クラウス・リーゼンフーバー/山本芳久編『存在と思惟』(講談社学術文庫、2024年)を読んで。
この論文を読むためにだけこの本を買わなければならないというものがある。リーゼンフーバー氏の『中世における知と超越』所収のトマス・アクィナスの存在論をめぐる論文、『命題コレクション哲学』所収の神認識論はそのようなものに数えられるであろう。それらはのちに著者の大著『中世哲学の源流』に収録されることとなり、日本における中世哲学研究の結晶として今なお輝きを放つものである。相次いで刊行された『中世哲学の射程』と本書『存在と思惟』はその主著『中世哲学の源流』のハイライトともいうべきもの