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苦海浄土を読んでの感想

2023年秋に旅に出た際に、熊本の橙書店に立ち寄った
橙書店で発行されている雑誌【アルテリ】と、熊谷直子さんの【赤い河】を購入し、店主の田尻さんと告白での熊五郎の可愛さについて話した
【アルテリ】には様々な作家が寄稿していたが、目を引いたのは石牟礼道子さんが熊本の病院に入院され、町田康さんがお見舞いに行った際の町田さんの心情が記された文章だった
それから石牟礼さんに興味が沸き、気になり始めた
すぐにネットで著書を購入できる世の中なワケだが、古本屋でたまたま見つけて購入したいものである
2024年1月終わり頃、福島のコトウという新書と古本のお店で石牟礼道子さんの書籍を何冊か発見した
店主のコトウさんは公務員の仕事を退職され、本屋が街にある風景を作り、それを守りたいという想いをで店を始められている
よいヴァイブスの店で石牟礼さんの本を買いたい、という理想とリンクした私はおのずと【苦海浄土】を購入する
1969年に出版された本作は水俣病患者を題材とし、水俣湾に排出された工業廃水に含まれた汚染物質で生じた奇病の苦しみと患者の尊厳を表現している
読んでみて、熊本弁を駆使した記載を含んだ後世へ残すべき事を記録したリアルな作品という印象を受けた
渡辺京二さんの解説を読んで、私は驚愕した
石牟礼さんは港町である水俣の主婦で、本書は水俣病に羅漢した患者に聞いた話を記しているのではなく、石牟礼さん自身の体感による妄想を記していると解説に記載されていた
水俣のどこまでも堕落し続ける内側から崩壊するような地獄を、幻想として現地に住む類まれな文才のある主婦が(書きたい)という強い願望のみで、自宅の書斎と言えないような狭いスペースで妄想の本を認めていたのである
この美しさは完全に町田康じゃないか、とすべてが繋がった
愛情論も読みたくて堪らなくなった

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