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「 ビトゥイーン・ザ・バー」 エリオット・スミス Between the bars Elliot Smith / Cover <あの名曲を日本語で歌ってみる>
エリオット・スミス(Elliott Smith)は、1969年8月6日、アメリカネブラスカ州オマハの生まれ。生まれて1年後に両親が離婚、エリオットは母親に引き取られた。そして、母親が再婚。しかしエリオットは、義父との折り合いが悪く、ずいぶん酷い目にあったのだという。 この幼年期の体験が、のちのちの彼の実存に、濃い影を落としたことは間違いないだろう。とてもセンシティブで、傷つきやすく、安定感を欠いた自我を、どうにかして飼いならしつつ生きることを余儀なくされたのではないかと思わ
「ナチュラル・ウーマン(You Make Me Feel Like A) Natural Woman」 アレサ・フランクリン <あの名曲を日本語で歌ってみる>
「レディ・ソウル」という名盤アルバムに入っている曲。ソウルの女王、いやソウルなんて限定しなくても、アレサ・フランクリンは、20世紀最高のヴォーカリストだ。この曲でも、「Looking out」と歌い出した瞬間に、異次元の世界へ誘い込まれる。 黒人女性で、アレサと似たような歌い方をする人はけっこういる。いわゆるゴスペルの唱法につながる歌い方なのだろう。声量の豊かさや強力なシャウトでは、アレサを凌ぐような人もいると思う。けれども、アレサと同じように“歌いこなせる”人はいない。
人間は、ことばの、主人か?それとも、奴隷か?「現代という時代の気質」エリック・ホッファー(柄谷行人訳) Ⅱ <ことばの森を逍遥する>
『神は世界を創造したとき、ただちにそれをオートメ化したので、神がすることは何も残らなくなってしまった。そこで退屈のあまり神は手を加えたり、実験したりしはじめた。人間は手に負えない実験作であった。神が人間を創造したのは大胆な気分になっているときであった。「神の姿に似せて神は人間を創った」のだが、こうしてつくられた被造物が創造主と張りあい、それを凌駕するということは、最初からわかりきった結論であった。』 アイロニカルな物言いですけれども、聖書を読むとだれでも疑問に思うようなこと
理知か?感情か?古くて新しい課題「現代という時代の気質」 エリック・ホッファー(柄谷行人訳) Ⅰ <ことばの森を逍遥する>
エリック・ホッファーといえば、「沖仲仕の哲学者」と呼ばれたアメリカの著述家です。農園の季節労働者をやりながら図書館で物理学・数学・植物学を学び、モンテーニュに影響されて哲学的な興味を触発された後、沖仲仕として働きながら思索や著述をつづけたかなり稀有な人です。 いわゆるマルクス主義の影響が絶大であった20世紀、知識人(インテリゲンツァ)とは何かという問題が重要なイシューであった時代に、異彩を放っていた文筆家です。マルクス主義には、知識人が大衆を啓蒙するという図式があり、自分を
「What A Wonderful World(この素晴らしき世界)」ルイ・アームストロング <あの名曲を日本語で歌ってみる>
ディキシーランド・ジャズで、もっとも知名度の高いミュージシャン、トランぺッターのサッチモことルイ・アームストロング。1967年、彼が60歳をとっくに過ぎてから吹きこまれ、世界的なヒットになったのが、この曲。若い時の力強いトランペットならず、枯れてしわがれた渋いヴォーカルが、唯一無二の味わいになっている。 たぶんディキシーランド・ジャズのことはあまり知らなくても、この曲なら、だれでもどこかで必ず聞いたことがあるはず。まさに名曲と呼ぶのに相応しい。 この曲がリリースされた19
「ティアーズ・イン・ヘヴン」 エリック・クラプトン「Tears In Heaven」 Eric Clapton (Cover)<あの名曲を日本語で歌ってみる>
われわれの世代にとってエリック・クラプトンといえば、クリーム、ブラインド・フェイス、そしてデレク&ドミノス。ロックの最前線をゆくミュージシャンでありギタリスト。「クリームの素晴らしき世界」から「レイラ」に至るイメージが強烈である。 2枚組アルバム「レイラ」は、まさにロックの頂点を極めたともいえ、次作が待望されていたのだが、このアルバムを境に、クラプトンは表舞台から姿を消してしまう。当時の多くのロック・ミュージシャンが陥ったように、アルコールとドラッグに浸って、一時廃人のよう