創元社note部

1892年創業。大阪は御堂筋の近く、本町と淀屋橋の間にある出版社です。東京支店は神保町…

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1892年創業。大阪は御堂筋の近く、本町と淀屋橋の間にある出版社です。東京支店は神保町。新刊情報や、著者インタビューなどをアップします。公式HP→https://www.sogensha.co.jp/ ヘッダー画像©nakaban

マガジン

  • はるとボク

    行動分析学を取り入れた「犬との暮らし方」にまつわる連載。犬と生きていくこととは、犬を飼うとはいかなることか。保護犬はると行動分析学者ボクの生活から、そのヒントをお届けします。 [文] 島宗理 [絵] たにあいこ ※毎月第2金曜日更新

  • ほぼ読切連載📻イギリスは我が道を行く|本田毅彦

    EU離脱、首相の交代、王室の関係など、なにかと気になる国、イギリスの「これから」を、歴史を紐解きながら考えていく連載。筆者は『インド植民地官僚 ―大英帝国の超エリートたち』(講談社)などの著書があり、大英帝国史の専門家でもある京都女子大学文学部教授の本田毅彦氏です。

  • 山本粧子の Hola!ジャガイモ人間

    縁もゆかりもなかった国・南米ペルーに青年海外協力隊として派遣されることになった山本粧子が、3000種以上も存在するというジャガイモ原産国で、ジャガイモを育て、食し、愛するジャガイモ人間たちと出会うソウルフル・エッセー。月2回を目指して更新中。

  • シリーズ「あいだで考える」

    不確かな時代を共に生きていくために必要な「自ら考える力」「他者と対話する力」「遠い世界を想像する力」を養う多様な視点を提供する、10代以上すべての人のための人文書のシリーズ。2023年4月刊行開始予定。

  • すべてのひとに庭がひつよう|石躍凌摩

    庭師としての日々の実践と思索の只中から、この世界とそこで生きる人間への新しい視点を切り開いていくエッセイ。

最近の記事

第9回|はるホエーヌを卒業する①

 ボクが部屋からいなくなっても、家を数時間留守にしても、吠えずに一人で寝て過ごせるようになったはるだったが、それでもまだ吠えることがあった。はるの食事のとき、ボクが食事をしているとき、家に誰かがやって来たとき、クレートに入れられたときである。  食事は朝夕の散歩から帰ってから与えることに決めていた。そうすれば散歩中が一日で最もお腹が空いている時間帯になり、リードを引っ張らずに歩く練習や見知らぬ人に近寄る練習におやつを効果的に使えるからだ。  散歩から帰り、お風呂で脚を洗い、

    • メディアの「受け手」の戦争責任を問う――「近代日本メディア議員列伝」シリーズ創刊記念対談③

      至高のインテリにして大衆政治家 與那覇 夏目漱石の下で「批評家・赤木桁平」を名乗っていた大正前半の池崎は、芥川龍之介と親しく、互角に文学論を戦わせていたくらいですから、名実ともに当時の日本で「最高レベルの教養人」だったわけですよね。ところが文壇で名を売った際の炎上ビジネスの手法を、大正の後半から顕在化してきた大衆社会の商業出版に持ち込んだ結果、昭和初期には「日米は必ず戦う。立てよ国民!」みたいな話ばかりを煽るようになってゆく。その逆説を描く佐藤さんの筆致に接して、やはり日独

      • 第11回 メディア王族マウントバッテンの野心|本田毅彦(京都女子大学教授)

         現イギリス国王チャールズ三世に強い影響を与えた人物の一人として、ルイス・マウントバッテン卿(1900年生れ、1979年歿)がいる。マウントバッテンは、そもそも、チャールズ三世の両親(エリザベス二世と、フィリップ公[マウントバッテンの甥])の結婚をアレンジした、と考えられている。また、王太子時代のチャールズ三世の「メンター(指導者、助言者)」の役割を果たした、ともされる。さらに、チャールズ三世とダイアナ妃の結婚に関しても、マウントバッテンの助言が大きかった。近年、エリザベス二

        • 山本粧子の Hola! ジャガイモ人間   ~ペルーからコンニチワ~┃ 第2回

          ブエノスディアス! 山本粧子(やまもとしょうこ)です。 これを書いている8月現在、私は長野県の海外協力隊訓練所で、長期派遣のための合同合宿訓練に参加しています。 今日、長野県伊那市にあるペルー料理店「La casa de Jimmy(ジミーの家)」というお店で食事をしたのですが、やはり、ジャガイモの発祥の地の料理にはジャガイモがこれでもかというくらい沢山添えられていました。 しかも、ジャガイモの味がすごく濃厚で、添えれられているソース(チーズと唐辛子と牛乳とクラッカーやオリ

        第9回|はるホエーヌを卒業する①

        • メディアの「受け手」の戦争責任を問う――「近代日本メディア議員列伝」シリーズ創刊記念対談③

        • 第11回 メディア王族マウントバッテンの野心|本田毅彦(京都女子大学教授)

        • 山本粧子の Hola! ジャガイモ人間   ~ペルーからコンニチワ~┃ 第2回

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        • すべてのひとに庭がひつよう|石躍凌摩
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        • 風景のレシピ | nakaban
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          戦前にもあった炎上ビジネスーー「近代日本メディア議員列伝」シリーズ創刊記念対談②

          「検閲と世論」の関係はSNSと同じ? 佐藤 実は『言論統制―情報官・鈴木庫三と教育の国防国家』(中公新書・2004年)を書いている時には、検閲というのが実際どういうふうに行われているのか、私はまだよく分かっていなかったんですよ。でも最近、検閲研究が凄く進んでいます。例えば金子龍司さんの『昭和戦時期の娯楽と検閲』(吉川弘文館・2021年)で、放送とかレコードの検閲が中心に取り上げられています。  そこで明らかになっているのは、検閲官の仕事がどういうものだったかという問いです。

          戦前にもあった炎上ビジネスーー「近代日本メディア議員列伝」シリーズ創刊記念対談②

          政治のメディア化とは何かーー「近代日本メディア議員列伝」シリーズ創刊記念対談①

          シリーズ構成と趣旨 佐藤 まず「近代日本メディア議員列伝」シリーズの説明を私の方でさせてもらって、その後で與那覇さんに私の『池崎忠孝の明暗』を取り上げていただきながら、メディア議員とその言葉、その政治というあたりを幅広い観点からディスカッションできればと思います。  創元社のパンフレットでは與那覇さんと、有山輝雄さん、藤野裕子さんに推薦の言葉をいただいています。その中で與那覇さんには「政治の言葉が遠く隔たってしまった歴史的分岐点を探る」という見出しで、まさに書くことが政治だ

          政治のメディア化とは何かーー「近代日本メディア議員列伝」シリーズ創刊記念対談①

          山本粧子の Hola! ジャガイモ人間      ~ペルーからコンニチワ~┃ 第1回

          ブエノスディアス! 初めまして。山本粧子(やまもとしょうこ)です。 これから月に1~2回、不定期で創元社noteに連載をもつことになりました。   私は、2023年の11月からJICA青年海外協力隊として、南米ペルーのイカ州パラカスミュージアムに派遣されることになりました。 ペルーに行くことに決まり、いろいろ調べる中で一番驚いたことは、ペルー(厳密にはアンデス)はジャガイモの原産地で、今でもなんと3000種類ものジャガイモが存在している! ということでした。 驚きと共に、その

          山本粧子の Hola! ジャガイモ人間      ~ペルーからコンニチワ~┃ 第1回

          第8回|散歩と犬友

           「はるちゃん、はるちゃん!」散歩していると近所の犬友さんが声をかけてくれる。はるも尻尾を振って近寄っていく。「はるちゃん、ほんとにかわいいですね」なんて言われると嬉しくてたまらないのだが、表情に出すのは恥ずかしく、あえて平静を保とうとしたりする。定年退職したオジサンの地域デビューは難しいというが、きっとこういうところなんだろうな。  犬同士の相性と人との相性は別らしく、犬には近づいていって匂いをかぐのに飼い主さんには無関心なこともあれば、飼い主さんに近づいていってわんちゃ

          第8回|散歩と犬友

          第10回 マウントバッテン卿夫妻とネルー=ガンディー王朝の盛衰|本田毅彦(京都女子大学教授)

          来たる2024年の4・5月に、インド共和国は下院の総選挙を迎える。モディ首相の率いるインド人民党(BJP)が長期政権をさらに継続するのか、ラフル・ガンディー氏の率いるインド国民会議派(以下、国民会議派と略記)が勢いを取り戻すのか、インドの内外から大きな注目を集めている。    その国民会議派のありようを、政治コメンテーターたちが揶揄する際にしばしば用いるのが、「ネルー=ガンディー王朝による、インド共和国の支配」というレトリックである。それによれば、20世紀半ばに独立を達成して

          第10回 マウントバッテン卿夫妻とネルー=ガンディー王朝の盛衰|本田毅彦(京都女子大学教授)

          第7回|留守番の練習

           ようやくボクのうちにやって来たはるは、シェルターで保護されていたときとは打って変わって、がんがん吠える犬に変貌していた。うちに誰か来ると吠える。フードを用意していると吠える。おやつをあげようとして袋から出すのに手間取ると吠える。パソコンに向かって仕事をしていてかまってあげないと吠える。  何より困ったのは、ボクが玄関から出るとすぐに吠えだすことだった。4月から授業が始まる。そうなれば毎日のように、はるは一人で留守番することになる。それまでにはなんとか落ち着いてもらわないとな

          第7回|留守番の練習

          第9回 ジョージ五世と、首相になれなかった貴族ジョージ・カーゾン|本田毅彦(京都女子大学教授)

           誰が、どのようにして首相に任命されるのかについて、日本社会とイギリス社会を比べてみると、両国はともに民主主義国家であって、議院内閣制を採用しているので、本質的には同じだが(衆議院/下院の多数派を率いる政党の指導者が、首相になる)、実際の手順は少々異なっている。  日本では、国会の議決によって首相が指名され、それに基づいて天皇が任命し、新たな首相が組閣を行う。イギリスでは、選挙などを通じて議会の多数派に変動が生じた場合、新たな多数派の指導者が国王から宮殿に招かれ、首相とな

          第9回 ジョージ五世と、首相になれなかった貴族ジョージ・カーゾン|本田毅彦(京都女子大学教授)

          【シリーズ「あいだで考える」】坂上香 『根っからの悪人っているの?――被害と加害のあいだ』の「はじめに」を公開します

          * はじめに  本書の表紙から目に飛びこんでくるのは、「悪人」「加害」「被害」などのネガティブなワードばかりだ。暗い、重い、とパスすることだってできたのに、あなたは本書を手にとった。なぜか? 「犯罪者」っていったいどんな人たちなのか、興味をひかれたから? 「なんで悪人の肩持つのよ? 」ってムカっときたから?  逆に、「サイテーなやつ」のことが、実は気になってる?  いや、「自分のことが書いてあるかも」と思った人だっていると思う。  理由は何であれ、あなたは本書を開いた。

          【シリーズ「あいだで考える」】坂上香 『根っからの悪人っているの?――被害と加害のあいだ』の「はじめに」を公開します

          第6回|はるが来た

           てんちゃんは次の日から「はる」になった。ボクは結婚していないし、子どももいない。だから想像でしかないのだけれど、犬の受け入れ準備をしていた2か月間は、まるで出産を待つ初親のような気持ちで、名づけ辞典をめくったりネットで赤ちゃんの名前ランキングを眺めては、ノートに候補を書き出してた。  那須塩原へ向かう車の中、まだ2月中旬だったがその日は陽射しが暖かで、「もうすぐ春だな」とぼんやり思った。BGMでキャンディーズの「春一番」が流れていたからかもしれない。名前は「はる」にしよう

          第6回|はるが来た

          【連載】すべてのひとに庭がひつよう 第13回|この道|石躍凌摩

          *** 第13回 この道1 子どもの頃から今も変わらず、夏には負けてばかりいて、庭の仕事でもなければ、終日寝てやり過ごすのが関の山である。ひきこもりの性質ではない。むしろ私には、その才能があまりにとぼしく、一日家を出ないだけで簡単に鬱になってしまう。そのようなわけで、夏を通して、深くはないが果てしもないような軽鬱に見舞われることになる。家で倒れているほかなくなる。冬眠よろしく、夏眠である。 とはいえ熊のように覚悟を決めて眠り込むこともならない。三日も経てばさすがに毒が回っ

          【連載】すべてのひとに庭がひつよう 第13回|この道|石躍凌摩

          第8回 「ベニシアさん」と、アメリカ人のインド副王妃メアリ・カーゾン|本田毅彦(京都女子大学教授)

          「猫のしっぽ カエルの手」に映りこんだ、古写真  「猫のしっぽ カエルの手」と題する番組が、NHK・Eテレで2013年から2023年にかけて放送されていた。京都・洛北の大原に住む、あるイギリス人女性が、ハーブ研究家としての自身の生活を紹介し、また、現代日本の民芸作家たちを訪ね歩く、という趣向の番組だった。イギリス人女性の名はベニシア・スタンリー=スミスさんといい、イギリス貴族階級の生まれだが、若き日にインドへ渡り、さらに日本へやって来て大原で生活するようになった、と紹介さ

          第8回 「ベニシアさん」と、アメリカ人のインド副王妃メアリ・カーゾン|本田毅彦(京都女子大学教授)

          第5回|長い一日

           東京から東北自動車道を約2時間半。アニマルファンスィアーズクラブ(AFC)に到着すると、佐良先生、秋元先生、山本先生、杉山先生が揃って出迎えてくださった。待ちきれない想いを察して、すぐに案内してくれる。10畳ほどの部屋の奥にクレートが一つだけ置いてあり、その中に犬が寝そべっていた。何十頭もいる他の犬とは別の部屋をあてがってくれていたのだ。ボクたちが入ると立ち上がり、こちらの様子をうかがっている。写真の印象より小さく、幼く見えた。  「ここにいてください」秋元先生に言われ、

          第5回|長い一日