のぶたか

のぶたか

記事一覧

稲垣良典さんの『信仰と理性』、名著なのでどこかで復刊するか、オンデマンドで出してほしい。

のぶたか
2日前

J.-P. トレル/保井亮人訳『トマス・アクィナス 霊性の教師』(知泉学術叢書、2019年)を読んで。

 本書はトマス・アクィナス研究において言わずと知れたトマス論の決定版である。アンソニー・ケニーの中世哲学史を始め、ファーガス・カーのトマス入門、それからバーナー…

のぶたか
3日前
4

勝田茅生『ヴィクトール・フランクル それでも人生には意味がある』(NHK出版、2024年)を読んで。

 本書は類書を見ないフランクルについての本である。フランクル伝でも、フランクル論でもなく、フランクルの生涯の出来事をテーマごとに追いかけながらその問いかけをも浮…

のぶたか
10日前
10

森進一『ホメロス物語』(岩波ジュニア新書、1984年)を読んで。

 本書はホメロスに興味を持つすべての読者に真っ先に読んでほしい一冊である。「怒りを歌え女神よ、ペーレウスの子アキレウスの」に始まるイリアス、そしてオデュッセウス…

のぶたか
2週間前
9

書見台の新定番?

 書見台探しに終止符を打つ商品が出たかもしれない。それはfromseedというメーカーのDr. Standである。書見台が出るとどうしても気になってしまい、また買ったのかと自分…

のぶたか
3週間前
6

古田徹也『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』』(角川選書、2019年)を読んで。

 本書は20世紀最大の哲学者に数えられるウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』の入門書である。従来『論理哲学論考』の入門書は本書でもたびたび言及されている野矢茂樹…

のぶたか
1か月前
5

プラトン/朴一功・西尾浩二訳『エウテュプロン/ソクラテスの弁明/クリトン』(京都大学学術出版会〔西洋古典叢書〕、2017年)…

 プラトンの「ソクラテスの弁明」にはいくつもの翻訳がある。ところが「エウテュプロン」となるとその数は限られている。一世代前のプラトン全集の校訂者バーネットによる…

のぶたか
1か月前
8

おすすめの調べものツールについて

 前回に引き続き、勉強していく上で参考になるサイトや役立ちそうなツールを紹介していきたいと思います。  何か気になる人や思想が見つかった時にまず確かめるのがお勧…

のぶたか
1か月前
5

おすすめのポッドキャストについて

今回のノートでは大学生のころに早く知りたかったあれこれを紹介してみたいと思います。論文を調べたりする時のツールやポッドキャストについて書き始めたのですが、書き始…

のぶたか
1か月前
10

ヴィクトール・フランクル/赤坂桃子訳『精神療法における意味の問題』(北大路書房、2016年)を読んで。

 本書はフランクル存命中に刊行された一巻選集である。フランクルの著作は膨大なものであり、ドイツ語でも英語でもその著作の全体を把握するのは容易ではない。フランクル…

のぶたか
1か月前
6

田中美知太郎『戦争と平和』(中公文庫、2024年)を読んで。

 私たちは戦争の時代を生きているのかもしれない。いま私たちの生活が直接に脅かされるという現実を目の当たりにしていなくとも、いつこの生活がなくなるとも知れないこと…

のぶたか
2か月前
5

クラウス・リーゼンフーバー/村井則夫編訳『中世哲学の射程』(平凡社ライブラリー、2023年)を読んで。

 本書はリーゼンフーバー氏の待望の一巻選集である。著者であるクラウス・リーゼンフーバー氏は日本における西洋中世哲学研究を牽引し続けた碩学である。その氏の仕事は『…

のぶたか
2か月前
8

山本芳久『キリスト教の核心をよむ』(NHK出版、2021年)を読んで。

 本書はキリスト教に興味を持った人に真っ先に薦めたいキリスト教入門である。「学びのきほん」シリーズの一冊である本書は、帯に二時間で読めると書かれている通り、短い…

のぶたか
2か月前
16

バッグインバッグについて。

 カバンの中で本と革の財布が擦れて財布の色が本の小口に移ったりしたことはないだろうか。カバンの中にちゃんと本の居場所を確保するのはなかなか至難の業であった。「で…

のぶたか
2か月前
8

三嶋輝夫『汝自身を知れ 古代ギリシアの知恵と人間理解』(NHKライブラリー、2005年)を読んで。

 古代ギリシアは人を魅了して止まない。しかしその秘密はどこにあるのだろうか。その汲めども尽きぬ知恵の所在を明かしてくれる一冊の本、それが本書『汝自身を知れ』であ…

のぶたか
3か月前
6

プラトン/三嶋輝夫・田中亨英訳『ソクラテスの弁明・クリトン』(講談社学術文庫、1998年)を読んで。

 プラトンの著作で最も有名なのはやはり『ソクラテスの弁明』であろう。哲学することの喜びを焚き付けてくれる田中美知太郎訳をはじめとして、今では全く初めての人におす…

のぶたか
3か月前
5

稲垣良典さんの『信仰と理性』、名著なのでどこかで復刊するか、オンデマンドで出してほしい。

J.-P. トレル/保井亮人訳『トマス・アクィナス 霊性の教師』(知泉学術叢書、2019年)を読んで。

 本書はトマス・アクィナス研究において言わずと知れたトマス論の決定版である。アンソニー・ケニーの中世哲学史を始め、ファーガス・カーのトマス入門、それからバーナード・マッギンの神学大全入門でトマスの伝記として真っ先に言及されているのがジャン・ピエール・トレルによる上下二巻のトマス研究なのである。トマス・アクィナス研究において絶対的な支持を誇るトレルのトマス論の上巻はトマス伝の決定版として、現在の研究

もっとみる

勝田茅生『ヴィクトール・フランクル それでも人生には意味がある』(NHK出版、2024年)を読んで。

 本書は類書を見ないフランクルについての本である。フランクル伝でも、フランクル論でもなく、フランクルの生涯の出来事をテーマごとに追いかけながらその問いかけをも浮き彫りにするという意味で、今までに類書のないフランクルについての本なのである。フランクルはいくつかの本で自らを多く語っていることもあり、読者にとって近づき方は豊富にある。しかしどこから入ろうとも、なんらかの難しさを感じるということがあるかも

もっとみる

森進一『ホメロス物語』(岩波ジュニア新書、1984年)を読んで。

 本書はホメロスに興味を持つすべての読者に真っ先に読んでほしい一冊である。「怒りを歌え女神よ、ペーレウスの子アキレウスの」に始まるイリアス、そしてオデュッセウスの冒険譚は、プラトンのみならず現代哲学においても多々引き合いに出される大古典である。イリアスとオデュッセイアのどちらを先に読むべきか、それは本書からも明らかなようにイリアスからである。オデュッセイアについての入門書は久保正彰氏や西村賀子氏の

もっとみる

書見台の新定番?

 書見台探しに終止符を打つ商品が出たかもしれない。それはfromseedというメーカーのDr. Standである。書見台が出るとどうしても気になってしまい、また買ったのかと自分でも呆れていた。しばらく手持ちのいろいろな書見台と比べていて、ひょっとしたらこれは良いのかもしれないと思ったのでご紹介したいと思います。出たばかりの時にこれは良いとこどりの書見台が出たなと期待していたのですが、ちょっと使用感

もっとみる

古田徹也『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』』(角川選書、2019年)を読んで。

 本書は20世紀最大の哲学者に数えられるウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』の入門書である。従来『論理哲学論考』の入門書は本書でもたびたび言及されている野矢茂樹氏の『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む』くらいであった。いままで多数の分析哲学入門はあったものの、野矢茂樹氏の論考論以上に『論理哲学論考』への手堅い入門書はなく、その後に論考を精読する読者にとって得難い研究の手引きとなる内容をも

もっとみる

プラトン/朴一功・西尾浩二訳『エウテュプロン/ソクラテスの弁明/クリトン』(京都大学学術出版会〔西洋古典叢書〕、2017年)を読んで。

 プラトンの「ソクラテスの弁明」にはいくつもの翻訳がある。ところが「エウテュプロン」となるとその数は限られている。一世代前のプラトン全集の校訂者バーネットによる「エウテュプロン/ソクラテスの弁明/クリトン」を含むプラトン選集は、最初に読む古典ギリシア語原典の選集として長年親しまれてきた。その三作品を収録した邦訳はといえば、比較的手に入れやすいものとしては角川文庫の山本光雄訳と岩波プラトン全集の第一

もっとみる

おすすめの調べものツールについて

 前回に引き続き、勉強していく上で参考になるサイトや役立ちそうなツールを紹介していきたいと思います。

 何か気になる人や思想が見つかった時にまず確かめるのがお勧めなのはコトバンクに収録されているニッポニカです。コトバンクにはブリタニカ国際大百科事典と世界大百科事典も収録されているので、併せて読むことをお勧めします。ニッポニカの特徴は押さえておくべき事実を中心に第一線で活躍する研究者が自らの名前で

もっとみる

おすすめのポッドキャストについて

今回のノートでは大学生のころに早く知りたかったあれこれを紹介してみたいと思います。論文を調べたりする時のツールやポッドキャストについて書き始めたのですが、書き始めたらそれなりの分量になったので今回はポッドキャストのみを紹介したいと思います。記事の中ではオリジナルのサイトを掲載していますが、以下に紹介するポッドキャストはiTunesやSpotifyなどの音楽配信サービスで探すことが出来るので、気にな

もっとみる

ヴィクトール・フランクル/赤坂桃子訳『精神療法における意味の問題』(北大路書房、2016年)を読んで。

 本書はフランクル存命中に刊行された一巻選集である。フランクルの著作は膨大なものであり、ドイツ語でも英語でもその著作の全体を把握するのは容易ではない。フランクルの重要な著作でさえ、オリジナルの言語では手に入れにくい状態が見受けられる。私たちはともすれば当たり前に受け止めてしまうかも知れないが、日本で二つの出版社から著作集が組まれて容易に手にできるということ自体が特別なことと言えよう。本書のまえがき

もっとみる

田中美知太郎『戦争と平和』(中公文庫、2024年)を読んで。

 私たちは戦争の時代を生きているのかもしれない。いま私たちの生活が直接に脅かされるという現実を目の当たりにしていなくとも、いつこの生活がなくなるとも知れないことを、各地で起こっている戦争の出来事を通してふと思わされるのである。田中美知太郎のエッセイ集『戦争と平和』を読んでいてその感をますます強くした。この本は昭和の保守の論客として知られていた田中美知太郎の姿を垣間見させてくれる一冊である。田中美知

もっとみる

クラウス・リーゼンフーバー/村井則夫編訳『中世哲学の射程』(平凡社ライブラリー、2023年)を読んで。

 本書はリーゼンフーバー氏の待望の一巻選集である。著者であるクラウス・リーゼンフーバー氏は日本における西洋中世哲学研究を牽引し続けた碩学である。その氏の仕事は『中世における自由と超越』『中世哲学の源流』『中世における理性と霊性』『近代哲学の根本問題』など数多くの大著にまとめられており、どれもA5版ないし菊版にして700頁を超える大作である。氏の研究の道程で発表された論考をまとめたそれらの大著は、体

もっとみる

山本芳久『キリスト教の核心をよむ』(NHK出版、2021年)を読んで。

 本書はキリスト教に興味を持った人に真っ先に薦めたいキリスト教入門である。「学びのきほん」シリーズの一冊である本書は、帯に二時間で読めると書かれている通り、短い紙幅にエッセンスをギュッと凝縮したキリスト教入門である。とはいえ必要な部分だけを解説するというスタイルではなく、アブラハムの宗教と言われるユダヤ教とキリスト教とイスラム教の関わりから説き起こし、何が共通していて何が違うのか、そして聖書には具

もっとみる

バッグインバッグについて。

 カバンの中で本と革の財布が擦れて財布の色が本の小口に移ったりしたことはないだろうか。カバンの中にちゃんと本の居場所を確保するのはなかなか至難の業であった。「であった」と過去形であるのは、ようやく解決策を見つけたからである。それが今回紹介するバッグインバッグである。
 まずは失敗談から。ネット広告や宣伝記事などで無印良品のバッグインバッグをまず使ってみたのだが、A5サイズのメッシュタイプのもので、

もっとみる

三嶋輝夫『汝自身を知れ 古代ギリシアの知恵と人間理解』(NHKライブラリー、2005年)を読んで。

 古代ギリシアは人を魅了して止まない。しかしその秘密はどこにあるのだろうか。その汲めども尽きぬ知恵の所在を明かしてくれる一冊の本、それが本書『汝自身を知れ』である。哲学はソクラテスの死に始まる。そのソクラテスを知恵の探求へと導いた、あまりにも有名なデルフォイの神託。あるいはギリシア神話におけるオイディプスやメデイアの物語。ギリシア哲学やギリシア神話、ギリシア悲劇と古代ギリシアには豊かな文化的遺産が

もっとみる

プラトン/三嶋輝夫・田中亨英訳『ソクラテスの弁明・クリトン』(講談社学術文庫、1998年)を読んで。

 プラトンの著作で最も有名なのはやはり『ソクラテスの弁明』であろう。哲学することの喜びを焚き付けてくれる田中美知太郎訳をはじめとして、今では全く初めての人におすすめしたい充実した解説の付いた納富信留訳もある。しかしプラトン自身の哲学の原点を明らかにし、哲学のことを最も切実に命を賭すべきものとしてソクラテスに語らせているのは『クリトン』であると思う。というのも、裁判という形式ではなくクリトンという一

もっとみる