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「 ビトゥイーン・ザ・バー」 エリオット・スミス Between the bars Elliot Smith / Cover <あの名曲を日本語で歌ってみる>

エリオット・スミス(Elliott Smith)は、1969年8月6日、アメリカネブラスカ州オマハの生まれ。生まれて1年後に両親が離婚、エリオットは母親に引き取られた。そして、母親が再婚。しかしエリオットは、義父との折り合いが悪く、ずいぶん酷い目にあったのだという。

この幼年期の体験が、のちのちの彼の実存に、濃い影を落としたことは間違いないだろう。とてもセンシティブで、傷つきやすく、安定感を欠いた自我を、どうにかして飼いならしつつ生きることを余儀なくされたのではないかと思われる。

母親が音楽教師だったせいで、エリオットは9歳からピアノ、10歳からギターをはじめる。そのころから音楽の才能はあったらしく、ピアノ曲を作って賞をもらうなどしている。

14歳のときには、折り合いの悪い義父と離れ、実父のもとに引きとられた。高校在学中にはバンド活動をやり、簡単なレコーディングなどするように。ただ、この頃から、友人の影響もあってか、ドラッグやアルコールに手を出すようになったといわれる。

大学時代にはヒートマイザーというバンドを結成し、卒業後にはレコードも出している。その後ソロ活動が多くなって、1994年にアコースティック・ギター弾き語りの初ソロ・アルバム「ローマン・キャンドル」を発表している。

翌1995年には、アルバム「エリオット・スミス」と「イーザー/オア」をリリース、この曲「ビトゥイーン・ザ・バー」は後者に入っている。

このサード・アルバム「イーザー / オア」では、ベース、ドラム、キーボード、エレクトリックギターなど、すべての楽器をエリオット自身が演奏しているそうだ。アルバム・タイトルは、キェルケゴールの著書「あれか、これか」から名付けられたのだという。絶望について深く思索したキェルケゴールとエリオット・スミス、たしかに相通じる世界を見ていただろうことは頷ける。

これらのアルバムで、ミュージシャンとして、一定の評価も人気も得るようにはなった。しかしエリオットの繊細な精神は、日増しにアルコールとドラッグに侵されていく。2001年からは、ライブ活動も途絶えがちで、髪は伸び放題、脂ぎった顔に無精ヒゲ、すっかり面やつれしてしまったという。たまにライブに出ても、演奏中に記憶障害になり、歌詞やギターコードを忘れて、観客に教えられるようなこともあり、メディアで「最悪のショウ」と酷評されたりもしたらしい。

しかし、そんな状況のなか、2002年末からは治療に専念し、ドラッグ中毒を克服し、アルコールや抗うつ薬への依存も断ったそうだ。34歳の誕生日は、クリーンな身体で迎えたのだという。

ところが、身体が元気になった2003年10月21日、突然の死がやってくる。同棲していた彼女、ジェニファー・チバによると、その日、二人は口論となったので、彼女はバスルームに閉じこもってしまったのだという。すると、しばらくして、突然叫び声がした。飛び出してみると、キッチンナイフが胸に刺さったエリオットが立っていた。彼女はナイフを引き抜き、救急車を呼んだ。が、エリオットは搬送先の病院で死亡。

現場に残された付箋に「ほんとうに悪かったな。愛してるよ。神よ我を許したまえ」とメモが残されていたため、自殺とみられた。ただ、公開された検視報告書では他殺の可能性も否定しきれないとされていたそうだ。

いずれにしても、とても不安な精神状態を生きていたのだろう。残された音楽からは、この世にあることの悲哀、ややもすれば消え入りそうな実存の影が、やわらかな音とことばを紡いでゆくのが感じ取れる。

この曲「ビトゥイーン・ザ・バー」は、ユーチューブに本人が歌う動画がアップされている。飾り気も派手さも華やかさも、まるでないのだが、ギターを弾きながら淡々と歌う姿が胸に迫る。夜中にひとりで聴くと、存在の悲哀のようなものを想像ずにはおれない、そんな歌だ。

バーの間で

さあ 飲もうよ 今夜は
語り明かそう
きみが してきたことや
なりたかった ものや
いくつかの 可能性や
不可能性や
そして ありのままの
いまの きみや
飲もうよ  いっしょに
すべて 忘れて
キツイ日々も いまは 
すでに 昨日のことさ
ぼくに 任せてよ 
ほら  だいじょうぶだよ
なにもかも 捨てちまっていいよ

きみは ずっとそこにいて
ほんとうは そこにいたくなかった
圧し潰すように
きみを 苛むものから
ぼくが 守るよ
 
さあ 飲み干しなよ 
星を 見にいこう
そして キスをしよう  
つぎのバー までの道
空に向かい きみは  
高く 両手を挙げて
運命を 待つように 見える
飲もうよ  もう一杯
抱きしめようか
少し ためらっている
ずっと 心の底で
でも  踏み出すだろう
だって きみが好きさ
わすれものを 取り戻すために

きみは ずっとそこにいて
ほんとうは そこにいたくなかった
圧し潰すように
きみを 苛むものから
ぼくが 守るよ

Between the bars - Elliot Smith

Drink up, baby, stay up all night
the things you could do, 
you won't  but you might
the potential you'll be, 
that you'll never see
the promises you'll only make
Drink up with me now and 
forget all aboutthe pressure of days
Do what I say and I'll make you okay 
and drive them away
the images stuck in your head
People you've been before 
that you don't want around anymore
that push and shove and 
won't bend to your will
I'll keep them still

Drink up, baby, look at the stars
I'll kiss you again between the bars 
where I'm seeing you
there with your hands in the air, 
waiting to finally be caught
Drink up one more time and 
I'll make you mine
keep you apart deep in my heart 
separate from the rest
where I like you the best and 
keep the things you forgot
The people you've been before 
that you don't want around anymore
that push and shove and won't 
bend to your will
I'll keep them still


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