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リーディング小説「お市さんforever」第二十話 女が男をたたせるところは、どこ?!

女が男をたたせるところは、どこ?!

私のところに、秀吉が兄上の「百日忌法会」を開催する、という知らせが入った。私はそれが書かれた文を裏返し、机で頬杖をついた。
このことを勝家は何も知らない。というよりも「あんなおっさんは置いといて、やっちまおうぜ!」と勝家は蚊帳の外に置かれていた。密書を送ったのは私からだったから、このことをどう勝家に伝えようか悩んだ。いくら兄上の妹とは言え私が勝家より先にこの事を知っていたらおかしいし、勝家に怪しまれる。仕方ないから「あら、9月で兄上が亡くなって100日になるわ」など、それとな~く勝家にはヒントを与えた。

だけど勝家は
「おお!信長様が亡くなって9月で100日ですか!早いですな~」
などとのんきに言って、全然気づかない。私は彼の鈍感さに腹が立ち、イライラした。「きっと、これはストレスだわ」と、顔に出来た吹き出物を鏡で見ながらため息をついた。
そしてしばらくしてわかった秀吉主宰の「百日忌法会」。
髭も髪も逆立てて、勝家が怒り狂ったのなんの!!

「おーのーれー、猿めっ!!
なんという勝手なことをわしに黙ってするんじゃい!!」
私は興奮して叫ぶ勝家の唾を避けながら「だから、何気にヒントをあげてたじゃない・・・・・・」と黙って聞いていたの。
すると、驚愕の言葉が勝家の口から飛び出した。
「ええ~い!わしも同じ日に信長様の「百日忌法会」をするんじゃ!
今すぐ、仕度に取り掛かるぞ!」
私は思わず「えっ?あなた、何考えてらっしゃるの?!
イベントって、そんなに簡単にできるものではなくてよ。
だいたい場所を抑えたり人を集めたり、誰がやるの?」と呆然とした。

そこに勝家がお得意の土下座でにじり寄り
「お市様~~~!!」
とすがりつくような目で、私を見上げた。
「どうか、どうか、お市様のお力でどこぞの寺を抑えて下され!
武将達に声をかけて下され!
亡き信長様の妹であるお市様がお声をかけたら、皆はイヤ!とは言わぬでしょう!わしのメンツも立ちまする!!」

私は勝家の言葉を聞き「どうしてあなたのメンツを立てるために、私が工作しなきゃいけないの?あなただけの力では無理って、こと?!」と愕然とした。「そこ、私が立たせるところ?!女が一番男を立たせるところは、そこなの?」と、頭の中でため息をついた。そして勝家は自信がないから、あそこも立たないんだ、とわかった。

黙りこくった私に勝家はまた近寄り、低い声で言った。

「猿が信長様の「百日忌法会」を開催すると、世間は猿が織田家の跡取りの後見人だと認めます。そこにお市様は、出席するわけにはいきますまい。
となると、妹であるお市様の面目は、つぶされますなぁ。
もしやお市様は猿が信長様の「百日忌法会」をする事を知っていたとか?
知りながらわしに黙っておくなどということは・・・・・・
いやいや、そんなことはありえませんなぁ~
やはりここは、妹であるお市様と夫であるわしが信長様の「百日忌法会」をせねばなりますまい。
お市様が信長様のご恩を盾に声をかけたら、猿側に行こうとする者たちの足止めもできます。
ですので、ぜひここはお市様にがんばっていただきたい」

有無も言わせないその言葉と、土下座しながらもジィーッと上目遣いで私を見る顔は、狸親父のようにふてぶてしかった。初めて見た勝家の狡猾さに、私はゾッとした。もしかしたら勝家は、私が猿に密書を送ったことを感づいているかもしれない・・・・・・そう思うと、背筋が震えた。

私はその怖れを振り払うよう背筋をピン!と伸ばし、立ち上がった。
そして、土下座している勝家を見下ろし言い放った。
「わかりました。なら手を尽くして、お寺も押さえましょう。
武将達にも声をかけましょう。でも、私ができるのはそこまでです。
よくって、勝家。あとは、あなたの役目よ。
あと一ヶ月で、兄上の面目をつぶさないような立派な会にするのよ!
あなたが仕切るのよっ!
無事に成功させないと、承知しなくってよ!!」私はムチを持った女王様のようにふるまった。
「ははっ~~~」勝家は、うれしそうにひれ伏した。
勝家はМ気質だから、私がこれくらい強くSっ気を出した方が、歓ぶことを知っていた。でもМ気質の勝家の闇を今日、見せられた。私は彼の闇に潜む狸に対抗し、狐のように立ち回るしかない。

とにかく私は来月の兄上の「百日忌法会」を無事に成功させることに意識を向けた。そして私達は秀吉とまったく同じ日に兄上の「百日忌法会」をする事になった。これで武将達がどちらにつくかハッキリする。その時、私の天秤もどちらが重いかわかるだろう。

男と女は、狐と狸の化かし合い。化かし合いに勝つために女は男の何を立てる?どこを立てる?私はそれを自分に問いかけながら「百日忌法会」を成功に導く秘策を考えた。

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