『誤植読本』(増補版)ノート
高橋輝次 編著
ちくま文庫
私事から書き起こして恐縮だが、筆者は45年ほど前、東京・市ヶ谷にあった日本エディタースクールに通っていた。
ある日、校正の授業でA4一枚のプリントが配られた。10か所の誤りがあるので校正せよとのことであった。既刊本の初校ゲラだったが、書名は覚えていない。
30人ほどいた受講生のなかで、筆者だけが「ヘ」の字の誤植を見つけた。ひらがなであるべき箇所にカタカナの「ヘ」が混じっていたのである。筆者はそれに気づいて〈ひらがな〉と赤を入れ、講師の先生にお