カネがカネを生む仕組みの彼岸は見えるか? 石牟礼道子 「椿の海の記」(2) <ことばの森を逍遥する>
みっちんの祖父・松太郎は、島原で石工職人として腕を振るい、石の目利きや加工技術では群を抜いていたそうでしたが、職人仕事に見切りをつけて、水俣へ渡って道路や河川工事など大きな事業を請け負う親方になったそうです。仕事の規模が大きくなり、大勢の土方や職人などを使う立場になったわけです。けれども、いわゆる職人気質は変わらないためプライドが高く、暮らしは贅沢で、皆に惜しげもなく酒肴を振舞ったり、借用書もなしに気前よく職人たちに金を貸したりするのです。それなのに、金勘定には才覚も興味もな