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稲垣良典さんの『信仰と理性』、名著なのでどこかで復刊するか、オンデマンドで出してほしい。
J.-P. トレル/保井亮人訳『トマス・アクィナス 霊性の教師』(知泉学術叢書、2019年)を読んで。
本書はトマス・アクィナス研究において言わずと知れたトマス論の決定版である。アンソニー・ケニーの中世哲学史を始め、ファーガス・カーのトマス入門、それからバーナード・マッギンの神学大全入門でトマスの伝記として真っ先に言及されているのがジャン・ピエール・トレルによる上下二巻のトマス研究なのである。トマス・アクィナス研究において絶対的な支持を誇るトレルのトマス論の上巻はトマス伝の決定版として、現在の研究
もっとみる古田徹也『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』』(角川選書、2019年)を読んで。
本書は20世紀最大の哲学者に数えられるウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』の入門書である。従来『論理哲学論考』の入門書は本書でもたびたび言及されている野矢茂樹氏の『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む』くらいであった。いままで多数の分析哲学入門はあったものの、野矢茂樹氏の論考論以上に『論理哲学論考』への手堅い入門書はなく、その後に論考を精読する読者にとって得難い研究の手引きとなる内容をも
もっとみるプラトン/朴一功・西尾浩二訳『エウテュプロン/ソクラテスの弁明/クリトン』(京都大学学術出版会〔西洋古典叢書〕、2017年)を読んで。
プラトンの「ソクラテスの弁明」にはいくつもの翻訳がある。ところが「エウテュプロン」となるとその数は限られている。一世代前のプラトン全集の校訂者バーネットによる「エウテュプロン/ソクラテスの弁明/クリトン」を含むプラトン選集は、最初に読む古典ギリシア語原典の選集として長年親しまれてきた。その三作品を収録した邦訳はといえば、比較的手に入れやすいものとしては角川文庫の山本光雄訳と岩波プラトン全集の第一
もっとみるおすすめのポッドキャストについて
今回のノートでは大学生のころに早く知りたかったあれこれを紹介してみたいと思います。論文を調べたりする時のツールやポッドキャストについて書き始めたのですが、書き始めたらそれなりの分量になったので今回はポッドキャストのみを紹介したいと思います。記事の中ではオリジナルのサイトを掲載していますが、以下に紹介するポッドキャストはiTunesやSpotifyなどの音楽配信サービスで探すことが出来るので、気にな
もっとみるクラウス・リーゼンフーバー/村井則夫編訳『中世哲学の射程』(平凡社ライブラリー、2023年)を読んで。
本書はリーゼンフーバー氏の待望の一巻選集である。著者であるクラウス・リーゼンフーバー氏は日本における西洋中世哲学研究を牽引し続けた碩学である。その氏の仕事は『中世における自由と超越』『中世哲学の源流』『中世における理性と霊性』『近代哲学の根本問題』など数多くの大著にまとめられており、どれもA5版ないし菊版にして700頁を超える大作である。氏の研究の道程で発表された論考をまとめたそれらの大著は、体
もっとみるバッグインバッグについて。
カバンの中で本と革の財布が擦れて財布の色が本の小口に移ったりしたことはないだろうか。カバンの中にちゃんと本の居場所を確保するのはなかなか至難の業であった。「であった」と過去形であるのは、ようやく解決策を見つけたからである。それが今回紹介するバッグインバッグである。
まずは失敗談から。ネット広告や宣伝記事などで無印良品のバッグインバッグをまず使ってみたのだが、A5サイズのメッシュタイプのもので、
三嶋輝夫『汝自身を知れ 古代ギリシアの知恵と人間理解』(NHKライブラリー、2005年)を読んで。
古代ギリシアは人を魅了して止まない。しかしその秘密はどこにあるのだろうか。その汲めども尽きぬ知恵の所在を明かしてくれる一冊の本、それが本書『汝自身を知れ』である。哲学はソクラテスの死に始まる。そのソクラテスを知恵の探求へと導いた、あまりにも有名なデルフォイの神託。あるいはギリシア神話におけるオイディプスやメデイアの物語。ギリシア哲学やギリシア神話、ギリシア悲劇と古代ギリシアには豊かな文化的遺産が
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