバニアファミリー

1歳の娘が
シルバニアファミリーの
パパを
しゅーっと
口をとがらせながら
背面へ放り投げた

1歳の娘が
シルバニアファミリーの
ママを
しゅーっと
元気よく発声し
側方へ放り投げた

残された
シルバニアファミリーの
娘は
家の中で
1人
散り散りとなった
家族を探さず
1人
声もあげずに
1人

突如訪れた
一家崩壊の危機に
やさしくほほえむだけ

この子の
パパと
ママが
私の
パパと

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【詩】サンタクロース/継承

【詩】サンタクロース/継承

サンタクロースを信じている

幼い日の記憶
クリスマスが近づくと
庭の木に紙を吊るした
欲しいものが書かれた
Wish List

叶うこともあれば
叶わないこともあった

暖炉も煙突もないから
寝室のある二階の窓から
侵入の痕跡がないか探った
すると
だいたい一階のどこかに
神秘のベールに包まれた
サンタの痕跡を発見する

逸る気持ちに従って
願いの結果を確認した

サンタクロースを演じている

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【詩】砂遊び

【詩】砂遊び

僕の手は
ちいさいから
足元の砂を
掬っては
家やら
山やら
団子やら
作っては
はしゃぎ
作っては
こわし
作っては
ひけらかし

黄昏がうんと
背伸びをする

みるみるうちに僕の姿は
大人と呼ばれる形になっ

次第におおきくなっていく手は
たくさん掴めるようになったから

ついめいっぱい広げるものだから
掬いたくないものまで握りしめ

山も森も川も町も人も営みも
節操なく根こそぎ掴み取

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【詩】ダム

【詩】ダム

堰き止められなかったものが
言葉になってこぼれて
滝のように
勢いよく放水されていく

お日様の機嫌が良ければ
虹がかかるかもしれない
放物線は嬉しそう

その華やかさとは反対に
しずかで
ふかくて
おおきくて
言葉にできなかった
今は何者でもないものたちが

まだかまだかと
外の世界を待って
このダムの裏側で
たっぷりと
ためられていく

ぼくのすみか
だったばしょは
とうのむかしに
そいつらの

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【詩】 3歳のクリスマス ―高階様のTweetより―

【詩】 3歳のクリスマス ―高階様のTweetより―

今回はX(Twitter)で目に留まった高階様のTweetを元に作成いたしました。
御本人の承諾のもと、Tweetのご紹介も含め詩を投稿いたします。

↓元ツイートです。

【詩】3歳のクリスマス
今年もクリスマス
毎年同じプレゼントを買っていく
君の大好きなトミカ
今年で29台目

喜んだ顔を思い浮かべる
29年経った今でも
君の笑顔は3歳のまま
あの時から
永遠に

来年はどんな車がいいかな

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【詩】“祈り”

【詩】“祈り”

かつて“祈り”は生き物だった
苦難に藻掻く人々の前に現れては
奇跡を振り撒き
邪気を退け
傷を癒やした

しかしある時
人びとは
“祈り”の
力を求め
締め上げ
血を抜き
身を洗い
毛を炙り
皮を剥ぎ
腹を裂き
腸を啜り
斧で断ち
肉を切り
鍋で茹で
喰らった

“祈り”の力を得たと言う人達は崇められ
大病が流行ると呆気なく死んでしまった

奇跡は
この苦しみは
私たちの命は
残された人々は血眼で

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