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高校生のための人権入門(全27回)

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人権についてわたしが考えたことを、高校生だった自分にもわかるように書いてみました。興味のあるテーマについて書いてある回から読んでいただいても、大丈夫です。
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#人間関係

高校生のための人権入門(15) 人権問題を解きほぐすカギ

高校生のための人権入門(15) 人権問題を解きほぐすカギ

はじめに日本におけるさまざまな人権問題を解きほぐすカギが、少なくともふたつあると思います。ひとつは、「人に迷惑をかけるな」という考えを弱めること、もうひとつは、「評価主義、能力主義、努力第一主義」を弱めることです。(本当は、「弱める」ではなく、「なくす」と言いたいのですが、現実にはそれは無理なので、「弱める」という言い方にしておきます。)

「人に迷惑をかけるな」という考え方を弱めよう
前回の「障

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高校生のための人権入門(16) 高齢者の人権について

高校生のための人権入門(16) 高齢者の人権について

はじめに今回は、高齢者の人権ということで、認知症の高齢者に対する虐待のことを中心にお話します。これが、現在、高齢者の人権に関係した最も身近な問題だと思うからです。

認知症がもたらすものまず、認知症とはどういうものかを簡単にお話します。認知症とは、脳の細胞の変化などによって、記憶の障害や認知機能の低下が見られる症状を言います。中心的な症状としては、記憶の障害、特に短期記憶の喪失(ついさっきのことを

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高校生のための人権入門(18) なぜ、人権は尊重されなければならないか

高校生のための人権入門(18) なぜ、人権は尊重されなければならないか

はじめに前回、人権の中身とは「安心、自信、自由」だというお話をしました。「安心」とは、「わたしはここにいていい」という思いであり、「自信」とは、「今のわたしはこれでいい」という思いであり、「自由」とは、「わたしのことはわたしが決めている。つまり、わたしがわたしの人生の主人公だ。」という思いだとお話ししました。これを踏まえて、前回の最初に取り上げた疑問、「相手がどんな『ひどい人』で、自分や周りの人に

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高校生のための人権入門(19) 「多様性の尊重」の落とし穴

高校生のための人権入門(19) 「多様性の尊重」の落とし穴

はじめに最近、日本で人権について語られる時、とてもよく使われるようになった言葉に、「多様性の尊重」という言葉があります。確かにこの言葉は、「人権侵害とは、自分とは『違う』あり方、考え方、生き方をしている人への非難、攻撃である」というポイント(第18回参照)をよく押さえています。しかし、「人権を尊重する」ということと「多様性を尊重する」ことを、同じことだと考えてしまうと、そこには大きな「落とし穴」が

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高校生のための人権入門(20) パワーハラスメントを生む「集団」とは

高校生のための人権入門(20) パワーハラスメントを生む「集団」とは

はじめに前回、「現実の『人と人との関係』は、基本的に力と力の関係であり、どちらかがどちらかを支配している(相手を従わせている、自分に合わせさせている)関係なのです。」と書きました。このことについて、次回、くわしくお話したいと思っていますが、今回は、それを考える前に、まず、パワーハラスメントを生む集団は、どんな性質を持っている集団かを考えてみたいと思います。

人と人がつくる二種類の集団人と人がつく

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高校生のための人権入門(21) 力の関係としての人間関係

高校生のための人権入門(21) 力の関係としての人間関係

はじめに前々回、「現実の『人と人との関係』は、基本的に力と力の関係であり、どちらかがどちらかを支配している(相手を従わせている、自分に合わせさせている)関係なのです」と書きました。このようなとらえ方には、違和感や反感を覚える方も多いのではないかと思います。そのため、前回、人間がつくる集団には二種類あるのではないかということを書きました。人間のつくる集団の二面性と考えていただいてもかまいません。今回

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高校生のための人権入門(22) 「正しさ」のぶつかり合いから抜け出すこと(その1)

高校生のための人権入門(22) 「正しさ」のぶつかり合いから抜け出すこと(その1)

はじめにさまざまな人権問題があることをこれまで見てきました。もちろん、今まで取り上げてきた人権問題以外にも、たくさんの人権問題が今の日本にはあります。(それらについては、別の機会でふれることができたらと思います。)今回から3回ほどにわたって、どうしたら今まで取り上げたような人権問題が、少しでも解決に向かうことができるのかを考えてみたいと思います。

何が起きているのか、なぜ起きているのか差別や人権

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高校生のための人権入門(23) 「正しさ」のぶつかり合いから抜け出すこと(その2)

高校生のための人権入門(23) 「正しさ」のぶつかり合いから抜け出すこと(その2)

はじめに前回、パワーハラスメントがどのようなことが「きっかけ」となって、どのように進んでいくかということを見ました。今回は、パワーハラスメントが起きている時に、加害者と被害者の「心の溝(気持ちや思いのズレや断絶)」が、どのような働きをしているかを見てみたいと思います。

なぜ、「心の溝」は深まるか第3回「パワーハラスメント」でも述べたように、パワーハラスメントは、(A)「強い立場」と「弱い立場」が

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高校生のための人権入門(24) 「正しさ」のぶつかり合いから抜け出すこと(その3)

高校生のための人権入門(24) 「正しさ」のぶつかり合いから抜け出すこと(その3)

はじめに前回は、パワーハラスメントが起きている時に、加害者と被害者の「心の溝(気持ちや思いのズレや断絶)」が、どのようにして深まっていくか、それが生む「誤解」がどのような働きをしているのかを見ました。今回は、今までの2回の話を踏まえて、「心の溝」を生まないためにはどうしたらよいか、「心の溝」と「誤解」の悪循環を進行させないためには、どうしたらよいのかを考えてみたいと思います。

「心の溝」を生んで

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高校生のための人権入門(25) 人権と生きることの意味

高校生のための人権入門(25) 人権と生きることの意味

はじめに第17回「人権の中身『安心、自信、自由』」の中で、自分の中の「安心、自信、自由」を失わないことが、生き生きと生きていくためにはどうしても必要であり、「安心、自信、自由」がなければ、人は生きていてうれしくないのだということをお話ししました。逆に言えば、「安心、自信、自由」が持てていれば、人は生き生きと生きられる、生きていてうれしいのだということです。生きていてうれしいとは、「生きている意味」

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高校生のための人権入門(26) 人権と法律(補足1)

高校生のための人権入門(26) 人権と法律(補足1)

はじめに前回で、「高校生のための人権入門」の本編は終わりましたが、25回ほど人権について書いてくる中で、心に引っかかったことが二つほどあります。それについて2回ほど「補足」という形で書いて全体を終わりにしたいと思います。ひとつめは、「人権と法律」です。

パワーハラスメントは法律で防げるか実際の生活の中で、今、起きていることが人権侵害かどうかが問題になってくると、当然のことながら、法律との関係が議

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高校生のための人権入門(27) なぜ「正しさ」から抜け出す必要があるのか(補足2)

高校生のための人権入門(27) なぜ「正しさ」から抜け出す必要があるのか(補足2)

はじめに前々回で、「高校生のための人権入門」の本編は終わりましたが、25回ほど人権について書いてくる中で、心に引っかかっていることが二つほどあります。それについて2回ほど「補足』という形で書いて全体を終わりにしたいと思います。今回は、補足の2回目で、「なぜ『正しさ』から抜け出す必要があるのか」です。

「正しさ(正義)」が人権問題の理解を困難にしている第25回「人権と生きることの意味」の中でも引用

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