マガジンのカバー画像

語学エッセイ集

803
ことばについてのエッセイ集。外国語学習のこと、気になる言葉、好きな言葉をまとめました。また、「激論」したことをこのマガジンに含めています。
文章の書き方やテーマの見つけ方をまとめました。また、英語以外の外国語の話題も取り上げています。哲学…
¥750
運営しているクリエイター

記事一覧

純粋理性ギャグ

純粋理性ギャグ

 カント「純粋理性批判」の第一版序文(1781年)に次のような一節があります。

大修道院長のテラッソンは、こう言っている、---『もし或る書物の量を頁数の多寡によってではなく、この書物を理解するのに要する時間の長短によって測るとすれば、多くの書物について「この書物は、これほど短かくなかったなら、もっとずっと短かくなったろうに」と言ってよい』と、---これはまことに至言である。ところがまた他方では

もっとみる
Think different について

Think different について

「Think different.」

 スティーブ・ジョブズの言葉だと言われています。
 出典を調べてみましたが、最初に言われたのはいつなのかということや、前後の文脈がよくわかりません。

 この記事では、文献的な詮索をしたいのではなく、「Think different.」という短い言葉の文法について書きたいと思います。

「Think different.」というフレーズを単独で聞けば、
「(

もっとみる
伝わる文章の作法

伝わる文章の作法

 岩淵悦太郎(編著)「悪文」(角川文庫)を読みました。この本の副題は「伝わる文章の作法」。
 言われてみれば、ごく当たり前のことが多かったのですが、自分で文章を書くときに気をつけたいポイントが凝縮されています。

 この記事では「悪文」に掲載されている例をもとに「なぜ悪文なのか?」を考えてみます。
 どこがおかしいのか(あるいは曖昧なのか)、いっしょに考えてみてください。

もっとみる
ん | 日本語の発音、外国語を学ぶ意義。

ん | 日本語の発音、外国語を学ぶ意義。

 日本人なら日本語の発音なんて簡単だ!、と思いがちなのですが、意外と知らないことはあります。

 とりあえず下の写真をご覧ください。

「日本橋駅」の表記
Nihombashi Sta.

「毎日新聞」の表記
The Mainichi Shimbun

 ここで注目していただきたいのは「ん」の発音がどう表記されているのか、というところです。

 「日本橋」は「Niho『m』bashi」というように

もっとみる
襲撃 | スタインベック

襲撃 | スタインベック


(1) スタインベック「襲撃」について

 スタインベックの短編小説「襲撃」を読みました。この短編小説「襲撃」(The Raid)は、Peguin Classics の John Steinbeck, The Long Valleyの中に収められています。また、「襲撃」の日本語訳は、大久保康雄(訳)「スタインベック短編集」として新潮文庫に収められています。

 「襲撃」はPenguin版では 6

もっとみる
読書 | 胡蝶、カリフォルニアに舞う

読書 | 胡蝶、カリフォルニアに舞う

 多和田葉子「穴あきエフの初恋祭り」(文春文庫)。この本には、表題作「穴あきエフの初恋祭り」をはじめ、7つの短編小説が収められています。
 
 いちばん最初に収められている「胡蝶、カリフォルニアに舞う」しかまだ読んでいないのですが、とても面白かったです。
 
 「胡蝶、カリフォルニアに舞う」を私は、普通に現実的なお話だと思って読み進めていったのですが、だんだん「何かがおかしい」と思う気持ちが強くな

もっとみる
#振り返りnote | 歴史の好きな人同士が仲が悪いのはなぜか?

#振り返りnote | 歴史の好きな人同士が仲が悪いのはなぜか?

 noteはどんなテーマで書いてもよいものだ。一般的に、自分が好きなことと同じことが好きな人とは話が合う。
 数学が好きな人と数学が好きな人なら、互いの理解が早いから心地よい交流ができる。
 英語が好きな同士なら、英語の話をするのは楽しい。

 しかし、私の個人的な偏見かもしれないが、なぜか日本史が好きな人同士は仲が悪いようだ。

 誰とは言わないが、日本史が好きで色々な史跡や神社仏閣を探訪してい

もっとみる
エッセイ | 記録媒体の2025年問題

エッセイ | 記録媒体の2025年問題

 この記事には不確かな部分があります。そのことを念頭においてお読みいただければ幸いです。

 以前から指摘されていますが、記録媒体の「2025年問題」という問題があります。
 8ミリやビデオなどの劣化が進んだり、再生機器製造の中止が加速化して、過去の記録が失われていくという問題です。
 
 過去においては、レコードからCDへの移行が進んで、昔購入したレコードが聞けなくなったという経験をした方もいら

もっとみる
ニーチェの言葉

ニーチェの言葉

 写真は、私の蔵書の「レクラム文庫」の『ドイツ箴言集』です。

 ご存じの方も多いと思いますが、「岩波文庫」は「レクラム文庫」を模範として創刊されました。
 レクラム文庫は手のひらサイズ。岩波文庫よりひとまわり小さいです。

 ドイツ語を学習しているときに、写真の「ドイツ箴言集」のほかに、ウェーバーの「職業としての政治家」やゲーテの「詩と真実」「ファウスト」など、10冊程度購入したことがあります。

もっとみる
大統領の演説は良い英語教材だなと思う。

大統領の演説は良い英語教材だなと思う。

 先日深夜、トランプ新大統領の就任演説を生放送で聞いていた。一般的に大統領就任演説では、個別具体的な政策について言及されることは少なく、方向性や理念が語られることが多い。また、巧みなレトリックが散りばめられていて格調高い文章が並ぶ。

 トランプ新大統領の就任演説は、格調高いわけでもないし、個別具体的なことに言及している箇所が多かった。内容的には、選挙演説と大きく変わるものではなかった。けれども、

もっとみる