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本や映画のおはなし

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大好きな本や映画、作品にまつわる「人」のお話。
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#韓国小説

人生を変えた「ソウル国際図書展」へ。おすすめ韓国小説も

人生を変えた「ソウル国際図書展」へ。おすすめ韓国小説も

 先日、8年ぶりにソウル国際図書展(以下、ブックフェア)へ行ってきました。場所は江南に位置する総合展示場、COEX。後日新聞記事で、国内外36か国、530の出版社が参加し、5日間で約13万人が訪れていたと知りました。

 私が行ったのは最終日、かつ日曜日ということもあってか、10時にオープンする前から行列ができ、会場は人、人、人で溢れかえっていました。

 このブックフェアとは、読者と作家、出版社

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韓国語の長編小説を初めて最後まで読みきった。チェ•ウニョン(최은영)作家の『明るい夜(밝은 밤)』。女性4世代の歴史を行ったり来たりしながら進む物語。家族や縁深い人との間にある絆や刺、親しみと羨望、理解のできなさと許しなどが繊細に書かれており、著者の過去2作と通じるものを感じた。

徳寿宮美術館のパク•スグン特別展へ

徳寿宮美術館のパク•スグン特別展へ

 この秋、江原道の楊口という土地を訪れたことがきっかけで、私は初めて韓国の画家、パク・スグンに出会った。

 楊口から戻ってすぐ、ソウル市庁の隣にある徳寿宮美術館(国立現代美術館)で、3月初旬までパク・スグンの特別展が開かれていると知った。「これは絶対観に行かなくちゃ」と心に決めていたものの、日増しに増える感染者数や、変異株オミクロンの登場により、美術館訪問どころではない状況に…。

 そんな中、

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あの日の私がここにいた。短編小説集『ショウコの微笑』

あの日の私がここにいた。短編小説集『ショウコの微笑』

 冬のある朝、夢の中で「ショウコの微笑」という言葉が何度も登場したことがあった。目覚めた後、夢の詳細はすっかり忘れてしまったのに、その言葉だけがはっきりと、頭の中でぬくもりを放っていた。

 布団の中でスマートフォンを手に取り、早速調べてみると、それは韓国の作家が書いた小説のタイトルだった。チェ・ウニョン著『ショウコの微笑』。

 「ああ、なんだ。本の名前か」とすっきりしたところで身体を起こし、何

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『82年生まれ、キム・ジヨン』を語る② 私と夫に生まれた変化

『82年生まれ、キム・ジヨン』を語る② 私と夫に生まれた変化


小説の絶望感を経て、映画で描いた希望 物語の中で、キム・ジヨンは子どもを保育園に預け、再就職を目指すものの、「他人の人格が憑依して思いを語りだす」という言動が増え始め、夫の勧めで精神科を訪れる。小説は男性精神科医のカウンセリングカルテを読むような形で、淡々と物語が進んでいき、丁寧な心理描写や感情的な表現というものがほぼない。

 それはこの夏、4世代にわたる在日コリアン一家の人生を描いたミン・ジ

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