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ちえのかたまり

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#エッセイ

タイガースじいちゃん

タイガースじいちゃん

あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!

というのは『ジョジョの奇妙な冒険・第3部』のポルナレフさんの台詞だそうですね、引用したけれど実のところ未履修なんですよ、ジョジョを読まないままに大人になった私であるもので。

で、ありのままに今起こったことを。

うちの5歳、職業幼稚園児、学年年長さんは毎朝私の送迎で幼稚園に通っている。

雨の日も風の日もときに雪の日も。雪の日に自転車というのは嘘でも偽りで

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死んだ人からの意見

死んだ人からの意見

その瞬間、本望ではないことに気づいた 海で死ぬなら、本望だと思っていた。
 本気でそう思っていた。
 とその人は言った。

 ところが、海でサーフィンをしていて、転倒し、サーフボードが自分の顔に向かってきたとき、死にたくないと思った。顔をかばった手が大きく切れて、ずいぶん血が出たが、命に別状はなかった。死ななくてよかったと、心底思った。

 あのとき──ボードが自分の顔に向かってきたとき、海で死ぬ

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【連載 Bake-up Britain:舌の上の階級社会 #27】 キュウリのサンドウィッチとポークパイ(1/4)

【連載 Bake-up Britain:舌の上の階級社会 #27】 キュウリのサンドウィッチとポークパイ(1/4)

「ザ」・サンドウィッチ夏はピクニックの季節だ。梅雨の日本のように雨と湿気にさいなまれることもなく、好天に恵まれ爽やかな風が吹き、盛夏にまでは少し間がある6月から7月にかけてのイギリスは、ピクニックに最適である。緑豊かな芝や牧草の続く緩やかな丘がいい。できるだけ高いところまで登って、籐編のバスケットからでなくともいいが、食べ物や飲み物を取り出して、敷いたテーブルクロスに並べる。上流でも中流でも労働者

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人生でがんばりたいのは、そんなことではなかった

人生でがんばりたいのは、そんなことではなかった

 どなたが書いたものだったか、申し訳ないことに、もうわからなくなってしまったのが、たしかネットだったと思う。
 ある闘病記を読んでいたら、病気に対処するために、当人もいろいろ工夫したり努力したりしていて、それがある程度、うまくいって、ちょっとほっとしたという箇所で、たしかこう書いておられた。

 この一文に、私はとても胸を打たれた。
 まったくだと思った。
 こんなことでがんばりたい人がどこにいる

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「感謝がたりない」は、なぜこわいのか?

「感謝がたりない」は、なぜこわいのか?

美しいやりとり 人に親切にしてもらったら、きちんとお礼を言いましょう。
 長い間、この教えに疑問を持ったことはなかった。

 AがBに親切にする。BがAに「ありがとうございます」と感謝の気持ちを表す。それをAが「いいんだよ」と笑顔で受けとめる。
 これほど美しいやりとりはないと思っていた。
 今だって、美しいと思う。
 親切にされたほうは、「ああいう親切な人も世の中にいる」ということが、生きていく

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女子高生の私が大好きな家庭科の先生に裏切られた話

女子高生の私が大好きな家庭科の先生に裏切られた話

家庭科の授業ではいつも先生に驚かされる。

その日も私たちは週に一度の楽しみとして家庭科室へやってきた。体験的な授業を多くされる先生だったため、座学は久々だった。今日は何をするんだろうと期待に胸を膨らませながら筆記用具を手に席に着くと、先生は言った。

「今から小テストを始めます。」

先生のその一言は、これから始まる楽しい時間の終わりを宣言したも同然だった。
テストという単語は我々学生にとって、

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数人に囲まれ危機を迎えた話

猫を動物病院へ連れて行く途中、近くで現在の政策に対してメッセージを送るビラを配っている人達がいた。

私にもビラを渡しに来たのだが、両手は猫で塞がっている為受け取れない旨を伝えようとしたところ、太ももから臀部にかけて激しく攣ってしまった。あまりの痛さに「うおぉ…」地の底からうめくような声が漏れた。

しかも、痛くないところを探すように身体が意思とは無関係に捻れていく。
目の前で突如捻れ出した不審者

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猫の診察で泣きそうになった話【本編】

猫を初めての病院へ連れて行く事になった。
病院が違えば、色々とルールも違うものらしい。

前の病院は気が散らないよう必要最低限しか話しかけてはいけない雰囲気であったが、こちらの病院では先生が猫を診察している間、褒めてくださいと言うので、変わった病院だなと思いつつも言われた通りにする事にした。

「非常に聡明な顔立ちで…」
「髪型も綺麗に整っています…」
「猫に対しても非常に紳士的で…」

などと、

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ひとりでいることが推奨される時代――「マイナーノートで #01〔不要不急〕」上野千鶴子

ひとりでいることが推奨される時代――「マイナーノートで #01〔不要不急〕」上野千鶴子

各方面で活躍する社会学者の上野千鶴子さんが、「考えたこと」だけでなく、「感じたこと」も綴る連載随筆。精緻な言葉選びと襞のある心象が織りなす文章は、あなたの内面を静かに波立たせます。

不要不急 コロナ禍の1年が過ぎた。春夏秋冬4つの季節を経て、また春になった。
 この1年が長かったのか、短かったのか……。「あっというまに過ぎた」というひともいる。だが、わたしにとっては、短かったとは思えない。コロナ

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わかりあえなくても心強い関係性について

わかりあえなくても心強い関係性について

仕事で「価値観」を扱うことが多い。
私の講座やセミナー、授業を受けたことのある人なら、そのことを知っていると思う。

価値観とはわかりやすく言えば、
『自分にとって何が大切で、何が大切ではないのか』
のようなものだ、と前置きをして話を始める。

もう少し深めてみると、それは、
『自分の考え方や判断の基準』のようなものでもある。
だから自分の価値観は、とっさの出来事や感情を揺さぶる出来事に対応すると

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幡野広志さんへ。

幡野広志さんへ。

はじめまして。はると申します。
以前、旦那のDVに苦しみ別居を決意したnoteを書いたとき、幡野さんが読みに来てくださりTwitterでシェアをしてくれたおかげで、たくさんの方がnoteを読んでくださり、サポートやコメント、シェアという形で応援してくださったことがありました。別居を決意できたのも幡野さんの書籍の言葉に後押しされた部分が大きかったので、今でもそのことを心から感謝しております。

今回

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男社会で負けて男をやめた話

男社会で負けて男をやめた話

まず、私は男社会で完全敗北した男です。
もう2度と社会に戻ることはないでしょう。

『強い男』になりたかった男でした。

警察官。現場作業員。前科者だらけのブラック企業。
・・・これまで私が勤めてきた会社はどれも、過剰なほど『男らしさ』を求められる男の職場ばかりでした。

男は男らしさを求められるあまり、
苦しんだり、苦しめたりしてしまうことがある。

最近では「男は弱くても良い」という意見をたび

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ツイートがバズったわたしは、口紅を買えていない

ツイートがバズったわたしは、口紅を買えていない

仕事を辞めた翌日、わたしは生きていた。

「当然である」と、言えるだろうか。わたしは自分のことを"よくやっている方"だと思っている。意味もなく宙を見上げ、水滴を仕舞う。人生を都合のいい妄想へ預けなければ、硝子のように心が割れてしまいそうだ。

「大丈夫ですか?」

歩きながら眠っていた。目が血走り、足が痙攣する。どこかから声が聞こえた気がしたが、辺りを見渡しても人は少なかった。ロクにごはんも食べて

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「家族」は正しいことをするための場所ではない。大切なのは、安心できること ~信田さよ子さん出演のオンライン相談会より

 10代のための相談窓口まとめサイト「Mex(ミークス)」が、「親が重い。逃げたい。親との関係どうしたらラクになる?」と題して、ZoomとYouTubeを使ったオンライン相談会を実施しました。
 全2回で、ゲストは公認心理師・臨床心理士の信田さよ子さん。MCは太田尚樹さんです。

1回目の質問テーマは、「私は親にとって要らない子だと思ってしまう」
2回目の質問テーマは、「親との接し方がわからない」

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