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【短編】『爆破予告』
爆破予告
爆破予告があった。期末試験を明日に控えた中でその知らせは端末を通じて学生全員に一斉に届いた。私はてっきり試験を受けたくない者によるタチの悪い脅迫かと思っていたが、そうではなかった。当日大学は閉鎖され、爆弾処理班も動員されたにも関わらず、爆破は起こった。初めにその事実を知ったのは、学生寮に住む学生たちだった。図書館から煙が立ち昇るのを寮の屋上から確認したのだ。すぐさま消防車のサイレンの
【短編】『美しき欲情』
美しき欲情
※この作品内には、一部性的な表現や暴力的な描写が含まれます。
スーパーのレジ打ちの音で、私は興奮する。その感情の高まりは、特に決まった目的を持っているわけでもなく、シンプルに興奮するのだ。ストレスが解消されるわけでもなく、何かの欲求が増すわけでもない。それは名前のない些細な感情だ。
ピッという音が響く一瞬の間にあらゆる出来事が起こっている。商品のバーコードが読み取られ、その情
【短編】『不便な時代』
不便な時代
巷で人気を博しているスマートフォンがあるという。人気とは言っても姿形は至って普通のスマートフォンと同じだ。側面はペンのように細く、表面はタロットカードのように縦に長い。特別な機能があるのかと思いきや平凡だ。むしろスマートフォンにしてはスマートな方ではない。僕が実際に購入し、使ってみてそう感じたのだ。インターフェースの反応も遅く、つい長く使っていると熱くて触れなくなってしまう。そんな
【短編】『僕が入る墓』(最終章 二)
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僕が入る墓(最終章 二)
一本道を駆け抜ける白いミニバンの強風によって、穂をつけつつある稲の海が激しく波打つ。あたりはすでに暗く、車の向けるハイビームの先に人の気配は一切ない。そこら中が畑に覆われ、まるで畑を中央突破していくようにミラーに映る。平地に伸びる一本道は永遠と続き、ようやく山道を登り始める頃には全員の緊張は絶頂を超えて徐々に薄れつつあった。義父がハンドルを握り、助手席
【短編】『僕が入る墓』(遡及編 十三)
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僕が入る墓(遡及編 十三)
清乃は寝巻きのまま家へと急ぐと、すでに丘の上から天に登る龍のように煙がもくもくと立ちのぼっていた。坂を上がり切ると、家の前には村人たちが大勢集まっていた。そこにはまるで何者かが故意にやったかのように綺麗な円を描いて炎が家を取り囲み闇夜を眩しく照らしていた。
「おとー!おかー!」
清乃はほとばしる炎を前に膝から崩れ落ち、泣きじゃくりながら叫んだ。
【短編】『僕が入る墓』(遡及編 十二)
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僕が入る墓(遡及編 十二)
又三郎は家へ戻ると、畠仕事を忘れてそのまま眠ってしまった。目の前にはまた屋敷の光景があった。今度は人混みが多く屋敷の中は活気に満ちていた。自分はその屋敷に住む地主のようだった。おおよそこの村に来る前の記憶が、その過去を忘れさせまいと必死に語りかけているようだった。
しかし廊下の外から聴こえた叫び声に気を取られ目を離した途端、目の前にいた人間たちは
【短編】『僕が入る墓』(遡及編 十一)
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僕が入る墓(遡及編 十一)
屋敷での食事は、今までに食べたことのないものばかりが卓に並んだ。奈良漬けの瓜に、マグロとヒラメの刺身。小皿には醤油。そして牛鍋が卓を一層賑やかにさせた。清乃はそれらをどう食べて良いのかわからないまま周りを取り囲む女たちの箸の動きを真似た。
一人遅れをとって食事を済ませると、皆が一斉に居間からいなくなった。清乃も寝室に戻り、夫の久保田正孝との枕の間