石牟礼道子

PABLOと石牟礼道子さん

2月10日は僕にとってはとても特別な日で、毎年この時期になると過去の景色をしみじみと思い、季節の寒さに反して心はほっこり温かくなったりする。

今から9年前の2010年の2月10に、僕は世田谷区代沢にPABLOというバーをオープンさせた。
2009年の8月に物件を借りてから、お金が有ったり無かったりしながら殆ど自分一人で内装をして、もちろん未経験で無知だったのでやりながら失敗しながら、結局何だかん

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声が照らし出したルーツ

昨年の夏、「なりゆきの作法──道草氏の極私的文学論」という、ぼくのひとり語りのイベントをやった。

吉祥寺美術学院がひらいた夏のイベントの一環として、声をかけてもらって、実現したものだった。

きっかけは、「オトナのための文章教室」を始めてすぐに、石牟礼道子さんが亡くなったので、その「教室」で石牟礼さんの文章を紹介して、朗読した際、ぼくの中に眠っていた故郷・鹿児島のことばの音──とくに石牟礼さん

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苦界浄土

石牟礼道子著「苦界浄土」は聞き書きではない。事実を強烈に踏まえているけどドキュメンタリーじゃない。私小説だ。
丹念に取材して、対象の言葉を丁寧に紡ぐのがドキュメンタリーの王道ならば、この小説は違う。新日本窒素水俣工場が起こした事件の事実を丹念に追うので、まるでルポルタージュのように感じてしまうかもしれないが、全く違う。石牟礼さんは、そんな文書は書いていない。

苦界浄土本編中に、
子供のいのち年間

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「明治150年」と「戊辰(ぼしん)150年」を読む

▼近所の本屋に「はじめての新書」(岩波新書創刊80年記念)という無料の小冊子が置いてあった。岩波以外の新書も紹介しているで、本好きにとってお得な情報がたくさん詰まっている。なかでも、『AIvs.教科書が読めない子どもたち』で時の人となった新井紀子氏(国立情報学研究所教授)の文章に考えさせられた。適宜改行。

〈山本義隆『近代日本一五〇年ーー科学技術総力戦体制の破綻』(岩波新書)は、「明治からの一五

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アイリーン・スミスの涙   長澤靖浩

アイリーン・スミスという写真家を深く信頼するようになった理由はいくつかある。

そのひとつは、石牟礼道子の著作「花帽子」に出てきたアイリーンが、胎児性水俣病のしのぶちゃんと話すシーンを読んだことだ。

石牟礼さんが「人語の世界から引きはがされた彼女」と描写するように、しのぶちゃんの語りはとても聞き取りにくい。しかし、アイリーンはしのぶちゃんの気持ちに寄り添って忍耐強く聞き取り、しのぶちゃんもそんな

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『ノモレ』に感じるイタコ文学のニューウェーブ

フィクションとノンフィクションの“あわい”はどこにあろうのだろうか。そのあわいは、嘘と誠をかぎるものではない。それは何が真実かという問いそのものであり、そのあわいにこそイタコ文学は揺曳する。

2018年6月、イタコ文学の新たな傑作『ノモレ』が上梓された。イタコ文学は決して有り触れていない。というより、イタコ文学の金字塔である一つの作品のことしか、私は今思い出すことができない。今年の2月に亡くなっ

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『水はみどろの宮』

予定外の【再掲載】を2つも上げてしまいましたが、、、、今日、上げようと考えていたのが当テキスト。

石牟礼道子著『水はみどろの宮』

先頃お亡くなりになった石牟礼さんですが、石牟礼さんというと、どうしても『苦海浄土』のイメージが強いです。

工場廃水の水銀が引き起こした文明の病・水俣病。この地に育った著者は、患者とその家族の苦しみを自らのものとして、壮絶かつ清冽(せいれつ)な記録を綴った。本作は、

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最後までみていただいて、感謝です!
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池澤夏樹さん『終わりと始まり 2.0』を語る。配信始まりました!

作家、池澤夏樹さんが『終わりと始まり 2.0』(朝日新聞出版)を語る。

配信始まりました!

本のタイトルはポーランドのノーベル賞作家、ヴィスワヴァ・シンボルスカの

詩の一節から。今回は朗読もあり!

現代社会を読み解く上での貴重なお話の数々。

中で、石牟礼道子さんについてたっぷりとお話頂いております。

この機会にじっくりとお聴きください。

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※試聴版です。オリジナル版(43:47)は購入後に視聴できます。

今回お迎えするエキスパートは、作家の池澤夏樹さんです。88年小説「スティル・ライフ」で芥川賞を受賞。 以後、ミクロネシア、バリ、ハワイ、パリなど世界各国への旅を重ねながら 数々の作品を発表している池澤さん。現在は北海道在住です。今回は、朝日新聞で連載中のコラムを書籍化した朝日新聞出版、『終わりと始まり 2.0』を基に伺ってまいります。