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東原そら
2021年1月31日 19:29
異世界転生したい。 月150時間のサービス残業に俺の心は破綻していた。 限界を迎え線路に飛び込むと、そこはファンタジーの世界だった。「勇者様お待ちしておりました」 俺は勇者と崇められ修行に励む。 月間550時間の修行は無報酬で無休。 得られるのは栄誉のみ。 ブラック異世界だった。
2021年1月31日 12:51
くだらない男。 校内でも指折りの美女に、デートで謂われのない烙印を押された。 汚名返上に、再度機会をくれと懇願した。 当日は家柄·容姿·成績と俺が他人よりいかに素晴らしい男かを説いた。 彼女は頬杖をついて気怠そうに言う。「本当にくだらない男」 彼女は一体何が気に入らないんだ。
2021年1月30日 19:11
嫁は影響を受けやすい。「主婦の呼吸/壱の型」と、今も流行り物にのせられている。 ある日『ゴースト/ニューヨークの幻』を観て、ボロボロと号泣していた。 その日の睡眠中、俺の腹に包丁が生えた。「死んで幽霊になって戻って来てね!」 意識が薄れる中「出来るかアホ」と心で絶叫した。
2021年1月30日 13:01
彼の体温は冷たい。 私も平熱は高くないけれど、彼はもっと低い。 手を握っても抱き締めても、温度は感じない。 それは彼も同じだと言う。 温もりがなにかわからないらしい。 私が落ち込む時、励ましてくれる。 側にいてくれる。 それ温もりだよ。 ヒトでなくても関係ない。 キミは人だよ。
2021年1月29日 19:26
雪が降ってきた。 もし彼らに命があるのならば、蟬より短い寿命だ。 かるい彼らは落下の衝撃は少ないだろう。 それでもきっと落ちると痛い。 私の手に落ちた彼は熱い湯を浴びたように、一瞬で儚い生涯を閉じた。 私は彼を殺めたのだろうか。 冬の妖精たちも、そう考えるとなんだか切ない。
2021年1月29日 12:23
社内で彼は「冷たい人」なのだそうだ。 会議で理路整然と相手を追い込み、仕事で困った人も助けないらしい。 なるほど。 話だけ聞くと冷たく感じる。 くだらない会議をビシッとまとめ、五時から男を無視し所定時間でサッと帰る。 家では子煩悩で家事大好き。 いったい彼のどこが冷たいのか。
2021年1月28日 18:47
好きな人は親友が好きな人だ。抜けがけは無しと約束した。でも告白したい。彼は親友に告白した。わたしは陰から見ていた。嬉しそうな親友。悔しさと喜びが混ざって胸が痛い。突然、親友が彼をビンタした。理由は私を貶したからだ。男はいらない。三十を超え、私達は今も一緒だ。
2021年1月27日 18:39
僕は男だ。 校舎の屋上から高らかに宣言したい。 かかとを浮かすことも、あごを上向ける仕草も、もううんざりだ。 一念発起して身長を伸ばす様々なトレーニングに励んだ。 半年が経ち計測すると成果は1mmだけだった。 よしよしがんばったと、彼女が頭を撫でる。 これは好きなんだよなぁ。
2021年1月26日 18:39
切り裂きジャックに憧れている。 現在でも様々な陰謀説が囁かれ、ミステリーファンとして胸が高鳴る。 冬の塾帰り。 私は背後から口を塞がれ、茂みに連れ込まれた。 男がかざすナイフは、月の光を浴びて夜空に二つ目の月を輝かせていた。 幸い目撃者がいて事なきを得た。 Fuck You!Jack!
2021年1月25日 19:41
幼馴染みはお互いに恋心を抱くのか。テーマを設定し、私達は協力して研究することにした。告白実験。デート実験。キス実験。S……実験。全ての実験が終了すると、互いに恋心が芽生えていた。論文を発表すると、その日のうちに停学処分が下された。中学生には最後が余計だったのだ。
2021年1月24日 19:25
自分で古風と自覚している。好きな唄は関白宣言。異動の辞令が下り、俺達は遠距離になった。だか愛する女は生涯お前ただ一人だ。ある日、サプライズで女の家を訪ねた。部屋には俺の知らない男。繕う女に罵声を浴びせ俺は去る。嫁に貰う前でよかった。あっちの女に逢いに行くか。
2021年1月23日 19:29
嫁は影響を受けやすい。「おかえり~お風呂?ご飯?それとも…」 いまは甘い新婚物の影響だ。 ドラマのクールが変わると、次は不倫物に熱を入れ始めた。「ちょっと!これなんなの?」 突然、派手な色のパブの名刺を出された。「おまえが用意した名刺…」 男が不倫するドラマのようだ。
2021年1月22日 18:35
「あんたバカぁ」 うちの嫁はいわゆるエヴァヲタクだ。 常々「あなたは死なないわ。わたしが守るもの」とモノマネで僕に言う。 ある日、隣の部屋で出火し延焼した。 嫁は僕には目もくれず一目散に逃げた。 おい、嫁! 幸い僕は救出され事なきを得た。 抱きつく嫁に僕は言う。「さよなら」
2021年1月21日 22:16
治は図書館が好きだ。 たっぷりの本が並ぶ壮大なパノラマ。 ふわりと漂う古書の香り。 それとなく手にとる本が語る心に響く言葉。 至高なる偶然の出会い。 今日もどんな出会いがあるか楽しそうにしている。「また来てる」「いつもニヤっとしてキモイよね」 表情の評判は度し難いようだ。