きなこ

はじめまして。野生の一人文芸部です。この物語はフィクションかもしれないしそうでもないかもしれません。 お仕事のご用命はTwitterのDM。もしくは此方の方までお願いいたします。⇨https://note.com/6016/message

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    マガジン

    • 短編集:詩を書く

      短歌や詩を下敷きにして小説を書きました。1つのものが1万字を上限にしています、ちょっと気の向いた時によめるものをこつこつ書いてここに置いておきます。あなたの気の向いた時に気軽に自由に手にとってくださると書いている人間は喜びます。

    • 短編小説集:春愁町

      春と別れをテーマにした短編集です。ひとつの町の中に別れる色々な人達の優しい姿を描く事が…できるのだろうか。全部の小説の世界はすべて同じ場所で人物もそれぞれに繋がりがあるというものです。

    • 入院日記。

      2022年4月の4歳1年ぶりの検査入院中に毎日書き続けていた日記のようなものです。

    • 小説:コンビニ幽霊

      深夜の病院のコンビニにやってくる名前のない子と、深夜シフトに入っているがためにその子にいつも遭遇するアルバイトの男の子の話です。短編として書いたものがどんどん長くなりまして、3篇、10万字超のものになりました。

    • おやすみ日記

      第6波とよばれる時期、小学校が学級閉鎖になり幼稚園も自主休園。閉塞感というものが子ども達をとりまくすべてに憑りついた時期を記録しておいてやろうと思いついて書き始めた私個人の半径2㎞ほどの範囲の日記です。2022年1月末から現在進行形

    最近の記事

    赤い本、編む。

    いま、丁度過ぎゆこうとしているこの夏に、私は1冊の本を編みました。  本を『編む』という表現が一般書籍に該当してよい表現であるのかどうかはよくわからないのですけれど、作家の三浦しをんさんのお書きになった作品に『舟を編む』という素敵な小説があって、あの作品は言葉にとことん真摯で人にはどこまでも不器用な辞書編集者の物語ですが。  ともかく言葉の大海原を漕ぎだすための舟に模した辞書を、長い年月をかけてたったひとつ作り上げる行為のことを『編む』と表現するのはなんて素敵なことでしょ

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      • こわいもの/end user

         これは『現代のホラー』をテーマにしたショートショート。題名を入れずにきっちり2000文字。noteと文藝春秋さんの企画だそうで、そういうのちょっと楽しそうだなあと思って書きました。その下はちょっとした雑文です。 『題:end user』 『所有する』ことはその所有をある期限まで、ないしは半永久的に維持することだ。常に同じ状態を保つかそれ以上、上向きでなくてはいけないはずだ、でも僕等の暮しているこの世界はどうだろう。未知の感染症が世界を席巻し、予測の範囲を超えた自然災害、

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        • Queen Angio 4

            40年超生きているのに、未だに自分がよくわからないというか、できないことが多すぎる。   例えばちょっとボタンが取れた時にそれを縫い付けようとして針に糸を通すことはできてもそのあとの玉止めができない。それから電車の乗り換え、これは生来方向音痴であるということに起因しているのかもしれないけれどとにかく苦手で、ついこの前も 「淀屋橋まで行って地下鉄御堂筋線に乗り換える筈が、ひとつ手前の北浜で降りて、更にそこが北浜だと気が付かずそのまま地下鉄堺筋線に乗ろうとする」 という

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          • Queen Angio 3

            『子どもだから分からない』  そう思っているのは大人だけで、自分が子どもであった頃を思い返せば、これは私が大変に生意気な子どもであったからなのかもしれないけれど、結構小さなころから大人が大人同士で話す色々を「わたしはこどもですので」という涼しい顔で知らないふりをしつつ実のところはそれをしっかりと聞いて、割にちゃんと理解していた。  それだから、という訳でもないけれど自分の子どもが検査だとか手術だとかの前にちゃんとそのための時間を設けて 「明日はね、まずは浣腸があって…ウ

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          • If God disappears in the world
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            Queen Angio 2

             将来的に根治とか完治とかそういうものの予定のない疾患児の殆どは病院と終生、ご縁が切れないもので、かかりつけの病院というものは最早実家のような、田舎のおばあちゃんの家のような。病院にある白の銀の透明の医療機器と清潔すぎるくらい清潔なリネン類とは印象の違う、土の香りのする暗い土間もないし赤い夾竹桃の揺れる庭もないけれど何か懐かしい趣のものになるのだなあと、4歳の女王のばあやとして母として入院付き添いをする私は年々、思う。 「お部屋にいてもつまらん、お外に参ります」 なにしろ

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            Queen Angio 1

             『この世界から小児科医がひとりもいなくなるのでは』 そう思うほどに子どもたちの界隈には苛烈であった感染症の大波と共に、例年のごとく驚くほど暑い夏が過ぎゆきて、朝に夕に微かな秋風の吹くころにはかねてから予定の4歳の入院があるのやからと、歯を食いしばって夏をやり過ごし、さあいざその日を無事に迎えたら、それが南から強い台風11号のやって来る日であるというこの踏んだり蹴ったりぶりは一体何なのですか。  一般に『子どもが入院なんです』と、どなたかに言うと「まあ…それは大変ですねえ

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            海にゆく路面電車のこと

            『第七波』だなんてヨハネの黙示録による世界の終わりみたいなことのあった夏が過ぎゆこうとしている今、思えば子ども達をひとつもどこにもつれてゆけない夏であった。私達に終末はやってはこなかったけれど、夏は過ぎ行きそれを見送りながらいまは9月の4日。  本当なら今年の夏は富山の実家に帰省するはずであって、それは丁度7月の末の予定だった。もうずいぶん前から、持病があって24時間酸素の機械につないでおかなくてはならない末の4歳のために小児循環器医である主治医に「旅行サービス支援申込書」

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            新学期と、はじまる

            「大体さあ、困ってるって、誰が困ってんの?学校の先生でしょ?先生が困って何とかしろって言ってんでしょ?息子君はさあ、実際のとこあんまり困ってないんじゃないの?」  これは息子を通じてもう4年の付き合いになる小児神経科医のことば。  息子が、現在もう4歳8カ月になる妹が産まれ、長い入院からやっと帰宅した4年と少し前の春、先天性心疾患のために家でも色々とケアが必要になる乳児がやって来たことで激変した生活と真ん中の娘の新入学と息子の進級、全部が重なり、もともと新しい環境に慣れて

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            大好きは元気ですか

            4歳の娘は可愛いものが好き、そして好きなものが多い。 気が多いとも、言うのかな。 例えば彼女をひとたび100円均一に伴えばただでは帰れない。というものも最近の100均というのはどこのどたなたも御存じの通りひところの「ちょっと便利で安かろう悪かろうモノがでんと並ぶ雑貨屋」ではなくなっているのですよね。   そこには、定番のプラスチックの小分けケースに食事用の皿小鉢、その他にちょっとしたオモチャに季節の飾りに食品に……商品は数かぎりなく置かれていて、ちょっとしたお化粧品や、そ

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            窓は、壁に囲まれた空間の中にあって外のひかりと風を得るための開口部であるので、閉塞空間のとりわけ苦手な私は、それがどこでも室内に入るとまずは窓を探します。そしてそこから四角く切り取られた、あるいはまあるい形にくりぬかれたお空は見えるのかなと、まずは覗き込んだりするのです。 建築にはちっとも詳しくはない人間ですが、人のつくる建物には何か特殊な事情や、芸術的事由のない限り大体は窓というものがあるもので、それは内側に暮すひとびとが陽光を採光とするために、人間のひかりへの根源的なあ

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            うれいなくたのしく生きよ、娘たち

            美しく生まれたかったと思いながら、賢く生まれたかったと思いながら、街をあるいてひとから振り返られて見惚れられるような経験も、東京大学を最終学歴として履歴書に書けるような人生も持ち合わせていない私は 「エマ・ワトソンに産まれていれば…」 なんてことおばさんになった今も時折思わなくもないのですけれど、しかしおばさんであるからこそ美貌と聡明、そのふたつを持ち合わせていることが果たして女の子の幸福にそのまま直列繋ぎとなっているかどうかはちょっとわからないとも思うのです。 これは

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            全速力で

            8月12日は『茜雲忌』。  夏の夕暮れに茜色に染め上げられた白雲を指すような優しくうつくしい響きのこの言葉は、国内最大の飛行機事故である『日本航空123便墜落事故』を示すものだそう。夏のすこし寂しい夕暮れを写し取ったような響きの中に520名のひとびとへ鎮魂の祈りがあるのだと8月12日に縁ある私は知っていて、この日の朝にはまず御巣鷹山に眠る魂の安らかであることを祈ります。 さて私は11年前のこの日、私は真ん中の娘を産みました、  娘が生まれたのは早朝のことで、場所は里帰り

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            マクドナルド友達

            今、現在進行形で4歳児を育てている私は、マクドナルドに足を向けて寝られない人間です。例えばちょっと出先で気に入らないことがあって道にごろんと倒れておヘソまる出し、青空を仰いで 「あたしはもう一歩もあるけない、お家なにそれぜったい帰らない」 そういう意味合いのことを言ってわんわん泣く我が子に 「ハッピーセット買ってあげるから!」 と言うと途端に涙を引っ込めてむくりと起き上がりスタコラあの赤に黄色の看板を目指して歩き始めるのだから助かることと言ったらないのですよ。ファスト

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            サヨナラだけが人生ならば

            寺山修司はそれに続けてこう綴る。 サヨナラが永遠の離別のことであるのなら再び巡りくるこの出会いは、人は、季節は、一体なんなのですか。 それを言いたくなる気持ちは私もとてもよく分かるのです。不惑を過ぎてからここまで、私の周囲にはもう二度と会うことのできない人が突然増えました。そうしてそういう人々というのは「まだいいよ、ちょっと早いよ、もう少しここでゆっくりしていったら」と言いたくなる人ばかりです。 まだ年端もゆかない子どものある人、その年端もゆかない子ども本人、子どもでも

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            夏が終わらなければと思ってた。

            夏休みって半分まできたのでしょうか、今日が8月6日でうちの子ども達の夏休みの最後の日は8月24日ですから、ざっくり半分は越えたのだと考えてよいのですか。 私にもかつて中学生だった時代があり、その頃、田舎のとりわけのんびりとした土地のしかし巨大な公立中学校に通っていた私は夏休みの終わる日のくることをとても恐れていました。 当時の私と言えば、妙に過剰な自意識を持つ、遠くで人が笑えば自分が嗤われているのかもしれないと訝るとても面倒くさい14歳でした。別に田舎の何のとりえも特徴も

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            私の化粧ポーチと一応は呼んでいる倉敷帆布の小さなポーチの中にはわかりやすい化粧品というものが殆ど入っていない。 それには子どもの薬と消毒液とバンドエイド、小さなハンドクリームのチューブとメンソレータムのリップクリームと、あとはカドがきれいに落とされて楕円形になっている透明のテープが入っている。それは知らない人が見たらちょっと高級なセロハンテープの切れ端のような用途不明のなにか。 これは今を遡ること4年ほど前、まだ世界の誰もが今のように手を消毒しつつマスクをして歩かなくても

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