独りぼっちの神様は自分の理想とする完璧な女性を作った。そして恋をした。 彼女が生きていく上で何不自由ない様、美貌に賢さに富と名声を与え、彼女を遠くから愛した。 しかし本能的に彼女も恋をした。 神様が作った神父の男性に。 そして、2人は教会で結婚した。 神様に感謝しながら。 #小説
夕食の後片付けをしていると、雨の音が聞こえた。食器を洗う水道の音と、窓の外の雨音と。水音に包まれて、私は今は亡き愛犬の名を呼んだ。ひとりごと、と人は思うだろうか。でも、私は話しかけていたのだ。はじめは、ごめんね、と言ってしまう。それから、今日はねえ、と。話はつづく。水音が優しい。
キジバシの鳴き声が聞こえたらツクシが横に体を靡かせ、秋かな?って思えば、肌寒さがやって来た。僕は秋風の音を真似して口笛を口遊せ、石ころを蹴って溝に落とした。 視線を石ころから前に移すと十字の角から好きなあの子の横顔が。 アッ。っと体温が上がるのを確認し、顔が紅に頬染めた。
『真夜中の交差点』 だーれもいない、車も来ない横断歩道 赤信号で待つ歩行者を見ると 「偉いなぁ」と思う いや、それは当たり前のことなんだけど 歩行者とか、特に自転車のひとは 案外だれもいないと 信号無視しがちだなって思うから たまに車もいるけどね マイロードばりの信号無視
『夜道』 子どもの頃、夜道をひとりで帰るときは いつも道路の真ん中を歩いた 田舎の道路に立つ街灯は間隔が広く、 死角になる箇所が多々ある 別に襲われることを想定してではないが、 蛇やらたぬきやらが出そうな界隈は、 歩道の方が危険だったりするのだ まぁ、出会ったことはないが
『無知は天才』 子どもの頃、 ブレーキとヘッドライトは連動していると思っていた なぜなら、 サスペンスの交通事故は 急ブレーキでライトがカッと光るから それが単なる演出だと知るまでだいぶ時間を要した 仮に連動していたとしたら、 ブレーキの度にパッシングすることになってしまう
『くちぐせ』 若かりし免許取りたての頃、 同級生にちょっと変わった子がいた 教習所の名残なのか、 信号が青に変わると「よし」と言って発進する それだけならまだしも、 曲がり角や合流地点では「行け」と鼓舞する 彼女の運転で出掛けるのが楽しみだった 今もやっているのだろうか?