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modern poetry

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#私の作品紹介

Anna.

Anna.

私が見ている此の夜の海は、孤独色した真っ黒な夜空を溶かしたみたいに、冷たくて壮大だ。

誰かの悲鳴と沈痛が目一杯に詰めこまれた
『黒 くろ Black』と書かれた絵の具のチューブを、

他の色が混ざらないように、優しく、ゆっくりと絞り出してゆく。それは空明に吸い込まれては、哀しく生滅する。

ねぇ、アンナ。

私たちは死んだら、このまま消滅して、記憶を失くしたまま新しい誰かになっていくのかしら。

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Intangible Sense.

Intangible Sense.

「ねえ。触れられないものに、触れたくなるときってない?」

と、微かに滲んだ目をした君が、虚ろにこちらを向いて、そう呟く。

「わからなくもないな。」
「でしょ。」

はっきりいって、ぼくには彼女の言ったことは何も分かっていない。でも、なんとか自分の頭にある言葉の糸を、一つひとつ、絡みとってみた。

「うん。例えば、ぼくは女の子の気持ちがよく分かるし、そのままそっくりに演じることだってできる。でも

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Madness.

Madness.

頭がはち切れそうに痛い。

頭が痛いと、大好きなものだって、この世の不条理だって、どうでもよくなってしまう。

好きな小説を並べて読んでいても、なにも面白くない。ただ無造作に並べられた文字の羅列を見ているみたいで、言葉は入ってくるけれど、自分の感覚の実態として、全く現れてこないの。

破った。やぶった。ヤブッタ。

B5サイズの真っ白い紙の四角の隅を、押しピンで1つずつ、ぐっ、ぐっ、と押し込むよう

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STRAY SHEEP

STRAY SHEEP

学校帰りに見える、暮色に包まれた空は、まるで、全人類の希望と憎悪が、一気に、わたし一人に降りかかってくるみたい。

そんな黄昏時の空は、わたしがいかに両義的で、歪な存在であることを、教えてくれているようだ。

わたしは、人の両義性を見つけるのが、、すき。

まるで赤の他人から、罵倒の声を浴びせられたみたいに、わたしの身体の奥底から"得体のしれないなにか"が、ふつふつと煮えたぎって、今にも"バケモ

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