見出し画像

【展覧会レポ】茅ヶ崎市美術館「アルフォンス・ミュシャ展 アール・ヌーヴォーの美しきミューズ」

【約4,900文字、写真約55枚】
茅ヶ崎市美術館に初めて行き「アルフォンス・ミュシャ展 アール・ヌーヴォーの美しきミューズ」を鑑賞しました。その感想を書きます。

【この投稿で伝えたいこと】
❶ミュシャの作品など208点を通して、特徴や背景を知ることができた、❷日本でミュシャが人気がある理由に納得、❸単純に綺麗な絵なので、普段美術館に行かない人にもおすすめ、❹ミュシャの人となりや考えが分かる構成だとさらに良かった。

おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★★☆☆
混み具合:★★☆☆☆
展覧会名:アルフォンス・ミュシャ展 アール・ヌーヴォーの美しきミューズ
場所:茅ヶ崎市美術館
会期:2024年6月18日(火)-8月25日(日)
休館日:月曜日
開館時間: 10:00-17:00
住所:神奈川県茅ヶ崎市東海岸北1丁目4−45
アクセス:茅ヶ崎駅から徒歩約10分
入場料(一般):1,200円
事前予約:ー
展覧所要時間:約1時間
撮影:全て可能
URL:https://www.chigasaki-museum.jp/exhibition/7901/ 


▶︎訪問のきっかけ

美術館の入り口

行きづらい場所のため、普段から訪問の機会がなかった茅ヶ崎市美術館。フランシス真悟の展覧会(2024/3/30-6/9)は、是非行きたいと思っていましたが、タイミングが合わず断念。

ミュシャには興味がなかったものの、湘南ひらつか七夕まつりサザンビーチかこつけて行くことにしました。

▼初めて「フランシス慎吾」を知った展覧会

サム・フランシス(フランシス慎吾の父親)の作品@東京都現代美術館(2023年8月撮影)

▼参考になったフランシス慎吾の展覧会note

▶︎アクセス

茅ヶ崎駅

茅ヶ崎市美術館は茅ヶ崎駅から徒歩約10分。海へ向かう「雄三通り」ではなく「高砂たかすな通り」から行った方が、早い上に迷いません。

茅ヶ崎周辺は割といかがわしい

茅ヶ崎市美術館は、茅ヶ崎市の古くからの景観を残す緑地公園(高砂緑地)の中にあります。

さりげな過ぎる案内看板
「平塚らいてう記念碑」
平塚らいてうは、茅ヶ崎で画家・奥村博と知り合い、夫婦別姓で事実婚、居住していた

住所:神奈川県茅ヶ崎市東海岸北1丁目4−45

▶︎茅ヶ崎市美術館とは

緑が鬱蒼とし過ぎて全体がよく見えない…

茅ヶ崎市美術館は、郷土に関連する優れた美術品を収集・保存・展示を行うことなどを目的として、1998年にオープン。

入り口

茅ヶ崎にゆかりのある作家や作品を中心に、約2,000点の美術品を収蔵しています。コレクションの核は、萬鐵五郎、土屋光逸つちや こういつ、青山義雄など。

光がよく入る建築も特徴
自然光がたくさん入るメインロビー

緑地が豊かすぎて建物の全体が見えないのが残念ですが、大きな屋根が特徴的な建築です。屋根は、潮風や飛び立つ鳥の軽やかな翼、海の波をモチーフにしているらしいです。設計は、株式会社洋建築企画によるもの。

地下に向かう階段にも自然光が降り注ぐ

コンパクトながら、自然光を適度に取り入れ、周囲の自然と調和しており、素敵な建築だと思いました。なお、屋上に出て茅ヶ崎の海を見渡せるなどできれば、美術館自体がさらに魅力的になり、客数も増えると思いました。

▶︎「アルフォンス・ミュシャ展 アール・ヌーヴォーの美しきミューズ」感想

ポスター

アルフォンス・ミュシャ(1860-1939)は、19世紀末から20世紀初頭、ヨーロッパで花開いた芸術様式「アール・ヌーヴォー」を代表する画家です。(略)チェコ出身のミュシャが時代の寵児となったのは19世紀末のパリでした。彼が描いた舞台女優サラ・ベルナールの演劇「ジスモンダ」の宣伝ポスターが大評判となり、画家のみならず、デザイナーとしても輝かしい足跡を残したのです。(略)本展ではポスター、装飾パネルをはじめ、デザイン集、ポストカード、切手、紙幣、商品パッケージなど多様な作品を展示することで、ミュシャの生涯に迫ります。

公式サイトより

私はミュシャの作品を大阪中之島美術館などで見たことがあります。その際は「きれいだなぁ」以外の感想は出てきませんでした。私にとってミュシャは「嫌いではないが、わざわざ見に行くほどではない」という印象でした。

「Hello! Super Collection 超コレクション展 ―99のものがたり」@大阪中之島美術館(2022年2月撮影)

今回の展覧会の作品数は208点。来場者は想像以上に多かったです。家族連れやカップルも多かったことから、アートに深く関心がなくとも、ミュシャは取っ付きやすさがあるのでしょう。料金が1,200円というのも、比較的安価で少し驚きました。

展覧会はすべて撮影可能
会場は「展示室1」(1階)、「展示室2、3」(地下1階)の3つ
いざ、展覧会へ

✔️展示室1

展示室1の入り口

展示室1では主に、ミュシャの有名になった後の代表作品が展示されていました。

アルフォンス・マリア・ミュシャ

ミュシャは、1860年オーストリアーハンガリー帝国領モラヴィア(現在のチェコ)生まれ。ウィーンでの舞台美術の仕事やミュンヘンの美術学校を経て、27歳でパリに渡り絵画を学ぶものの、2年で留学の援助がストップ。その後は、雑誌や本の挿絵を描いて暮らしていました。

《ジスモンダ》

1894年、ひょんなことから印刷所に勤めた34歳のミュシャは、大女優サラ・ベルナール主演の舞台「ジスモンダ」のポスターを担当しました。それがパリで大評判となったことがきっかけに、人気デザイナーとなりました。

《ハムレット》

1890年代のポスターは、今のポスターに比べてものすごく大きくてびっくり。また、ヨーロッパにしては珍しい、漫画・浮世絵のような縁取りのあるタッチが意外でした。どのようにして、この「ミュシャ・スタイル」に辿り着いたのか気になりました。

展示室の様子

当時「ポスターブームの到来でコレクターが急増し、 人気のものは街に貼られてもすぐにはがされ てしまうほど」だったそうです。確かに、家にミュシャのポスターが飾ってあったら、おしゃれ感が増しそうです。

なお、私は「アート」から、作者の考えや、普段の生活からは得られない気付きを得たいと思っています。ミュシャの絵はすごくおしゃれだなと思いました。一方で、その絵や展覧会の構成から著者のメッセージ性などは得られづらかったです。

《サラ・ベルナール》
ゲームにありそうなイラスト調

ミュシャの絵は、ファイナルファンタジー、最近のスマホゲーム、ディズニーなどの絵とそっくりだと思う瞬間が多くありました。

《ルフェヴル・ユティル》
これもスマホゲームにありそうなタッチ

おそらくミュシャのすごい点は、この「ミュシャ・スタイル」を確立した点だと思いました。絵を描く人、DTPをする人などが見れば、私とは感動の度合いが違ってくるのかもしれません。

当然ながら英語のポスターでは、日本のように縦書き、ひらがな、カタカナ、漢字、ルビなどは存在せず、英語 x 横書きのスタイルのみです。ミュシャのポスターを見ていると、翻って日本のポスターの特異性を感じました。

当時のミュシャの人気は高く、劇のポスターだけでなく、商業用のポスターも多く手がけるようになりました。

左はビール、右はチョコレートの商業ポスター
ネスレ・フードのポスター
ミュシャの手にかかるとミルク製品も神々しい
香水のポスター。「手を汚さずに自動的に香水を使用」できるのがウリらしい
実際の香水にも小さなミュシャのイラスト

ポスター黄金期の19世紀末のパリで、デザイナーたちに課せられた命題は、いかに人々に幸福感を与え、経済活動につなげるかということだったそうです。ミュシャの作品はそのお手本だったのでしょう。

ミュシャは「私は芸術のための芸術を創るよりも、大衆のための絵の制作者でありたい」という信念から作品を作り続けました。Art For Allの精神は素晴らしいです。一点物の高価な作品ではなく、ポスターであれば、家庭にも安価に飾ることができ、生活にも彩りを与えることができますね。

《ビザンティン風の頭部 ブロンド、ブルネット》

ミュシャは、二双、四双の作品も多いです。まるで日本の屏風のようだと思いました。描いている題材も春〜冬、朝〜晩といったように日本美術にも通じています。

19世紀後半からフランスで大流行したジャポニズム。その影響がミュシャにもあったのでしょう。日本にルーツをもつアール・ヌーヴォー様式をベースにするミュシャの作品が、日本でも人気があるのは当然だと思いました。私がガレの作品を見て「いいなぁ」と感覚的に思ったのと同じですネ。

《四季 春・夏・秋・冬》
夏の作品
アクセサリーなどの描写も細かい
展示室の様子

全体的な展示構成について、ミュシャの作品よりも、ミュシャ本人の人となりに焦点を当ててほしいと思いました。有名になる前の作品・習作や、ミュシャの作風に影響を与えた作品など、どのようにして「ミュシャ・スタイル」が確立されたのか、その変遷を知りたかったです。

✔️展示室2

展示室2、3は地下

展示室2では、ミュシャの図案集、挿絵、ポストカード、1939年に亡くなるまでの作品が展示されています。

装飾資料集の一部。クワガタ、亀、魚などアール・ヌーヴォー色が濃い
展示室の様子
《書籍「舞台衣装」イザナミとサクマの舞台衣装》
《ショコラ マッソンのカレンダー》
ディズニーに出てくるプリンセスのよう
《有価証券 パリ フランス》

ミュシャのイラストは、有価証券にも採用されたほど人気でした。ポストカードの黄金期(そんな黄金期があるとは…)と呼ばれた19−20世紀、ミュシャのポストカードも大量に作られました。いつの時代の人もカード集めが大好きです。当時のミュシャのポストカードにも「スーパーレア」などがあったのでしょうか…?

ポストカードの数々
今、販売しても十分人気が出そう
《ウェヴァリー 自転車》
かろうじてハンドルが見えるけど、自転車のポスターだとは伝わらない😅

✔️展示室3

入り口

展示室3では主に、当時のミュシャグッズが展示されています。展示を見る限り、とにかく当時の大デザイナーだったんだ、と伝わってきました。お札や切手にもミュシャの絵が採用されています。

《500コルナ 紙幣》
コルナ:チェコの通貨単位

日本で7/3から流通している20年ぶりに刷新された千円札では、葛飾北斎の代表作である「富嶽三十六景・神奈川沖浪裏」が採用されています。ミュシャもチェコでは北斎的ポジションだったんだと思いました。

チェコ最初の切手のデザインをミュシャは無償で手がけた

いつの時代も素敵なアートやイラストは、グッズになることで経済を回していますね

《ビスケット缶容器》
《紅茶の缶》
今売っていても人気が出そう

展示室3の内容よろしく、美術館のグッズ売り場は大変な賑わいでした。もともと商業用のポスターもたくさん描いてきたミュシャ、グッズとの相性は抜群なのでしょう。

賑わうミュージアムショップ
団扇にもミュシャ(特価で100円)

▶︎まとめ

買ったポストカード《ジスモンダ》

いかがだったでしょうか?ミュシャの作品など208点を鑑賞することで、ミュシャの特徴や背景を知ることができました。ミュシャが日本でも好まれる理由が、日本を由来とするアール・ヌーヴォーにあることにも納得しました。ミュシャの絵は単純にきれいだし、日本人にも馴染みがある作風のため、美術館に普段行かない人にもおすすめの展覧会です。

ただし、ミュシャが有名になる前から、ミュシャ・スタイルを確立した変遷や、ミュシャの人となりが理解できる構成だと、より学びのある展覧会になると思いました。

▶︎今日の美術館飯

★3.4/黒糖茶房 (神奈川県/茅ヶ崎駅) - 若鶏の黒糖甘辛焼き (¥1,300)
★3.4/サザンビーチカフェ (神奈川県/茅ヶ崎駅) - キャラメルバナナブリュレ、アイスカフェオレ (¥1,560)

▶︎おまけ(茅ヶ崎ビーチ)

茅ヶ崎市美術館に行った後、茅ヶ崎ビーチにも行きました。子供にとっては花より団子、美術館よりもビーチでした。

Thank you for your support!