シマリス

生活の役にはあまりたたないことを、 あれこれ考えるのが好きです。 既存作品の感想や考察…

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生活の役にはあまりたたないことを、 あれこれ考えるのが好きです。 既存作品の感想や考察がメイン。 創作物がほんの少し。

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記事一覧

白猫

 数年前、自宅の庭で飼っていた犬が死んだ。それ以降、うちの庭に猫が出入りすることが増えた。  野良猫のこともあれば、近所で飼われている猫のこともある。  一年ほ…

シマリス
1か月前
4

内観を、軽い気持ちで試みたら、とんでもない爆弾が出てきた件

 私は、3歳でぬりかべを見たり、大叔母が野生のイタコモドキだったり、母が予知夢を見る人だったり、いろいろあったので、「科学で解明できないこと」が好きな人間です。…

シマリス
2か月前
6

大学の自己紹介コールの変遷

 大学入試に合格し、無事入学手続きを終えた学生が、まず行うことは何か。  シラバスを熟読することか。  履修項目を吟味選択することか。  否。  まず行うこと。それ…

シマリス
4か月前
8

輪廻転生に関する仮説:なぜさっさと抜けるべきなのか

 宗派にもよるが、とりあえず仏教では、輪廻転生は「ある」とされている。 「生まれ変わり」と言えば何? と問われたとき、「松田聖子の記者会見」を思い出す人は、今は…

シマリス
4か月前
1

バラエティ番組のトーク台本が雑だった話

 80年代頃のお笑い番組の台本には、「○○コーナー:たけしのトークで客席爆笑」などという、たった1行のト書きが、平気で書かれていたそうである。出演者の実力次第で、…

シマリス
4か月前
3

夢一夜

 こんな、夢を見た。  夏目漱石のパクりとか言って怒らないで下さい。  見たんだからしょうがないんだもん。でもごめんなさい。  長い間つきあっていた恋人との結婚が…

シマリス
5か月前
3

「~になります」は、言わせる方にも責任がある

■腹のたつ日もあるさ、人間だもの  お腹がすいたねとメシ屋に入って注文して、待つことしばし。  店員さんが持ってくる。そして。 「お待たせしました。マルゲリータ…

シマリス
5か月前
1

ぬりかべ

「霊を見た」「UFOを見た」「オーラが見える」「オバケが出たから収録に遅刻した」なんていう話を聞くたびに、まあ最後のビートたけしのボケはともかくとして、いわゆる霊…

シマリス
5か月前
2

無門関第十九則「平常是道」補足

 無門関第十九則「平常是道」について、もう少し綴ります。  大筋は前回と同じ。そこから先の補足が今回の目的です。  現代語訳はこちら。  前回の考察はこちら。 …

シマリス
5か月前

「ここは今から倫理です。」12話への雑感

 雨瀬シオリ著「ここは今から倫理です。」12話に出てきた、倫理問題について、あれこれ考えます。 ■問題文  問題文は、以下のとおり。 「あなたはとある夫婦の家の隣…

シマリス
5か月前

ある手品の記憶

 子供の頃の話である。  私は居間で、母とふたりでテレビを見ていた。  番組のタイトルはもう思い出せない。  専業主婦向けの、午後の情報番組だったと思う。  その…

シマリス
5か月前
3

無門関第五則「香厳上樹」異説

 無門関第五則 「香厳上樹」について、もう少し綴ります。  この則に関しては、大筋はあまり前回までと変わらないと思いますので、補足程度です。蛇足かも知れない。  …

シマリス
8か月前

『猿の手』考察【追記あり】

 以前、『猿の手』の日本語訳を上げました。  原文の文法には忠実ではありませんが、誤訳はないと思いますし、日本語としてこなれた表現を心がけたつもりです。  短編で…

シマリス
9か月前
15

『モンティ・ホール問題』について考える

■問題の概要 『モンティ・ホール問題』とは、数学の問題のひとつです。  問題の内容は、こんな感じです。  細部のディテールはちょっと変えましたが、構造は変えてい…

シマリス
10か月前
2

映画『2081』のプチ感想

 先日、「ハリソン・バージェロン」という短編小説の、日本語訳をあげました。 「平等」という、崇高な理念を実現するために、人間本来の在り方を、歪な方法でねじ曲げよ…

シマリス
11か月前
2

公案「隻手音声」考察

■まえがき 「隻手音声」について、あれこれ考えます。  公案の具体的な中身については、こちらを参照しました。  この公案は、江戸時代の僧侶、臨済宗の中興の祖と…

シマリス
1年前

白猫

 数年前、自宅の庭で飼っていた犬が死んだ。それ以降、うちの庭に猫が出入りすることが増えた。
 野良猫のこともあれば、近所で飼われている猫のこともある。

 一年ほど前に初めて見かけた白猫も、そんな猫たちの中の一匹だった。
 頭からしっぽの先まで真っ白なその白猫を、一目見て私は、野良の白猫とは珍しいなと思った。
 野良だと思った理由は五点。
 首輪をしていないこと。痩せこけていること。薄汚れて毛づや

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内観を、軽い気持ちで試みたら、とんでもない爆弾が出てきた件

 私は、3歳でぬりかべを見たり、大叔母が野生のイタコモドキだったり、母が予知夢を見る人だったり、いろいろあったので、「科学で解明できないこと」が好きな人間です。勿論「科学で説明できるもの」も大好きですが、「科学で解明できそうなのに、できないふりをしているもの」「科学で解明できなさそうなのに、できるふりをしているもの」はそれほど好きではありません。他人に知られると面倒なので普段は内緒にしています。

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大学の自己紹介コールの変遷

 大学入試に合格し、無事入学手続きを終えた学生が、まず行うことは何か。
 シラバスを熟読することか。
 履修項目を吟味選択することか。
 否。
 まず行うこと。それは、飲み会に出ることである。(暴論)

 大学によっても、学部によっても、サークル主催か、学部の先輩方が主催なのかなどの、多少の差異はあると思うが、「旨いメシと酒で受験勉強の憂さをはらし、我が世の春を謳歌する」という基本スタイルは同じで

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輪廻転生に関する仮説:なぜさっさと抜けるべきなのか

 宗派にもよるが、とりあえず仏教では、輪廻転生は「ある」とされている。
「生まれ変わり」と言えば何? と問われたとき、「松田聖子の記者会見」を思い出す人は、今は随分少なくなったろう。
 郷ひろみとの破局会見で「生まれ変わったら一緒になろうねって、約束したんです」と涙声で語ったその僅か半年後に神田正輝と結婚した松田聖子の、一片の憂いもない満面の笑みを見たとき、やはりあのくらい面の皮が厚くなければ、ト

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バラエティ番組のトーク台本が雑だった話

 80年代頃のお笑い番組の台本には、「○○コーナー:たけしのトークで客席爆笑」などという、たった1行のト書きが、平気で書かれていたそうである。出演者の実力次第で、番組の台本がペラ紙一枚に収まることも珍しくはなかったらしい。
 まあ、こんな無茶な台本をあっさりクリアできるのは、一握りの天才だけであって、それに加えてコンプライアンスに何かと厳しい昨今は、ほぼすべての発言内容が、台本にきっちり書かれてい

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夢一夜

 こんな、夢を見た。
 夏目漱石のパクりとか言って怒らないで下さい。
 見たんだからしょうがないんだもん。でもごめんなさい。

 長い間つきあっていた恋人との結婚がようやく実現に至った。
 つきあい初めの頃の情熱は少しずつ薄れていき、何度も起こった諍いにも疲れ始めていた、そんな頃だったけれど、それでもプロポーズは、それまでの辛さがすべて消えてしまうほど嬉しかった。

 父に報告をした。
 低く唸っ

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「~になります」は、言わせる方にも責任がある


■腹のたつ日もあるさ、人間だもの

 お腹がすいたねとメシ屋に入って注文して、待つことしばし。
 店員さんが持ってくる。そして。
「お待たせしました。マルゲリータピザになります」

 お腹がすくとね、イライラしやすくなるわけですよ。
 早く食べたいから、「ああ、はい」と聞き流しはしますが、
「なりますって何だ。何が、今、ここで、ピザになるんだっ」
「さっきまで皿に載ってたのは、小麦粉かっ。それと

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ぬりかべ

「霊を見た」「UFOを見た」「オーラが見える」「オバケが出たから収録に遅刻した」なんていう話を聞くたびに、まあ最後のビートたけしのボケはともかくとして、いわゆる霊感のない私は、「そりゃまた随分と特殊な能力をお持ちなんですねぇ」と、少々意地の悪い気持ちを抱くことが多い。
 オカルトに限らずあらゆる分野において、私は、非日常的な物事に対する好奇心が若干強い質なので、本当は羨ましいと思う気持ちも数滴ほど

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無門関第十九則「平常是道」補足

 無門関第十九則「平常是道」について、もう少し綴ります。
 大筋は前回と同じ。そこから先の補足が今回の目的です。

 現代語訳はこちら。

 前回の考察はこちら。

 いわゆる「平常心」と、「平常心」は、似てるようで違うらしい、ということを、前回書きました。
 その際、このことがまあまあわかりやすくなる事例として、「魅力的な異性と出会ったとき」のケースを挙げたんですが、これは、禅の周辺の逸話として

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「ここは今から倫理です。」12話への雑感

 雨瀬シオリ著「ここは今から倫理です。」12話に出てきた、倫理問題について、あれこれ考えます。

■問題文

 問題文は、以下のとおり。
「あなたはとある夫婦の家の隣に住んでいる」
「そこの夫は妻に酷い暴力を振るう人で」
「ある日その妻が、ボロボロの姿で、助けを求め、飛び込んできた」
「その後、その夫もやってきた」
「『俺の妻がここに来なかったか』」
「・・・さて、この時貴方は妻を、隠し通すか、夫

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ある手品の記憶

 子供の頃の話である。
 私は居間で、母とふたりでテレビを見ていた。

 番組のタイトルはもう思い出せない。
 専業主婦向けの、午後の情報番組だったと思う。
 その番組の終盤で、スタジオ内で作られた料理を出演者が味わっていた、という部分だけが、かろうじて記憶に残っている。連日行われていた企画なのか、その日限りだったのかはわからない。
 一見、何の変哲もない料理企画。しかし、それは、通常の料理コーナ

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無門関第五則「香厳上樹」異説

 無門関第五則 「香厳上樹」について、もう少し綴ります。
 この則に関しては、大筋はあまり前回までと変わらないと思いますので、補足程度です。蛇足かも知れない。

 ある一人の僧が、口で木の枝に噛みついてぶら下がっています。
 手も足も、働かせていません。
 随分苦しい姿勢のように思えますが。

 これ、達磨の隠喩なのかな、と思ったわけです。
 達磨は、座禅のしすぎで、両手両足が腐ってしまった人です

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『猿の手』考察【追記あり】

 以前、『猿の手』の日本語訳を上げました。
 原文の文法には忠実ではありませんが、誤訳はないと思いますし、日本語としてこなれた表現を心がけたつもりです。
 短編です。よろしければお読みください。

 今回は、この、『猿の手』の考察です。
 ここからは具体的な内容に触れますので、未読の方はご注意を。

■モリスはなぜ、猿の手を渡したのか

 猿の手は、1人の人間の願いを3つだけ叶えます。
 しかし、

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『モンティ・ホール問題』について考える


■問題の概要

『モンティ・ホール問題』とは、数学の問題のひとつです。

 問題の内容は、こんな感じです。
 細部のディテールはちょっと変えましたが、構造は変えていません。

・あなたの目の前に、神様がいます。
・神様は、箱を3つ並べました。
 便宜上ABCと名付けます。箱の形状に違いはありません。
・3つの箱のうち、1つだけ、当たりです。残り2つはハズレです。
 当たりの箱には、「欲しい物を1

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映画『2081』のプチ感想

 先日、「ハリソン・バージェロン」という短編小説の、日本語訳をあげました。
「平等」という、崇高な理念を実現するために、人間本来の在り方を、歪な方法でねじ曲げようとする近未来を描いた傑作。
 海外では有名な古典のようですが、日本ではまだまだ無名の作品です。
 よろしければ、お読み下さい。

 ところで、優れた文芸作品は、映像化されるのが常です。
 この作品も例に漏れず、今まで3回ほど映像化されてい

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公案「隻手音声」考察



■まえがき

「隻手音声」について、あれこれ考えます。
 公案の具体的な中身については、こちらを参照しました。

 この公案は、江戸時代の僧侶、臨済宗の中興の祖ともいわれる、白隠慧鶴が考案したものだそうで、白隠はこれを、「狗子仏性」に替えうるものと位置付けてもいたらしいです。
「こっちの門のほうがくぐり易いと思うよ」と、白隠は思ったということなんでしょう。
 無門を門とする以上は、これもまた立

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