高見温| On Takami

旅日記だったり、つらつらと長文を書くこともあったりします。気ままに読んでくださいませ。…

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旅日記だったり、つらつらと長文を書くこともあったりします。気ままに読んでくださいませ。 サポート代はお紅茶代に充てさせていただきます。連絡や依頼はontakami92@gmail.comまで

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基本的には展覧会評や書評及びエッセイを書きます。海外の美術館情報や小ネタも投稿します。美術好きなら面白いと思うのでぜひ。記事は3日に一本くらいを予定しております。

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記事一覧

貴族とブルジョワ

1947年に階級制度がなくなって以降、日本では貴族とブルジョワは概念的に同一視されがちですが、欧州ではそのあたり微妙に分かれています。1950年代となると如実にそのふた…

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空海展感想(奈良国立博物館)

空海生誕1250年記念ということで空海展。おそらくこの規模では2003の入唐1200年記念の「空海と高野山」展以来のものになると思います。仏像に焦点を当てた展覧会としては20…

ゲルニカ

ピカソの線というのは躊躇いがなく、勝者の傲慢といったものを感じるとジョン・バージャーが書いていましたが、それは主題のジャンル問わず発揮されています。 多くのキュ…

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印象派2日間

『パタゴニア』という旅行記なのか随筆なのか、それともフィクションなのか判然としない本がある。大体の人は困惑するが一部の放浪癖のある人間から絶大な支持を受けている…

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雪舟伝説(※雪舟展ではない)感想 京都国立博物館

今年の上半期を代表する日本美術の展覧会です。企画が発表された時点で話題沸騰でしたから、長蛇の列を心配していたのですが、平日は空いています。 本展は雪舟の芸術を観…

花咲く等持院の影に

龍安寺の石庭が苦手だ。もっと直接的に言うなら良さが分からない。 どうも枯山水が好きになれない私は、石に仏の世界を観る想像力に欠けるのだと思う。そもそも精神に宗教…

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ホテルのカクテル🍸

日系ホテルのバーよりは外資系、特にイタリアか香港資本のバーのだすアルコールの方が優れていると思ってしまう今日この頃です。ただそれらも日本酒でカクテルをとなると途…

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最古のアート・ギャラリー

ロンドンのセント・ジェームズ街を歩いていると、洗練された紳士服の店などが立ち並び面白いのですが、その街に世界最古のアート・ギャラリーと称されるコルナギという店が…

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読書記録(2024年4月分)

読書記録を公開して一年経ちました。読みたい本が無くなりつつあるとはいえ、読んでいると自然と気になる本が新たに出てきますから、やはり書物は海のようだなと思います。…

ル・クレジオ『ブルターニュの歌』

存命のフランス人作家では世界的に最も高名な作家のひとり、ル・クレジオ。1963年の『調書』で華々しいデビューを飾り、硬質な詩的散文で一世を風靡しましたが、やがて父祖…

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ベリサリウス/Βελισάριος

人類史上最高の軍事的天才とは誰か。アレクサンダー大王?ナポレオン?など不毛ながら暇潰し的には楽しい問いというものがあります。 私個人の考えでは東ローマ帝国の将軍…

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お知らせ

いつも投稿を読んでくださり、また活動を支援していただきましてありがとうございます 藝大の大学院を修了したことで時間ができて、記事の更新の頻度を上げられることにな…

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『プロテスタントと美術館展示の倫理』

マックス・ヴェーバーの『プロテスタントと資本主義の倫理』という社会学の名著があります。プロテスタントの禁欲的な思想こそが資本主義の根本を成立したという逆説性と、…

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3D

ク〇スティーズやサ〇ビーズといった競売会社は、大金が飛び交う優雅な商売と言われますが、実態としてはえげつないことをやっていたりします。告発という話ではなく、楽し…

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絵画の地位をめぐる法廷闘争 in スペイン🇪🇸

少し前に若桑みどり氏の著作の一節から、真に人文主義的な芸術はイタリアにしかないというが、それはどのような意味なのかという質問が来ましたが、あの後も個人的に調べて…

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古美術エッセイ選

質問がよく来ていたので、心に残ったものをいくつか紹介します。学術書でも美術書でもなくあくまで美術エッセイです。 現代アート系のエッセイの方が著者の思想が前面に出…

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貴族とブルジョワ

貴族とブルジョワ

1947年に階級制度がなくなって以降、日本では貴族とブルジョワは概念的に同一視されがちですが、欧州ではそのあたり微妙に分かれています。1950年代となると如実にそのふたつは文化や風習・価値観まで異なっていました。

美術の話をすると、競売会社のサザビーズは新興ブルジョワ層、クリスティーズは貴族階級というのが暗黙の了解で、当時はもっぱらクリスティーズが大きな仕事をして、サザビーズはこじんまりとした家

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空海展感想(奈良国立博物館)

空海展感想(奈良国立博物館)

空海生誕1250年記念ということで空海展。おそらくこの規模では2003の入唐1200年記念の「空海と高野山」展以来のものになると思います。仏像に焦点を当てた展覧会としては2019年の東博が最新ではありますが、空海展となると20年ぶりです。

高野山の名宝名物盛りだくさんだった祝祭的な2003年版に比べれば、「密教とは」「空海のしてきたこととは」と宗教色が強めの展示になっています。美術館だけでなく高

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ゲルニカ

ゲルニカ

ピカソの線というのは躊躇いがなく、勝者の傲慢といったものを感じるとジョン・バージャーが書いていましたが、それは主題のジャンル問わず発揮されています。

多くのキュビスム絵画や、その他20世紀前半の絵画を見てきましたが、輪郭線の勢いやソリッドな硬さに、滾る血といったものが伝わってきます。それだけパワーがあるということですが、《ゲルニカ》のような鎮魂や戦争の告発といった悲しいテーマにおいても、勝ち誇る

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印象派2日間

印象派2日間

『パタゴニア』という旅行記なのか随筆なのか、それともフィクションなのか判然としない本がある。大体の人は困惑するが一部の放浪癖のある人間から絶大な支持を受けている、英国の作家ブルース・チャトウィンの代表作だ。
私は彼にシンパシーを感じ、全作品及び評論まで読み込んだ。英国人の伝手を辿り、チャトウィンと交友のあった人も訪ねて、その印象を聞いたくらいだ。

チャトウィンは作家になる前、オークションハウスの

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雪舟伝説(※雪舟展ではない)感想 京都国立博物館

雪舟伝説(※雪舟展ではない)感想 京都国立博物館

今年の上半期を代表する日本美術の展覧会です。企画が発表された時点で話題沸騰でしたから、長蛇の列を心配していたのですが、平日は空いています。

本展は雪舟の芸術を観るということから少し進んで、彼の作品や作風がどのように後進に継承されて「画聖」と呼ばれたかを辿るものです。

概要気分が高まるような有名作品からスタートします。教科書でお馴染みの《秋冬山水図》《山水長巻》に《天橋立図》《慧可断臂》などなど

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花咲く等持院の影に

花咲く等持院の影に

龍安寺の石庭が苦手だ。もっと直接的に言うなら良さが分からない。

どうも枯山水が好きになれない私は、石に仏の世界を観る想像力に欠けるのだと思う。そもそも精神に宗教的次元が備わっていないのかもしれない。
茶人を気取っておきながらわび茶も実のところよく分からない。地味で殺風景だから嫌いというわけではなく、感性や本能といったどうしようもないところから苦手なのだろう。知識を専門家並に積んだところで、それが

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ホテルのカクテル🍸

ホテルのカクテル🍸

日系ホテルのバーよりは外資系、特にイタリアか香港資本のバーのだすアルコールの方が優れていると思ってしまう今日この頃です。ただそれらも日本酒でカクテルをとなると途端に冴えが消えるのが難点です。

日系の場合、ホテルより個人店のバーの方が水準が高いと思うのは気のせいでしょうか。

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最古のアート・ギャラリー

最古のアート・ギャラリー

ロンドンのセント・ジェームズ街を歩いていると、洗練された紳士服の店などが立ち並び面白いのですが、その街に世界最古のアート・ギャラリーと称されるコルナギという店があります。

毎年マーストリヒトで行われるTEFAFと呼ばれる古典絵画のアートフェアにて、このコルナギは毎度独特の出品をして、美術関係者を沸かせています。昨年はスペイン・バロックの巨匠ムリーリョの作品を目玉にしていましたし、今年はドメニコ・

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読書記録(2024年4月分)

読書記録(2024年4月分)

読書記録を公開して一年経ちました。読みたい本が無くなりつつあるとはいえ、読んでいると自然と気になる本が新たに出てきますから、やはり書物は海のようだなと思います。

文芸書①アイザック・B・シンガー『モスカット一族』

詳しい感想はnoteで記事化していますが、久しぶりに数十人の登場人物が数十年を生きる大河小説を読んだなということで特別な印象を持ちました。ポーランド・ワルシャワのユダヤ人社会を克明に

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ル・クレジオ『ブルターニュの歌』

ル・クレジオ『ブルターニュの歌』

存命のフランス人作家では世界的に最も高名な作家のひとり、ル・クレジオ。1963年の『調書』で華々しいデビューを飾り、硬質な詩的散文で一世を風靡しましたが、やがて父祖の地モーリシャスやアフリカ、世界各地を舞台にした文化人類学の視点を持つ作風に移ります。2008年ノーベル文学賞受賞。

世界各地を放浪するように書き続けてきた彼も80代に。2020年、ついに自分の幼少期をテーマにした作品が出たということ

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ベリサリウス/Βελισάριος

ベリサリウス/Βελισάριος

人類史上最高の軍事的天才とは誰か。アレクサンダー大王?ナポレオン?など不毛ながら暇潰し的には楽しい問いというものがあります。

私個人の考えでは東ローマ帝国の将軍ベリサリウス(500〜565)だと思います。

このベリサリウスという将軍はユスティニアヌス大帝の下で獅子奮迅し、各地の反乱を滅ぼして、イタリアやイベリア半島まで征服する恐ろしいまでの戦績の良さによって、歴史家から高く評価されています。

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お知らせ

いつも投稿を読んでくださり、また活動を支援していただきましてありがとうございます

藝大の大学院を修了したことで時間ができて、記事の更新の頻度を上げられることになり、今後さらに多くの文章が書けるだろうということになりました。非公認とはいえ、組織の看板を背負っていたことから穏健なことしか書けませんでしたが、そのくびきからも解放されたので色々書けると思います

これからは無料公開記事は本の紹介と展覧会

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『プロテスタントと美術館展示の倫理』

『プロテスタントと美術館展示の倫理』

マックス・ヴェーバーの『プロテスタントと資本主義の倫理』という社会学の名著があります。プロテスタントの禁欲的な思想こそが資本主義の根本を成立したという逆説性と、論理的な展開によって多くの反響を呼びました。

今日ではプロテスタントの思想が資本主義と繋がるのも部分的で、もっと早期に確立されていたのでは、などとヴェーバーの考えそのままが主流ではなくなっていますが、古典の古典たる故は内容より様式や課題へ

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3D

3D

ク〇スティーズやサ〇ビーズといった競売会社は、大金が飛び交う優雅な商売と言われますが、実態としてはえげつないことをやっていたりします。告発という話ではなく、楽しんで読んでください。

この業界は、アートを売りたい人からセットで買って、それをオークションにかけて売ることで、その差額を売上にする会社です。自らアートを取り扱う画商とは全く異なりますが、アートを売りたい人がいないと始まらないビジネスです。

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絵画の地位をめぐる法廷闘争 in スペイン🇪🇸

絵画の地位をめぐる法廷闘争 in スペイン🇪🇸

少し前に若桑みどり氏の著作の一節から、真に人文主義的な芸術はイタリアにしかないというが、それはどのような意味なのかという質問が来ましたが、あの後も個人的に調べてみました。

端的に言えば、絵を描くというのは哲学や数学、宗教学に古典の知識など様々な学問分野に精通する必要がある→これは単なる職人仕事ではなく、高度に知的な労働なのだ!という論理で、地位の向上を目指します。職業差別的なものが起点にあるとい

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古美術エッセイ選

古美術エッセイ選

質問がよく来ていたので、心に残ったものをいくつか紹介します。学術書でも美術書でもなくあくまで美術エッセイです。
現代アート系のエッセイの方が著者の思想が前面に出てきて面白いかもしれませんが、今回は古いところでまとめています。

①徐京植『私の西洋美術巡礼』

在日朝鮮人二世の美術批評家のエッセイ。本書は単純な旅行記でも評論でもなく、自分のあやふやなアイデンティティを持って、厳然と聳える名画に対峙し

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