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彼、もしくは彼女について

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うつくしく、たくましいひとびと
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恋人の妹の話

恋人の妹の話

好きなひととのお付き合いが長くなると、相手の家族と会う機会も自然に増えていく。

彼を守り育ててくれたご両親にお会いするというのはやっぱり一大イベントだけど、好きなひとに兄弟姉妹がいると、よりおもしろい。

好きなひととともに育ってきた、親とはまたすこし異なる存在。

もし兄弟姉妹がいるならば、よくもわるくも、互いに影響を与え合っていないわけがないから、私は知っているひとのきょうだいを見かけるとい

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眼鏡の彼

眼鏡の彼

眼鏡の彼というのは、私が大学2回生の秋に仲良くなりはじめた男の子である。

その名の由来は非常に単純で、彼がいつも眼鏡をかけている男の子だからだ。このネーミングはあまりに安直なので、もし本人に聞かれたら「もっと他になかったの?」と怒られてしまうだろう。

私は誰かに狙いを定めてから実際に話しかけて仲良くなるまでの期間が割と短い方だ。しかし彼と満足に仲良くなるために、私はとても時間をかけたと思ってい

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カッターシャツの彼3

カッターシャツの彼3

そんな気がないのに気づいたら3回も同じひとのことを書いているというのは、もうそのひとの虜になってしまっていることの裏付けになるのだと思う。

だからつまり、私はカッターシャツの彼のことをすごく好きなのだろうし、誰かにそう指摘されても言い逃れできない。

(カッターシャツの彼のその1、その2はこちら↑)

言い逃れはできないけれど、そもそもするつもりもなく、私は彼をとても魅力的だと感じるし、会話の回

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ワニの筆箱の彼

ワニの筆箱の彼

大学にワニの筆箱を持っている男の子がいる。

こういう一文を、一体私は何度noteで書いたことだろう。

もうそろそろ「ワニの筆箱の彼が…」という普通の書き出しで文章を始めても問題ないような気はする。でもこの「大学に〇〇な××がいる」という書き出し、結構気に入っているのでつい使いたくなっちゃうんだな。

(彼のことが書いてある記事はこちら↑)

このたび、今までは断片的に書くだけにおさまっていた彼

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水無月の天使

水無月の天使

高校生のとき出会って、3年間ずっと同じクラスだった女の子がいる。

彼女は全体的に小さくてほっそりしていて、しかもとても整った顔立ちをしているから、私はなんとなく漠然と「私が近づいていいものかなあ」と感じていた。

しかも彼女は単なるかわいい女の子ではなく、まぎれもない美少女だった。私が今までに出会ってきた女の子の中で誰よりも美少女だった。

そして上品でおしとやかそうに見えるのに、話してみると結

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本とコーヒーのにおい

本とコーヒーのにおい

大学生活がようやく身体になじんできて、ここ最近、学校へ通うのが楽しみで仕方がない。

特に研究室へと足を運ぶことは、私をうきうきした気持ちにさせる。

去年まではコロナ禍で研究室活動がさほど活発ではなかったし、卒論の作業をしている上級生に遠慮して、うまく研究室をつかえなかったからかもしれない。

春になってからというもの、私は実にのびのびと研究室を使っている。いつ行っても必ず知っている顔がいるとい

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あまくてやさしい

あまくてやさしい

マッシュボブの彼に、好きだと言われた。

去年の水無月に、研究室でぴたっと目があってから話すようになった彼。学部学科もゼミも、取っている教職科目も一緒の彼。去年の秋の終わり、私が熱を出したらお見舞いにりんごジュースをもってきてくれた彼。

その彼に好きだと言われた。ゼミのみんな(もちろん先生が主催)とのはじめて飲み会の帰り道、アパートの前まで送ってくれたマッシュボブの彼に言われたのだ。もちろん夜だ

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黒いラブラドール・レトリバー

黒いラブラドール・レトリバー

一昨日の朝6時過ぎ、バイトへ出かけていくとき、犬と散歩している男のひとを見かけた。

犬は普段からよく見かけるけれども、その日見た犬は黒いラブラドール・レトリバーだったから、犬と男のひとの横を通り過ぎるときに思わずじいっと見入ってしまった。

すると真っ黒な犬も、てくてく歩きながらじいっと私を見てきた。私たちは初対面なのに互いをじろじろ眺める、不思議な人間と犬だったと思う。けれどあの子が私の方を見

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胸元に咲いた、その赤い花を

胸元に咲いた、その赤い花を

3月を迎え、風が春色になる季節になるとふわりと思い出すことがある。私が中学生のとき好きだったひとのことだ。そのひとは同じ吹奏楽部の先輩で、私よりひとつ年上だった。

彼を好きになったのは、彼が私の楽器を運んでくれたのがきっかけだった。

私が担当している楽器はコントラバスだった。

コントラバスは152cmの私の身長よりも大きな弦楽器。そのほとんどが木でできており、しかも中は空洞なのでさほど重たい

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中学のときの同級生の話

中学のときの同級生の話

もう昨年のことになってしまったけど、中学のとき同級生だった男の子が入籍したという話を友人との電話で聞いた。

私がちゃんとかかわったことがある同級生の中で結婚した人物は彼が初めてだから、友達から話を聞いたときはすごく驚いた。

「ええっ、結婚したんだ!」
と思いつつ、おめでたいことだと素直に思えたのは、私がまだ若くて何も焦っていないということ、さらに同級生の彼がそう思わせるような人柄を持っていたと

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すてきなさんにんぐみ

すてきなさんにんぐみ

3人組というのは奇数だから難しいとはよく聞くけれど、私は完璧な組み合わせの3人組に所属している。

そのメンバーのひとりは私の後輩の女の子で、中学生のときに出会った。

吹奏楽部の低音パートとして日々を共有し、そこから親睦を深めてきた、もろくて強い彼女。手がきれいで今では煙草を吸う、1歳年下の彼女。

noteにも彼女のことを書いたことがある。

そしてもうひとりは、保育園から高校までずっと一緒だ

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恋とか愛とか

恋とか愛とか

中学生のころからの友だちに、恋人がすぐ変わる女の子がいる。

彼女がときどき連絡をくれるときは大抵恋愛の話があるときで、しかも毎回恋人が変わっている可能性があるので、私は彼女が「彼氏がさ…」と話し始めたら、まず最初に「どの彼氏?」と確認する必要がある。

この夏、彼女は私の実家でやっている俳句展に恋人とふたりでやってきた。私は初めてまともに彼女の恋人を紹介され、3人で楽しくおしゃべりしたりもした。

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お月さまを追いかけて

お月さまを追いかけて

秋のゆうぐれの空ってなんであんなにきれいなんだろう、といつも思う。

秋のゆうやけはまるで燃えているみたいだ。
濃い群青色の空、蜜柑色のレースで織られたように繊細なゆうやけ雲。

あとお月さまもきれい。昼間の月も、夜の月も好き。

ゆうやけの色に染まる少し前の、まだ透明な水色の空に、ほっそりした三日月が浮かんでいるのも好き。繊細でもろくて、飴細工みたいでもあるし、ブレスレットのチャームみたいでもあ

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10時間もぐっすり眠るほどに

10時間もぐっすり眠るほどに

9月のはじめごろ、帰省していたお友だちと春ぶりに再会した。ちょっと時間が空いてしまったけど、そのときのことを書きとめておこうと思う。

彼女は初夏生まれらしい、瑞々しい若葉がすくすくと伸びていくような様子を連想させる名を持つ女の子だ。瞳がきらきらしていて屈託なく笑う。

私たちは中学生1年生のときに同級生として出会った。けれど当時はそれほどなかよしというわけでもなく、行動していたグループは別だった

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