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SF、読書のよろこびマガジン

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大人になってからSFの楽しみを知った人の記録。本が好き、ゲーム興味ないかたはここで。
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龍が如く外伝とワンピースの前に、原点の「宝島」の宝は何だったのか読んでみた

龍が如く外伝とワンピースの前に、原点の「宝島」の宝は何だったのか読んでみた

ワンピースが終盤だったり、龍が如く外伝のテーマが海賊だったりするじゃないですか。
この手の話は「伝説の宝とはいったい何なんだ!?」ってナゾが重要だけど、そもそも最初の「海賊の宝の地図もの」の宝箱には何が入っていたのか。

原点を知りたくてスティーブンスン「宝島」を読んだ。同作者の「ジキルとハイド」は読めなかったけど、訳も新しくて少年の心で読めた。

原点じゃなかった。
この本以前にも海賊伝説は山ほ

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【読書】「木挽町のあだ討ち」怒涛の伏線殺法!

【読書】「木挽町のあだ討ち」怒涛の伏線殺法!

女物の衣装をまとった武士、菊之助が父のかたきと称して大柄な博徒、作兵衛を斬った。

かたき討ちの現場にいた5人の目撃者が、それぞれの出自と菊之助について語る。

爽快な時代小説かと思ったらこんな挑戦的な作品か!

全編がインタビューみたいな読者への語り掛け形式で、話が前に進まず、回想で過去が明らかになっていくから、軽快ではない。

ゆったりゆったりスロースタートで、3人目でアクセルがかかってきて、

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【読書】内田裕也✕モブ・ノリオ JOHNNY TOO BAD

【読書】内田裕也✕モブ・ノリオ JOHNNY TOO BAD

硬派でいく。ウジャジャけた人間は登場しない。

変なかたちの本を読んだ。
内田裕也の対談集「ロックントーク」と、モブ・ノリオの小説「ゲットー・ミュージック」
二冊をくっつけてグラフィティや顔写真で飾って、上からでかいカバーでくっつけた「JOHNNY TOO BAD」。

内田裕也がそもそもよく分からない。政見放送がネタにされていたのと晩年の樹木希林さんとの謎の夫婦関係でしか知らない。

その人を語

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「タイタンの妖女」感想と太田光の解説とファミコンMOTHERと

「タイタンの妖女」感想と太田光の解説とファミコンMOTHERと

爆笑問題の太田光が愛し、奥さんが社長をしている社名の由来になったSF小説を読みました。

太田光は不思議な人だ、ファンでもあの人のすべては受け入れられない。
しょうもないギャグもセクハラも問題発言も、台本通りじゃなくて人間として考えていたことが間欠泉みたいに制御できず口から出てしまう感じだ。で、「ちゃんと」問題発言をする。毎回たたかれて、しっかりダメージ受けてるようなのに、また人を怒らせる。

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【読書】奥田英朗「リバー」の終わり方で「えっ」と思う?「らしい!」と思う?

【読書】奥田英朗「リバー」の終わり方で「えっ」と思う?「らしい!」と思う?

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奥田英朗は話を考えずに小説を書き出す。

浅田次郎みたいに完全に設計図を整えて書き出す人もいれば、少年漫画みたいにとりあえずキャラを動かして、自分で書いてるのに「こいつが犯人になっていくとは」と、川が流れ着くように結末へたどりつく作家もいる。

ぼくは奥田作品を八割は読んでますが、たしかに急に終わるような印象のものがあった。
エッセイによると、けっ

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【読書】少女愛、義理親娘、寝取られ、妊娠、復讐。ナボコフの「ロリータ」

【読書】少女愛、義理親娘、寝取られ、妊娠、復讐。ナボコフの「ロリータ」

シャーロックホームズと同じくらい、読んでない人でも知っている小説の登場人物。ロリータ・コンプレックスのもとになったウラジーミル・ナボコフの「ロリータ」を読む。
精霊ニンフのような魅力を放つ「ニンフェット」の少女と、愛する者、愛された側の関係の物語。完全にネタバレします。

冒頭で「ロリータ」の名前の呼び方、授業でやったような発声法から始まる。
舌が口蓋を2歩下がって3歩目に歯を軽く叩いてロリータの

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【読書記録】「塞王の楯」は戦国時代でありながら今の話でした。

【読書記録】「塞王の楯」は戦国時代でありながら今の話でした。

あらすじは一行ですむ。
石垣を作る職人と、火縄銃作りの職人がぶつかる話。わかりやすい!
重厚な装丁だけど、青年漫画の原作のようなまっすぐさ。

かたや、戦の途中でも石垣を組み上げ、城を修理し、狙ったタイミングでくずして戦局を支配する達人たち。

もういっぽうは、当時造りにくくて不発も多く、戦場では使いにくい銃の可能性に魅せられ、
「武器がいきわたれば争いはなくなる」
と、銃社会の考え方で泰平の世を

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これは、本棚に納めたら芸人のほうも納まった三四郎

これは、本棚に納めたら芸人のほうも納まった三四郎

三四郎を読んだら三四郎が結婚した。

このエピソードトークがウソっぽい上に面白くないのはさすがの僕でもわかる。

けど、本や音楽が思い出のトリガーになってて、
「たいしたことじゃないけど、この曲はあの年の通勤中に聞いてたなあ」
とか、覚えるつもりないのに毎回思い出すってこと、あるでしょう。

ちょうど角川文庫の紙の表紙の文庫シリーズが好きで、江戸川乱歩を一通り終えて、夏目漱石の草枕が想像以上に好き

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籠城はステイホーム、合戦はライブ「黒牢城」

籠城はステイホーム、合戦はライブ「黒牢城」

米澤穂信「黒牢城」のレビューを読むと全部イライラする。
「いわゆる安楽椅子ものミステリーとか、密室殺人を実在の武将たちによる時代小説でやった」とか、どうでもいいと思ったことばかり紹介されているからだ。

直木賞受賞作品「黒牢城」は、籠城戦のさいちゅうに城内で起きた殺人事件から始まるミステリー小説。
何か月も前から備蓄して、援軍を待ち、好機が来るまで我慢して我慢して、一気に攻めに転じるカウンター戦法

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【読書】日本で虐げられた一族が、英語を武器に新しい生き方を選ぶ【PACHINKO】

【読書】日本で虐げられた一族が、英語を武器に新しい生き方を選ぶ【PACHINKO】

差別、貧困、戦争。全部飲み込んで命をつなぐ!
ミンジンリー「PACHINKO(パチンコ)」は、朝鮮半島から大阪に移り住み、ザイニチと呼ばれた4代にわたる一族の物語だ。

作者が書き始めたきっかけは、日本でいじめを受けて自殺した在日朝鮮人の少年の事件だが、何年も取材を重ねて書き直していく中で、スケールは大きくなり、差別反対のメッセージだけじゃなく、人間賛歌になった。

小さな村に住む貧しい一族が、住

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【ネタバレ】変態が死にます「陰獣/蟲」江戸川乱歩

【ネタバレ】変態が死にます「陰獣/蟲」江戸川乱歩

東野圭吾が100通りの殺人方を考えても、人を殺したくてしょうがない人とは思えないが、江戸川乱歩は女の部屋を覗く場面が3回出てきただけで、書くことでなんとか現実世界で実行せずにすんだ人として認識してしまう。

角川ホラー文庫の「陰獣」を読みました。カップリングに「蟲」が収録されて、特別な装丁と解説が入っている。シングルカットされたCDみたい。

陰獣は代表作のひとつと聞いて期待して読んだから、なんち

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文庫本がキャラクター化したら、新潮文庫さんは長いアホ毛が一本でてそう

文庫本がキャラクター化したら、新潮文庫さんは長いアホ毛が一本でてそう

文庫本がキャラクター化したら、新潮文庫さんからは長いアホ毛が一本でてそう。

新潮文庫にはしおりになるスピン(ひも)がある。

光文社古典新訳文庫くんはずっとこんな感じの表情で心配になる。

【読書記録】ワクチンによる腕の腫れは、花である。吉村昭「雪の花」

【読書記録】ワクチンによる腕の腫れは、花である。吉村昭「雪の花」

ワクチンによる治療を福井県に普及させた医師の伝記です。
冒頭から、天然痘の死者を乗せた大八車が町を走り回る。その感染力はすさまじく、一人かかれば家族とその周囲は全身にボコボコと赤黒いあざをつくって死んでいく。

全身に醜いできものができるのが特徴だ。
命が助かっても、醜く変貌した顔で生きるのに耐えられず自殺した女もいる。
これが毎年のように流行する。

治療法は、牛糞を粉末にして飲むといった迷信や

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【読書記録】「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」自撮り登山で指9本を失った男と、爆笑問題太田の共通点

【読書記録】「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」自撮り登山で指9本を失った男と、爆笑問題太田の共通点

「自撮り登山家」栗城史多さんは、学校祭の演劇になるとはりきって、脚本も主演もなにもかもやりたがる生徒だった。

1年のときは原始人の話。
2年ではラーメン屋の話。
3年のときは「踊る大捜査線」のパロディをやった。

3年間通して受け持った担任の先生は、これに気づいて大変驚いた。
話が全部続きものになっていたのだ。
3年目に出てきた悪者が1,2年のときの出来事を仕組んでいた。

爆笑問題の太田光が、

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