マガジンのカバー画像

読書ノート

17
運営しているクリエイター

記事一覧

【メモ・感想】McCormack, Mark, Liam Wignall, 2017, "Enjoyment, Exploration and Education"

【メモ・感想】McCormack, Mark, Liam Wignall, 2017, "Enjoyment, Exploration and Education"

・読んだ。かなり自分の関心に近く、面白かったので、超簡単に紹介する。

・McCormack, Mark, and Liam Wignall, 2017, "Enjoyment, Exploration and Education: Understanding the Consumption of Pornography among Young Men with Non-Exclusive Sex

もっとみる
勝手にブックカバーチャレンジ

勝手にブックカバーチャレンジ

・#7日間ブックカバーチャレンジ というものが流行っているらしい。

●読書文化の普及に貢献するためのチャレンジで、参加方法は好きな本を1日1冊、7日間投稿する
●本についての説明はナシで表紙画像だけアップ
●都度1人の友達を招待し、このチャレンジへの参加をお願いする

・7日間かける意味ある?

・リレーってだるくない?

・これ、7人に回さないといけないってこと??チェンメか???

・でも、

もっとみる
村上春樹『職業としての小説家』に学ぶ論文の書き方

村上春樹『職業としての小説家』に学ぶ論文の書き方

・こんな世の中なのでなかなか研究に向かう気力が起きないが、とりあえず「何か」を書き残して、執筆のリハビリをしたい。

・後輩が、院生室に村上春樹『職業としての小説家』を置いているのを見て、自分も積読していたのを開いてみた。

・「職業的研究者」、およびその卵である大学院生にも通じることが多く、刺激を受けたので、引用とメモを残しておく。

■「第6回 時間を味方につける――長編小説を書くこと」より▶

もっとみる
2019年9月に読んだものの感想

2019年9月に読んだものの感想

西兼志,2017,『アイドル/メディア論講義』東京大学出版会.
筆者が訳書、共著をもつベルナール・スティグレール、ウンベルト・エーコのメディア論を用いながら、〈スター〉〈タレント〉〈アイドル〉性とその変化を論じた前半が特に面白い。

メディア論をやや離れて、ハビトゥスや言語行為論に踏み込むと、ちょっと理論が先走りすぎているように思う。学生向けに、メディア論への導入としての側面を持たせようと書いてい

もっとみる
コナリミサトの強迫的性善説と羅生門的語り――『凪のお暇』と『珈琲いかがでしょう』

コナリミサトの強迫的性善説と羅生門的語り――『凪のお暇』と『珈琲いかがでしょう』

コナリミサトと「他者の合理性の理解」「今さら!?」とぎりぎり言われなさそうなタイミングで、コナリミサト『凪のお暇』を5巻まで読み終えた。人間関係の描写もさることながら(特に嫌味のリアリティがすごい)、「生活」に必要なMPを回復させてくれる要素も持ち合わせる、定期的に読み返したい漫画だった。めちゃめちゃ面白かったので、そのまま『珈琲いかがでしょう』も読み終えた。人がいるのに少し泣いた。

コナリミサ

もっとみる
2019年7~8月に読んだもの(抜粋)の感想

2019年7~8月に読んだもの(抜粋)の感想

溜めないように小まめに書いていきましょうね……。

山内長承,2017,『Pythonによるテキストマイニング入門』オーム社.
主ゼミで読了。「本書は、プログラミングの経験は多少あるけれども、言語処理の経験はないという読者を対象にして」いるらしく、プログラミングの経験がない自分はかなり苦労しながら読んだ。

が、書いてあるとおりにやれば、それなりの結果は出るように感じる。
本書のプログラム例のファ

もっとみる
【レジュメ】Small, Mario Luis, 2009, " 'How Many Cases Do I Need?'"

【レジュメ】Small, Mario Luis, 2009, " 'How Many Cases Do I Need?'"

2019年4月に行われた質的社会調査法の自主勉強会で、下記論文のレジュメを担当した。

Small, Mario Luis, 2009, " 'How Many Cases Do I Need?': On Science and The Logic of Case Selection in Field-based Research," Ethnography, 10(1): 5-38.

アメリカ

もっとみる
2019年3月~5月に読んだもの(抜粋)の感想

2019年3月~5月に読んだもの(抜粋)の感想

1月に「ゆるゆる月に1回ぐらいの更新を目指します」と書いて、すぐに3か月分溜めてしまった。

ジル・ドゥルーズ,1967=2018,『ザッヘル=マゾッホ紹介――冷淡なものと残酷なもの』河出書房新社.
マゾヒズムを、サディズムの裏面としてではなく独立した価値を持つものと考えることが、ドゥルーズのマゾッホ論の何よりの特徴。

このとき、いわゆるSMはマゾヒスト主体とサディスト主体との出会いではなく、マ

もっとみる
2019年2月に読んだもののメモ

2019年2月に読んだもののメモ


『現代思想』2019年2月号:「男性学」の現在海妻径子「CSMM(男性[性]批判研究)とフェミニズム」の、「男性性について研究する上で研究者自身の男性としての被抑圧経験を重要視する当事者主義」を本質的な特徴とする日本の男性学のあり方は特異的だ、という指摘はとりわけ重要だと思う。
欧米様が偉いわけではないけれども、少なくとも日本の男性学はガラパゴス的であるということ。総論的な位置に置かれた論文が、

もっとみる
2019年1月に読んだもののメモ

2019年1月に読んだもののメモ

今後、ゆるゆる月に1回ぐらいの更新を目指します。

千葉 雅也、二村 ヒトシ、柴田 英里(2018)『欲望会議』自分の研究対象であるポルノグラフィの問題も、本書の中心的テーマ。

千葉雅也先生の合いの手、整理、ブレーキのかけ方は見事だと思ったのだけれども、それをふりほどいてさらにアクセルを踏む柴田さんには危うさも覚える。とりわけ問題だと思うのは、「フェミニスト」を非常に一枚岩としてとらえているので

もっとみる
【感想】穂村弘最新歌集『水中翼船炎上中』――セックスの歌

【感想】穂村弘最新歌集『水中翼船炎上中』――セックスの歌

穂村弘さんの最新歌集『水中翼船炎上中』の感想、というかほとんど好きな歌を引用して並べておくだけになるのですが、今更ながらさらっと書き残しておきます。

『手紙魔まみ、夏の引っ越し(ウサギ連れ)』以来、実に17年ぶりの歌集。「昭和」「ノスタルジー」をテーマにしてきたここ最近(といっても十数年経ったわけですが)の集大成。

「歌集にまとまったおかげで、後期穂村さんの歌がこれで読みやすく、批評しやすくな

もっとみる
閻王の口や牡丹を吐かんとす――『みだれ髪』後半5首選

閻王の口や牡丹を吐かんとす――『みだれ髪』後半5首選

※2015年4月26日のブログ記事を移転しました

千種創一さん主催「青空勉強会」の第4回、与謝野晶子『みだれ髪』の後半戦が4月25日に行われた。
前回の僕の感想はこちら。
最近ブログ更新にかけられる時間が限られているので、ごく簡単に今日の感想をまとめる。

発表担当は、結社「塔」、同人誌「穀物」の濱松哲朗さん。
「頻出する韻やリフレイン、それに基づく調べは、長唄などの近世日本文学由来のものでは

もっとみる
藤木TDC『アダルトビデオ革命史』を読んで

藤木TDC『アダルトビデオ革命史』を読んで

※2015年4月4日のブログ記事を移転しました

藤木TDC『アダルトビデオ革命史』(2009,幻冬舎)を読んだ。
機械音痴で録画すらまともにしたことがない僕が不得意な、ハード面の歴史、つまりAVにおける「産業革命」の記述が充実していて嬉しい。

僕の卒論的に興味深く読んだのは、第二章「AVの誕生」と第五章「AVの新しい波」。
第五章は、卒論で重要になるキーワード「ハメ撮り」の、誕生について書か

もっとみる
Between Women――与謝野晶子と山川登美子

Between Women――与謝野晶子と山川登美子

※2015年4月4日のブログ記事を移転しました

昨日、歌集のSkype読書会に参加した。
青空文庫に登録されてる歌集をどんどん読んでいこう、というもの。
前回が北原白秋の『桐の花』で、今回は与謝野晶子の『みだれ髪』の前半。レジュメを担当させていただいた。

『みだれ髪』、これがなかなか難しい。
逸見久美『新みだれ髪全釈』がなければ意味が取れない歌ばかりだった。
「神」が恋人、「紅」「紫」が恋の

もっとみる