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高校生のための人権入門(全27回)

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人権についてわたしが考えたことを、高校生だった自分にもわかるように書いてみました。興味のあるテーマについて書いてある回から読んでいただいても、大丈夫です。
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記事一覧

高校生のための人権入門(1) はじめに

高校生のための人権入門(1) はじめに

人が生きる意味って〜人権を考える第一歩〜人権について、わたしなりに考えたことを高校生の頃の自分にもわかるように書いてみたいと思います。

わたしが中学生の時、クラスで一番成績の良かった女の子が、なにかの時に、「人間って何のために生きているんだろう。わたしまだ、それがわからないんだよね。」というようなことをわたしたちに言ったことがありました。わたし自身、そういうことを考えたことがなかったわけではあり

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高校生のための人権入門(2) 人権とはなにか

高校生のための人権入門(2) 人権とはなにか

人権とはなにか
人権とはなにか。辞書を調べてみると、人権の意味として「人が生まれた時から持っている権利」というような説明が書いてあります。確かに説明としてはそれで間違ってはいないのですが、この説明を小学生に聞かせれば、たぶん、「なぜ、生まれた時から持っているの?」とか、「なぜ、持っているの(誰が持たせたの)?」という質問が返ってきそうです。そして、そのような質問に、きちんと答えることはきわめてむず

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高校生のための人権入門(3) パワーハラスメント

高校生のための人権入門(3) パワーハラスメント

パワーハラスメントについてパワーハラスメントという言葉を聞いたことがある人も多いと思います。2019年に「労働施策総合推進法」等が改定され、企業等はパワーハラスメントの防止に努めなければならないことになりました。実際の施行は2020年6月から大企業等で始まり、今年2022年の4月からは中小企業でも始まります。

パワーハラスメントという言葉の意味は、「力を使った嫌がらせ」ということです。ふつうパワ

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高校生のための人権入門(4) 人権侵害の基本的構図

高校生のための人権入門(4) 人権侵害の基本的構図

前回、述べたようなパワーハラスメントが起きる構造は、ほとんどの人権侵害に当てはめることができます。つまり、「強い立場の人」と「弱い立場の人」がいて、その間に「気持ちや思いのズレや断絶」があります。この状態において、「強い立場の人」が、自分(たち)の「正しさ」に基づいて、「弱い立場の人」に、自分(たち)の持つ力を振るった時、人権侵害が起きるのです。

重要なことは、人権侵害をしている側は、自分たちの

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高校生のための人権入門(5) 怒りはなぜ起きるか

高校生のための人権入門(5) 怒りはなぜ起きるか

人権侵害は怒りとともに行われることが多いものです。例えば、パワーハラスメントで相手を怒鳴りつけるとか、児童虐待で親が子どもをたたいたり、高齢者虐待で介護者が高齢者をカッとして殴ったりしてしまうことなどがその典型的な例です。

怒りは2次感情怒りは心理学においては、2次感情と呼ばれます。正義感からくる継続的な怒りを除けば、多くの場合、怒りは突発的なもので、このような日常的に起きる怒りは必ず怒りの前に

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高校生のための人権入門(6) 憎しみと人権侵害

高校生のための人権入門(6) 憎しみと人権侵害

人権侵害や差別をする人の心の中に強く巣くっている感情に、憎しみがあります。在留外国人に対するヘイト・スピーチ(ヘイトは「憎しみ・憎悪」という意味です)はその典型的な例です。

満たされない思いが憎しみを生む人間関係における憎しみや恨みの感情は、自分自身が抱えている「満たされない思い」から生まれます。逆に言えば、満たされている人は、人をうらやんだり、ねたんだり、憎んだりしません。つまり、このような憎

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高校生のための人権入門(7)  同和問題(部落差別)について

高校生のための人権入門(7)  同和問題(部落差別)について

はじめにこれから何回かにわたって、今の日本で起きているさまざまな差別や人権侵害について書いていきたいと思います。最初にお断りしておきたいのは、「人権の問題についてはまだ正解はない」とわたしは考えているということです。「こういう考え方、とらえ方だけが正しくて、それ以外は間違いだと言えるような正しい考え方はまだない」ということです。ですから、これから書くことも、あくまで現時点のわたしはこう考えるという

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高校生のための人権入門(8) セクシュアルハラスメントについて

高校生のための人権入門(8) セクシュアルハラスメントについて

はじめに「同和問題(部落差別)」の次には、「女性の人権」について書きたいと思うのですが、その前にセクシャルハラスメントについて少し見ておきたいと思います。

セクシュアルハラスメントはどうして起きるのか
セクシュアルハラスメント(セクハラ)はどうして起きるのでしょうか。加害者が破廉恥でスケベな人間だからだとか、女性を性の対象としてしか見ていない男性だからだとか言われることもありますが、どうもそれは

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高校生のための人権入門(9) ジェンダーについて

高校生のための人権入門(9) ジェンダーについて

前回、「同和問題(部落差別)」の後は「女性の人権」について書く予定だと記しましたが、その前に今回は、「ジェンダー」について書いて、次回以降に「性的少数者の人権」や「女性の人権」について書くことにしました。

はじめにもう何十年も前に、岸田秀という心理学者が、「人間は本能の壊れた動物である。」と言いました(『ものぐさ精神分析』(青土社、1977年)など)。確かに、人間は本能が壊れていて、本能に支配さ

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高校生のための人権入門(10) 性的少数者の人権について

高校生のための人権入門(10) 性的少数者の人権について

はじめにみなさんはLGBTという言葉をどこかで聞いたことがあると思います。LGBTは、現在、性的少数者(セクシュアル・マイノリティ)を表す言葉として使われています。LGBTのLはレズビアン(女性同性愛者)、Gはゲイ(男性同性愛者)、Bはバイセクシュアル(両性愛者)、Tはトランスジェンダー(戸籍上の自分の性別に違和感を感じる人)を表す頭文字です。LGBTとひとまとめにすることが多いのですが、その内容

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高校生のための人権入門(11) 女性の人権について

高校生のための人権入門(11) 女性の人権について

なぜ「女性の人権」かこのところ、「女性の人権」という言い方をすると、すぐに「男性の人権はどうなっているのだ。」と言われます。そんなこともあってか、最近は「女性の人権」という言い方よりも、「ジェンダー・バイアス」というような言い方をする人が多くなってきました。しかし、わたしはここではあえて、「女性の人権」という言い方を使いたいと思います。その理由はふたつあります。ひとつは、今なお、女性は社会的にきわ

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高校生のための人権入門(12) 児童虐待について(子どもの人権(1))

高校生のための人権入門(12) 児童虐待について(子どもの人権(1))

はじめに日本では毎年、何人もの子どもが保護者からの児童虐待によって亡くなっていきます。その子どもを死に至らしめた虐待の内容は、知れば知るほど、なぜこんなひどいことができるのかという驚きや怒りを感じないではいられません。そのような怒りや批判は、虐待をした親や、虐待を知っていながら何もしなかった(できなかった)児童相談所の職員などに向かいます。しかし、児童虐待を考える上で重要なことは、このような児童虐

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高校生のための人権入門(13) 学校でのいじめについて(子どもの人権(2))

高校生のための人権入門(13) 学校でのいじめについて(子どもの人権(2))

はじめに学校でのいじめについて考えることは、職場でのパワーハラスメントについて考えることよりもむずかしい気がします。それは、いじめの方がパワーハラスメントに比べて、より複雑で、はっきりさせにくいものを含んでいるからです。

現在、学校で起きているさまざまないじめについて考えてみると、いじめは学校の中で「必然的に」起きているようにわたしには思えます。いじめのない学校や学級はありませんし、いじめを完全

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高校生のための人権入門(14) 障害者の人権について

高校生のための人権入門(14) 障害者の人権について

障害者とは2016年(平成28年)4月に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が施行されました。この法律は、その第二条で「障害者」を「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。」と定義しています。

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