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射影の森 ことばの森を逍遥する

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いろいろと考えたことの断片を、気になる風景とともに、ぼちぼち、すこしづつ書いてみたいと思います。
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記事一覧

人間は、ことばの、主人か?それとも、奴隷か?「現代という時代の気質」エリック・ホ…

『神は世界を創造したとき、ただちにそれをオートメ化したので、神がすることは何も残らなくな…

西村修一
8か月前
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理知か?感情か?古くて新しい課題「現代という時代の気質」 エリック・ホッファー(…

エリック・ホッファーといえば、「沖仲仕の哲学者」と呼ばれたアメリカの著述家です。農園の季…

西村修一
8か月前
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暴力は人類にとって必然なのか?「暴力批判論」 ヴァルター・ベンヤミン  ~3~ …

さて考察はいよいよ、法と暴力の関係、目的と手段の関係というところから、暴力とはそもそも何…

西村修一
9か月前
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戦争廃棄の理念は“お花畑”か? 「暴力批判論」 ヴァルター・ベンヤミン  ~2~…

国家暴力のひとつの典型例は戦争です。いまのところ国家を超える規模の暴力は存在しませんから…

西村修一
9か月前

世界から暴力を廃絶する可能性はあるのか? 「暴力批判論」 ヴァルター・ベンヤミン…

ここで批判の対象として取り上げられるのは、個人レベルで行使される自然的暴力のことではなく…

西村修一
10か月前

文芸の本質とは、ことば以前の世界をことばで認識すること? 石牟礼道子「椿の海の記…

九州南部の不知火海に面した温暖な地域、海の幸も山の幸も豊富にあり、貨幣経済に完全に支配さ…

西村修一
1年前
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カネがカネを生む仕組みの彼岸は見えるか? 石牟礼道子 「椿の海の記」(2) <ことばの森を逍遥する>

みっちんの祖父・松太郎は、島原で石工職人として腕を振るい、石の目利きや加工技術では群を抜いていたそうでしたが、職人仕事に見切りをつけて、水俣へ渡って道路や河川工事など大きな事業を請け負う親方になったそうです。仕事の規模が大きくなり、大勢の土方や職人などを使う立場になったわけです。けれども、いわゆる職人気質は変わらないためプライドが高く、暮らしは贅沢で、皆に惜しげもなく酒肴を振舞ったり、借用書もなしに気前よく職人たちに金を貸したりするのです。それなのに、金勘定には才覚も興味もな

排除によって狂気を析出した近代の病 石牟礼道子 「椿の海の記」(1)<ことばの森…

みっちんの祖母おもかさまは、いわゆる精神病を患っており、世間からは“しんけいどん”と呼ば…

西村修一
1年前

近代のむこう側を透視する幻想的な物語石牟礼道子 「あやとりの記」(3) <ことば…

『いったい、どこの世界に連れてきてもらったのだろうと半分夢見心地でおりますと、しばらくし…

西村修一
1年前

西欧のステロタイプを凌駕する自然への共感力 石牟礼道子 「あやとりの記」(2) …

死者の魂がむこう側の世界、高い山の上や海の彼方へ往き、また還って来るというのは、わたした…

西村修一
1年前

近代化の功罪を照らし出す、美しい稀有な物語 石牟礼道子「あやとりの記」(1) <…

『かっし、かっし、かっし・・・、かっし、かっし、かっし・・・。 柔らかい蹄の音でした。舞…

西村修一
1年前
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近代を超える文学の可能性 石牟礼道子「苦海浄土」(「ゆき女聞き書き 五月」より)…

「苦海浄土」この本は、なんとなく公害の告発本だというイメージがあって、長らく手に取らなか…

西村修一
1年前
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写真とインダストリアル・イメージ

こどものころは、怪獣映画が花盛りだった。 ゴジラ、キングギドラ、モスラ、ガメラ、あるいは…

西村修一
1年前
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なぜインダストリアル・イメージは魅力的なのか?・・・近代化について考える。 <ことばの森を逍遥する>

近代化あるいは都市化というのは、いったい何だったのか?そういう疑問について考える入り口として、宮本常一の「忘れられた日本人」を取り上げ、前近代的な生活についての気になる記述を拾ってコメントしてきました。宮本さんは、前近代社会に対して肯定的な視線をもっていたでしょうから、わたしのコメントもそれに沿って、前近代の良い部分を指摘してきました。ただ、わたし自身が、前近代社会を体験的に知っているわけではありませんので、言っていることは概念的な把握に終始しています。実際に知っているわけで