創元社note部

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大阪市中央区にある明治25年創業の出版社、創元社( https://www.sogensha.co.jp/ )の note部が運営しています。ヘッダー画©nakaban

マガジン

  • 〇〇×シンリガク――小さな日常を〈心理学〉する

    エビチリ、体育座り、ウォーターサーバー、Excel、狂犬、ヤンキース――  日常生活の小さな一コマを臨床心理学の視点から考えてみたら一体何が見えてくるでしょうか。ひょっとしたら、私たちが気づかないうちに囚われている「そういうものだ」という意識に気づいたり、日常のモヤモヤの「背景にあるもの」を発見できたりするかもしれません。  臨床心理学とは、平たく言えば、人間のこころのメカニズムを解き明かし、誰かの心理的援助をするための学問です。と言っても、この連載では、あくまでも「ゆるく考える」がコンセプトです。あまり気構えずに心理学の面白さを伝えることを目指しています。*月1~2回不定期連載 【文】山口貴史(臨床心理士・公認心理師) 【イラスト】楠木雪野

  • 大河ドラマに推しが出たので。|実咲

    テレビでは一生取り上げられることはないだろうと思っていた「推し」が、NHK大河ドラマに出る。その衝撃を、平安時代オタクの著者がリアルタイムでつづります。

  • 星の味 │ 徳井いつこ

    日常のふとした隙間、 ほっとため息をつくとき、 眠る前のぼんやりするひととき。 ひと粒、ふた粒、 コンペイトウみたいにいただく。 それは、星の味。 惑星的な視座、 宇宙感覚を秘めた人びと、 そのコトバを、 日々のつれづれに味わう 徳井いつこのエッセイ。 銅版画/オバタクミ *2024年1月より、毎月第2・第4金曜日更新

  • 山本粧子の Hola!ジャガイモ人間

    縁もゆかりもなかった国・南米ペルーに青年海外協力隊として派遣されることになった山本粧子が、3000種以上も存在するというジャガイモ原産国で、ジャガイモを育て、食し、愛するジャガイモ人間たちと出会うソウルフル・エッセー。月2回を目指して更新中。

  • はるとボク

    行動分析学を取り入れた「犬との暮らし方」にまつわる連載。犬と生きていくこととは、犬を飼うとはいかなることか。保護犬はると行動分析学者ボクの生活から、そのヒントをお届けします。 [文] 島宗理 [絵] たにあいこ ※毎月第2金曜日更新

最近の記事

第3回 エクセル×心理学――「名もなき家事」の解像度

「えっ…何これ……」  エクセルを見た瞬間に声が出ました。それくらい、解像度(と執念)に驚いたのです。  まずはこのエクセルを見ていただけますでしょうか。  作者は私の友人の妻です(ご本人から掲載の許可をいただきました)。  彼女は、なんでもかんでもエクセルにするエクセル大好き人間ではありません。ましてや、こういうエクセルを作る職人でもありません。  家事と育児をしない夫への怒りが頂点に達した時、夜な夜なパソコンを打ち続け、「このボケ!!」(と言ったかわかりません

    • 推し、暇なし。✿第26回|実咲

      「彰子の入内は11月11日だ」 道長が前回口にしていたように、彰子が一条天皇に入内したのは長保元年(999年)11月1日のことでした。 この時、かぞえでまだ12歳(満11歳)の彰子の肩には、一族の栄達が重くのしかかっていたのです。 すでに最高権力者へとのぼり詰めていた、左大臣道長の娘の入内ですから、それはそれは盛大な準備が必要でした。 「光る君へ」第27話では、その入内にまつわる出来事が前後して描かれていました。 彰子の入内準備のひとつとして、道長は屏風歌を作ることを思いつ

      • 星の味 ☆13 “自分以上の生命”|徳井いつこ

         エミリー・ブロンテの詩を初めて読んだのは、片山敏彦さんのエッセイだった。キーツやヴァージニア・ウルフにふれ、イギリスの詩文学のなかでプラトン的特質がさまざまに蘇っているのは面白いと語り、片山さんはこう書いていた。 「私はヨーロッパの旅の宿で、自分の心をはげますためにこの詩を訳してみたことがあった。   ……たとえ 地球と人間とが亡び   太陽たちと宇宙たちとが無くなって   後に残るのは ただあなただけになっても   すべてのものは あなたの中で存在するだろう。   

        • 山本粧子の Hola! ジャガイモ人間~ペルーからコンニチワ~┃ 第17回

          ブエノスディアス!山本粧子です。 5月上旬から私は、毎週土曜日に首都リマにあるMuseo de Arte de la Universidad Nacional Mayor de San Marcos(国立サンマルコス大学美術館)が主催する「Proyectos educativos para el diálogo en museos(ミュージアムにおける対話のための教育プロジェクト)」という全6回のプログラムに参加しています。 パラカスミュージアムの館長が、ミュージアムで働く

        第3回 エクセル×心理学――「名もなき家事」の解像度

        マガジン

        • 〇〇×シンリガク――小さな日常を〈心理学〉する
          3本
        • 大河ドラマに推しが出たので。|実咲
          27本
        • 星の味 │ 徳井いつこ
          13本
        • 山本粧子の Hola!ジャガイモ人間
          17本
        • はるとボク
          16本
        • 特攻文学としての《ゴジラ-1.0》
          17本

        記事

          第16回|犬を飼っている人はみな変人?

           はるが来てから朝夕の散歩がボクの日課になった。近くの公園を一周して、できるだけ排泄を終えてから、近所を40-50分間歩く。屋外で排泄するように教えたこともあって、室内ではおしっこをしてくれない。だから雨の日も雪の日も、台風のど真ん中でも、山登りに使っていた雨合羽を着て散歩に出る。ずぶ濡れになるからはるにも着せようとしたが、ウェアに脚を通した途端、微動だにしなくなってしまう。大きさや素材、軽さ、まとったときのしめつけ具合などが違うウェアを十種類くらい試したが、どれもだめ。ここ

          第16回|犬を飼っている人はみな変人?

          推し、行き交う。✿第25回|実咲

          現代では20歳で行う成人式。あでやかな振袖や旧友との再会の機会になっていますが、平安時代にもそんな成人式と言える儀式がありました。ただし、今よりもっと若い12歳前後で行うものでした。 「光る君へ」第26話では、道長の長女彰子が裳着の儀を行う様子が描かれていました。 裳着の儀は、当時の女子の成人式にあたるもので、これを行うことで結婚ができる年ごろであるとされました。 読んで字のごとく、初めて裳を着けるという儀式です。 いわゆる十二単をフル装備で着た際に、一番最後に着用する装束で

          推し、行き交う。✿第25回|実咲

          特攻文学としての《ゴジラ-1.0》|第17回|井上義和・坂元希美

          (構成:坂元希美) ⑰ビミョーに特攻文学? 《ディープ・インパクト》 なぜか内容をよく覚えていない「彗星の地球衝突を回避する物語」坂元 「まだまだある特攻文学映画」のラストとなる紹介映画は、《ディープ・インパクト》(1998年5月)です。監督はミミ・レダー、スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮の大作で、なんと《アルマゲドン》(1998年7月)とテーマがド重なりしている上に公開されたのがほぼ同時期。本作の方がやや先でした。  私は公開当時に映画館で観て、当時の理解では、

          特攻文学としての《ゴジラ-1.0》|第17回|井上義和・坂元希美

          8|あえて食べてみるバナナクッキー、あえて描いた魚の図

          如翺から寿さんへ ◇ パイナップルケーキの名店にて  ちょっとしたご縁で、毎年初夏に、台湾での茶会イベントに参加させていただいています。日本では、まだ半袖には早いかなと思える5月の上旬、台湾の湿った熱気に夏休みを先取りしたような気分です。  茶会を終えた翌日、今年はパイナップルケーキの名店“SunyHills”さんの本店に連れて行っていただきました。パイナップル畑に囲まれたスタイリッシュな店舗の中で、私は名物のパイナップルケーキ、ではなく、バナナワッフルクッキーをいただき

          8|あえて食べてみるバナナクッキー、あえて描いた魚の図

          大切な人の自死とグリーフをめぐる語り合い――wish you were hereの対話を通して|第2回 墓参りで母に語りかける習慣

          母の自殺のことを家族から聞かされてから長い間、そのことをほとんど家族以外の人には話せなかった。自殺というできごとは、当時の記憶が残っていなくても重く苦しいものだった。 日々の生活のなかで、辛い出来事が起きて気分が落ち込んだときに、母の自殺のことを連想する癖がついていた。頻繁に落ち込んでしまい、気分が不安定なのは遺伝なのだろうと思っていたし、苦しいときに支えてほしい存在が、ずっと昔に自分を置いてこの世を去ってしまっていて、しかもその理由が自分自身のせいだったと思うと憂鬱だった

          大切な人の自死とグリーフをめぐる語り合い――wish you were hereの対話を通して|第2回 墓参りで母に語りかける習慣

          星の味 ☆12 “向こうから来るもの”|徳井いつこ

           人の記憶は、何でできているのだろう?  いつまでも消えない思い出がある。  瑣末な、どうでもいいような記憶がありありと残る。ある種の石ころが、引いていく波に連れ去られることなく、波打ち際に点々と残っていくように。  金沢の旅といえば、浮かんでくるのは、中華料理屋のテーブルだ。  町家を改造したそのお店はずいぶん繁盛していて、コップの水が置かれたきり、注文の皿はなかなか現れなかった。2時半を過ぎた遅い時間だったから、入れただけで安堵したのが、空腹も加勢してだんだん不安になって

          星の味 ☆12 “向こうから来るもの”|徳井いつこ

          推し、病む。✿第24回|実咲

          まひろ(紫式部)が越前から帰京したころ、伊周も大宰府から戻っていました。 しかし、もうすっかり中関白家にかつての隆盛はありません。 厄介者になってしまった空気を肌で感じながら、一条天皇の心に縋るしかない定子。 「帝、仕事しろよ」と完全に顔に出ている道長と、一条天皇の間で安定の板挟み進行の行成。 ここでついに、清少納言との会話のシーンがありました!! 道長から一条天皇に、鴨川の堤防工事の許可を得るようにと厳命され、東奔西走。 清少納言に取り次ぎを頼むも、一条天皇に自分を追いかけ

          推し、病む。✿第24回|実咲

          第2回 ウォーターサーバー×心理学――「最後の人」問題

           今日は友人から聞いた話を紹介します。  友人の職場には、「なぞおじさん」と「なぞにーさん」がいます(友人の心の中の呼び名です)。  なぞおじさんは、ウォーターサーバーのタンクが空になっているのを見ても、絶対に換えません。自分が「最後」のはずなのに、タンクを交換する姿は、一度も目撃されたことがないのです。換えたくないのか、忙しくて換える暇もないのか、「なぞ」です。  なぞにーさんは、タンクに水がないことに気づくと、静かにデスクに戻ります。瞬時に踵を返す動きは、もはや華麗

          第2回 ウォーターサーバー×心理学――「最後の人」問題

          【岸本寛史×近藤雄生】『いたみを抱えた人の話を聞く』刊行記念トークイベント報告

          本書の企画が生まれる経緯 岸本  静岡県立総合病院の岸本寛史と申します。今回の本は、ライターの近藤さんが私にインタビューをし、その内容をまとめてくださったものです。自分の話を近藤さんに聞いていただいて私自身がすごく癒されたという経験でもあり、「いたみを抱えた人」というのは私自身のことかなとも思っています。今日の対談では、本を作る過程でどんなことが起きたかを振り返るとともに、本の内容について少し掘り下げてお話しできたらと思っています。 近藤 今回、岸本先生のお話の聞き手とな

          【岸本寛史×近藤雄生】『いたみを抱えた人の話を聞く』刊行記念トークイベント報告

          山本粧子の Hola! ジャガイモ人間~ペルーからコンニチワ~┃ 第16回

          ブエノスディアス!山本粧子です。 ペルーは、6月の冬至に向けていよいよ寒くなって来ました。本当に日本とは真逆の季節の移り変わりを過ごすのだなと、寒さを感じて初めて体感しています。 パラカスでも、海で泳いでいる人を見かけなくなりました。コートを着る日もあるくらいです。実は「パラカスでコートを着る日なんて来るのかな?」「持って来た意味あるのかな?」と、バカンス感たっぷりのこの地に到着した12月当時は思っていたのですが、パラカスにも冬はやってくるようです。 *** 乾燥ジャガ

          山本粧子の Hola! ジャガイモ人間~ペルーからコンニチワ~┃ 第16回

          推し、板挟み。✿第23回|実咲

          まひろ(紫式部)が越前で宣孝との結婚を決意した頃、都ではエライコッチャなことになっていました。 一条天皇の母詮子が病床に伏し、伊周・隆家の兄弟を陥れたという「心当たり」のある詮子は 二人の罪を許して都に呼び戻してほしいと願います。 道長は公卿たちの意見を集う陣定 (公卿の会議)を開き、二人の罪は許されることになりました。 なお、隆家は許しを得ると、あっという間に出雲からの土産だと干ししじみを手に帰って来たのですが、じつは病だと言って出雲まで行かず但馬にいたそうで。 こういう所

          推し、板挟み。✿第23回|実咲

          杉崎泰一郎・著『「聖性」から読み解く西欧中世』「はじめに」を無料公開

          はじめに聖なる力に願いを託す人々  二〇二二年四月半ば、ロシアのウクライナ侵攻から二か月が過ぎようとするころ、ロシアの黒海艦隊の旗艦モスクワが沈没したというニュースが飛び込んできた。短期間でロシアがキーウを制圧するという予想を覆し、西側諸国の支援などによって戦争が長期化する兆しとして報道された。沈没は事故によるものか、ウクライナの攻撃によるものかは曖昧なまま続報が絶えてしまった。ただこの軍艦には、キリストが磔になった十字架の欠片、すなわち「真の十字架」「聖十字架」などと呼ば

          杉崎泰一郎・著『「聖性」から読み解く西欧中世』「はじめに」を無料公開