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しなやかに生きて幸せになるガイドブック

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織田信長の妹、お市の方とつながりリーディングして出てきた物語を、小説に書いています。お市の方から、今を生きるあなたへのたくさんの愛とメッセージを受け取って下さい。
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2020年5月の記事一覧

リーディング小説「お市さんforever」最終話 自分に正直に生きる

リーディング小説「お市さんforever」最終話 自分に正直に生きる

自分に正直に生きる

女は覚悟を決めると強い。準備ができた私は、まるでピクニックにでも出かけるように軽やかな気持ちだった。この世からあの世へ、ただいるステージが変わるだけ、そう思っていたから早く命を断ちたかった。だって痛いのは一瞬でしょう?!
だけど、この期に及んでも勝家はグズグズしていた。やはり男の方が未練がましい。紙と墨を取り出し「辞世の句を残しておかねば・・・」と、こきこき墨を擦り始めた。

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リーディング小説「お市さんforever」第二十七話 女に生まれた事を誇りに思う一生を生きる

リーディング小説「お市さんforever」第二十七話 女に生まれた事を誇りに思う一生を生きる

女に生まれた事を誇りに思う一生を生きる

賤ケ岳で秀吉と戦って破れた勝家はわずかな手勢と、ボロボロになり城に転がるように戻ってきた。秀吉率いる大軍は勝家達を追いかけ、ぐるりと城を取り囲んだ。

私は城の中からその様子をじっと眺めていた。まるで他人事のように、驚くほど何の感情も湧かなかった。北ノ庄城が落ちるのも時間の問題だと知り、娘達をこの城から逃すタイミングだけを見計らった。
城に残っていた者達は

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「リーディング小説お市さんforever」第二十六話 女は聖女にも悪女にもなれる

「リーディング小説お市さんforever」第二十六話 女は聖女にも悪女にもなれる

女は聖女にも悪女にもなれる

秀吉は自分を攻めていた滝川一益に、怒涛の反撃を開始した。秀吉がどんどん領地や城を取り戻したのに対し、一益は坂道を転がるように負けていった。
勝家は盟友の姿に触発され、兵を出す準備を始めた。
私達はあの日からほとんど口をきかない。この日も醒めた目で、出陣の支度する彼を見た。娘達はそんな私達を見て、ひそひそ話をしていた。
私は彼女達がこの城に居る時間はそう長くはない気がし

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リーディング小説「お市さんforever」第二十五話 女のプライド、男のプライド

リーディング小説「お市さんforever」第二十五話 女のプライド、男のプライド

女のプライド、男のプライド 

年が明けた天正11年、秀吉は大々的に新年パーティーを開催した。
多くの武将達が居並ぶ中、兄上の孫の三法師とその後見人の信雄に新年の祝辞を述べた。それは、その場にいた武将達に
「わしが、織田家家臣の最高権力者やけんね」
と認めさせた。その上
「だから、おみゃー達もわしと一緒におらんかね」と自分に着く方が得だ、見せたアピール大作戦だった。居並ぶ武将達は、勝家と秀吉の力の

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リーディング小説「お市さんforever」第二十四話 自分の闇に目を向けるのがこわい

リーディング小説「お市さんforever」第二十四話 自分の闇に目を向けるのがこわい

自分の闇に目を向けるのがこわい

12月、猿は勝家の領地近江の長浜城を包囲した。
もちろん私のところには、それより前に情報が入ってたわ。

長浜城にいたのは勝家の養子の柴田勝富。勝家の姉の息子で形だけの養子の勝富は、勝家のやり方に不満を抱え、勝家と仲が悪かった。
この情報も私の耳にちゃんと聞こえていた。
だから私は
「長浜城、彼に任せたら危ないんじゃない?
あそこ、猿に攻められたらすぐ落とされるわ

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リーディング小説「お市さんforever」第二十三話 知りたい答えがある場所

リーディング小説「お市さんforever」第二十三話 知りたい答えがある場所

知りたい答えがある場所

秀吉の行った兄上の葬儀、という名の盛大なパレードは、一週間も続いた。その間、ずんずん人と物が動いた京の町は、豊かに潤った。彼は京都の人々に経済的な豊かさだけなく、もれなく安心も与えた。兄上亡き後「これからどうなるんだ?!」と彼らは不安だった。何度も戦の犠牲者になった罪のない京の人々は、戦で武士以上に自分達の生活が破壊されることを知っていた。

先の見えない不安に飲みこまれ

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リーディング小説「お市さんforever」第二十二話 私の言うことを聞かなきゃ、お仕置きよ!

リーディング小説「お市さんforever」第二十二話 私の言うことを聞かなきゃ、お仕置きよ!

私の言うことを聞かなきゃ、お仕置きよ!

「おのれ~~!もう許さん!!」その知らせを聞いた勝家は、怒りのあまり頭からモクモク煙が出ていた。

「なんじゃあ!あのくそ猿!!
信長様の葬儀はあれで、終わったんじゃ~~!
わしらの方の信長様の戒名が、本物じゃわい!
それをコケにするような真似、しくさりおって!!
 何を今さら、葬儀をするんじゃい!!」

私は勝家がくしゃくしゃにした文を手に取って、広げた

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リーディング小説「お市さんforever」第二十一話 男の嫉妬は、女の嫉妬よりもねちっこい

リーディング小説「お市さんforever」第二十一話 男の嫉妬は、女の嫉妬よりもねちっこい

男の嫉妬は、女の嫉妬よりもねちっこい

私は兄上の「百日忌法会」を、京都の妙心寺に定めた。私は秀吉の決めた寺を知って「あらあら」と目を見開いた。
彼は織田家にゆかりの深い寺阿弥陀寺で、会を予定していた。
秀吉の作戦としては、その寺で兄上の「百日忌法会」をすることで、自分を正式の兄上の後を継ぐもの、として世間に認めさせたかったことでしょう。私は文をたたみながら、「うまくいくわけがないわね」と思うと笑

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リーディング小説「お市さんforever」第二十話 女が男をたたせるところは、どこ?!

リーディング小説「お市さんforever」第二十話 女が男をたたせるところは、どこ?!

女が男をたたせるところは、どこ?!

私のところに、秀吉が兄上の「百日忌法会」を開催する、という知らせが入った。私はそれが書かれた文を裏返し、机で頬杖をついた。
このことを勝家は何も知らない。というよりも「あんなおっさんは置いといて、やっちまおうぜ!」と勝家は蚊帳の外に置かれていた。密書を送ったのは私からだったから、このことをどう勝家に伝えようか悩んだ。いくら兄上の妹とは言え私が勝家より先にこの事

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リーディング小説「お市さんforever」第十九話 女は蜜を忍ばせ、男の懐に入っていく

リーディング小説「お市さんforever」第十九話 女は蜜を忍ばせ、男の懐に入っていく

女は蜜を忍ばせ、男の懐に入っていく

表向きは織田の跡目争い、という形を取っていたが、時局は完全に勝家と猿こと秀吉に、二分された。
武将たちはどちらの陣営に着くのが有利なのか、義理と人情を秤にかけ敵味方に分かれた。
みなより抜きんでて天下統一に王手をかけた兄上という重石を失った世は、新たな戦乱の火種を持ち、それはすべてを焼き尽くす大火事になる危険性をはらんでいた。

私も勝家に味方する武将が少しで

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リーディング小説「お市さんforever」第十八話 悪いけど、あなたには抱かれたくないわ

リーディング小説「お市さんforever」第十八話 悪いけど、あなたには抱かれたくないわ

悪いけど、あなたには抱かれたくないわ

福井の地で、新しい生活が始まった。
勝家は立場上、侍女や家臣の前で「そうだな、お市!」
と偉そうに下座にいる私を呼び捨てにした。私は殊勝な顔で、しずしずと頭を下げ「はい、勝家様」と猫をかぶっている。だけど閨で二人きりになると、勝家は布団の上で土下座し
「お市様!先ほどは申し訳ございませんでした~~~!!」
と平謝りに謝るのだった。白い夜着を身に着けた私は大よ

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リーディング小説「お市さんforever」第十七話 自分という女の価値を知る

リーディング小説「お市さんforever」第十七話 自分という女の価値を知る

自分という女の価値を知る

清州会議で、猿が兄上の孫の三法師を出してきたことで、織田の後継者は三法師に決まった。その子の後見人に勝家の押した信孝がなることで、どうにか話しはまとまった。
織田の領地も、それぞれ分割されることになった。
その時、勝家がみなに私との婚姻をぶちまけた。
それを盾に
「信長様の妹のお市様にふさわしい領地を!」
と北陸地方だけで終わりそうだった領地に近江も加えさせ、自分のもの

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リーディング小説「お市さんforever」第十六話 女はいくつもヒミツを抱え生きていく

リーディング小説「お市さんforever」第十六話 女はいくつもヒミツを抱え生きていく

女はいくつもヒミツを抱え生きていく

本能寺の変から25日、亡き兄上の最初の居城だった清州城で男達は集まった。面子は織田家の主な家臣達に、光秀を討った羽柴秀吉。
織田家の跡目を決める会議、というのは表向きの理由で、兄上の後継者の後ろで糸を引き、権力を握りたい男達の駆け引きの場だった。

猿は、それはそれは入念に計画を立てていた。
柴田勝家は、兄上の三男で私の甥の信孝を後継者に主張した。
長男信忠は

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リーディング小説「お市さんforever」第十五話 どれだけの女が、褥で演技をすることなく過ごせるの?

リーディング小説「お市さんforever」第十五話 どれだけの女が、褥で演技をすることなく過ごせるの?

どれだけの女が、褥で演技をすることなく過ごせるの?

兄上と義姉上が亡くなった日からわずか11日後、光秀は猿に討たれた。私がその知らせを聞いた時、花を活けていた手が止まり背筋がスッ、と伸びた。そして光秀を倒した猿のような男に感謝の気持よりも
「そう、よくやったわね。猿のくせに」
と言って、手にした花を首からぽきんと折った。その時喜びよりも混乱が一挙に押し寄せ、頭が目まぐるしく回転し始めた。私は気

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