田中美津さんを悼む
田中美津さんが亡くなった。『いのちの女たちへ とり乱しウーマンリブ論』(田畑書店、1972年)を20代の私は貪るように読んだ。分かるようで変わらない世界。知ることは出来ても生きることができない世界。
田中美津さんから発せられる言葉がなぜだか私の心に浸透する。実感がもてないけれど、引き寄せて、何とか自分のものにしたいともがいた。
田中美津さんから自分の言葉で語ることの凄さと難しさを知った。私が自分の言葉で発することができるようになったのは、40歳を過ぎてからだった。
20代の頃に読んだ石牟礼道子さんの『苦海浄土』と『いのちの女たちへ とり乱しウーマンリブ論』が私に人間というものの尊さと愚かさを教えてくれた。
書店を営む知人から「書店は人の人生に係わることができる仕事」という言葉を聞いてなるほどと思った。
多くの本に育てられて今のた自分がいる。この本と出会わなければ自分はどうなっていただろうと思う本が数冊ある。
若い時に『苦海浄土』と『いのちの女たちへ とり乱しウーマンリブ論』と出会えたことを心からありがたいと思う。田中美津さんどうもありがとう。
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