高見温| On Takami

旅日記だったり、つらつらと長文を書くこともあったりします。気ままに読んでくださいませ。…

高見温| On Takami

旅日記だったり、つらつらと長文を書くこともあったりします。気ままに読んでくださいませ。 サポート代はお紅茶代に充てさせていただきます。連絡や依頼はontakami92@gmail.comまで

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記事一覧

五輪

オリンピックが盛り上がっていない。パリ大会は時差の関係から、概ね競技は日を跨ぐ深夜になる。サッカーで日本が強豪パラグアイに快勝したニュースを見て、「あ、やってる…

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絢爛のペテルブルク①

おそらく、いや確実にロシアに行く機会は今後限られてしまうので、思い出によって美化される前にまとめておきたいという、宮殿の話。 ピョートル大帝やエカチェリーナ2世…

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W

友達のワグネリアンにワーグナー以外にも偉大なオペラはあるのに、なぜそれらは聞かないのか?と訊ねると、この手の質問にうんざりしていたのか、それとも迎え撃つ返答の装…

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個人的hip-hopおすすめ

普段はクラシックやジャズを中心に聞いているのですが、よく質問がくるのでまとめ。治安が悪い音楽のイメージしかなく、何がヒップホップか正直分かりませんが、ラップ主体…

マクシミリアン

イタリアとスロバキアの国境沿いにあるトリエステという港街は、第一次世界大戦後までオーストリア領だったこともあり、イタリアなのにオーストリア風の建物や文化が香ると…

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好きな版画つれづれ②

西洋美術における版画芸術最高の表現者はレンブラントです。これはおそらくほとんどの美術史家が賛同すると思われる、数少ないもののひとつと言っていいでしょう(本当か?)…

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傑作から社会は(たぶん)見えない

3日に1回くらい思うこと 何かを学んだり知りたい時に、その分野の超一流とされる人たちのエッセンスや、歴史上の天才のものを取り入れたいと思う気持ちはわからなくもない…

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好きな版画つれづれ①

私の好きな西洋の版画作品について。まずはヤコポ・デ・バルバリの《ヴェネツィア鳥観図》です。1500年に発表されたこの作品は134.5×282 cmという大きさの木版画です。 …

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Pininfarina

私にとって「未来はどんどん面白くなり、洗練されて行く」という楽観的な進歩主義を信じられる要素として、ピニンファリーナ(Pininfarina)という特殊な企業の存在がありま…

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コモ湖ゆらゆら🇮🇹

日本のいいところはと聞かれたら、「ひとりでどこへでも行けること」と答えることにしている。それは治安がいいだけでなく、ひとりで外食しアクティビティを楽しむことも、…

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マニュアル・クリエイティブ

アメリカは1920年代のフォード式製造メソッドに限らず、どのような人でもそれなりの水準と成果物に達するためのマニュアルを作る傾向があるようで、それはデザインなどクリ…

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読書記録(2024年6月分)

気圧の乱高下などひどい有様でしたが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。部屋に籠って本を読むというのは猛暑の回避策として伝統的に支持されてきたはずです(適当) 文…

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落日

美術品を収蔵することは当たり前ですが美術館の責務です。日本の美術館は概ね新収蔵品用の予算がないという悲惨な事態であり、よく「欧米では~」という言葉とともに嘆かれ…

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EURO2024⚽️

予選リーグの注目カードの試合は生中継及び見逃し放送で全て観たくらい、サッカーヨーロッパ選手権は私にとって白熱するものでした。心なしかインバウンドにヨーロッパ系の…

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β

当然ながらどれだけ綺麗事を言ったところで、美術館も文芸出版もビジネス的な要素はあります。各種支援が無くなってきているため、集客の見込める展示で得たお金を学術的な…

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ホルバインのグラス

まさかホルバインの《死せるキリスト》がバズるとは思いませんでしたが、この大巨匠の絵が一万数千もいいねされる状況は、客観的にみてもTwitterの人たちは教養高い集団と…

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五輪

五輪

オリンピックが盛り上がっていない。パリ大会は時差の関係から、概ね競技は日を跨ぐ深夜になる。サッカーで日本が強豪パラグアイに快勝したニュースを見て、「あ、やってるんだ」というくらいの反応なのは、仕方がないことかもしれない。

しかし全てを時差の関係にすることはできない。懐古によって美化されているかもしれないが、2012年のロンドン大会、2016年のリオデジャネイロ大会はテレビはもちろん、社会的にも大

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絢爛のペテルブルク①

絢爛のペテルブルク①

おそらく、いや確実にロシアに行く機会は今後限られてしまうので、思い出によって美化される前にまとめておきたいという、宮殿の話。

ピョートル大帝やエカチェリーナ2世など世界史上のビッグネームが、ロシアをヨーロッパ化するというために膨大な金と時間をかけて生み出した過剰な美の世界が、ペテルブルクにはいくつかあります。この街の宮殿はエルミタージュ美術館になっている冬宮殿、郊外にある夏宮殿、また別個に世界遺

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W

W

友達のワグネリアンにワーグナー以外にも偉大なオペラはあるのに、なぜそれらは聞かないのか?と訊ねると、この手の質問にうんざりしていたのか、それとも迎え撃つ返答の装填に手間取っていたのかはわからないが、体をわずかにのけぞり青いリネンのジャケットにかすかな皺を付けた後、ゆったりと天を仰いでから吐き捨てるように言った。

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個人的hip-hopおすすめ

普段はクラシックやジャズを中心に聞いているのですが、よく質問がくるのでまとめ。治安が悪い音楽のイメージしかなく、何がヒップホップか正直分かりませんが、ラップ主体の音楽という意味でとりあえずいくつか好きなものを紹介します。暇なときや夏休みに聴いてみてください。

①Đen Vâu ベトナム

ベトナムのラッパー、デン・ヴァウの一曲。ベトナムではとても有名だそうで、幾つも音楽賞を受賞しています。この曲

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マクシミリアン

マクシミリアン

イタリアとスロバキアの国境沿いにあるトリエステという港街は、第一次世界大戦後までオーストリア領だったこともあり、イタリアなのにオーストリア風の建物や文化が香るところでもあります。

オーストリアには海がなく、このトリエステが事実上唯一の海として重要視されていました。そこに皇室ハプスブルク家の別荘があります。ミラ・マーレ城です。施主はマクシミリアン。フランツ=ヨーゼフの弟で、のちにメキシコ皇帝に担ぎ

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好きな版画つれづれ②

好きな版画つれづれ②

西洋美術における版画芸術最高の表現者はレンブラントです。これはおそらくほとんどの美術史家が賛同すると思われる、数少ないもののひとつと言っていいでしょう(本当か?)

《三本の十字架》に見られるような光と闇のコントラストはレンブラントの題名詞ですが、油彩画よりも版画の方にその感性が発揮されていると思います。そもそもレンブラントの油彩画の闇の暗さはニスの褪色によるもので、本来の暗さではありません。《夜

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傑作から社会は(たぶん)見えない

傑作から社会は(たぶん)見えない

3日に1回くらい思うこと

何かを学んだり知りたい時に、その分野の超一流とされる人たちのエッセンスや、歴史上の天才のものを取り入れたいと思う気持ちはわからなくもないですが、彼らの書いたり言っていることはマッチョ過ぎて参考にならないというケースは、よくあるのではと思います。  

例えば、錦織圭選手が擬声語ばかり言いながら、マネしてという謎レッスンの動画です。一流プレイヤーは自分になぜそれができるの

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好きな版画つれづれ①

好きな版画つれづれ①

私の好きな西洋の版画作品について。まずはヤコポ・デ・バルバリの《ヴェネツィア鳥観図》です。1500年に発表されたこの作品は134.5×282 cmという大きさの木版画です。

この鳥瞰図はまずもって当時の技術では不可能なように思われます。飛行機からみた視点でヴェネツィアの街を描いているのですが、当然ながら当時に飛行機はありませんし、それくらい街を見渡せる高い塔は存在しません。同時期のフィレンツェや

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Pininfarina

Pininfarina

私にとって「未来はどんどん面白くなり、洗練されて行く」という楽観的な進歩主義を信じられる要素として、ピニンファリーナ(Pininfarina)という特殊な企業の存在があります。定期的に私を興奮させる稀有な会社のひとつ。
このような「推し企業」みたいなものは、未来への病的な悲観を食い止める処方箋になりうると思います。

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コモ湖ゆらゆら🇮🇹

コモ湖ゆらゆら🇮🇹

日本のいいところはと聞かれたら、「ひとりでどこへでも行けること」と答えることにしている。それは治安がいいだけでなく、ひとりで外食しアクティビティを楽しむことも、社会的に認可されている文化であるということだ。これは日本の誇りである🇯🇵😀🇯🇵

ヨーロッパでも美術館はひとりでも行ける。しかし外食となるとカフェかバールくらいしか選択肢が無くなり、ちゃんとした店にひとりで行くことはできないが、そ

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マニュアル・クリエイティブ

マニュアル・クリエイティブ

アメリカは1920年代のフォード式製造メソッドに限らず、どのような人でもそれなりの水準と成果物に達するためのマニュアルを作る傾向があるようで、それはデザインなどクリエイティブ業界でも同様です。

名人芸や才能で済まされそうな分野にも、彼らは果敢に挑んで法則や効率を見出そうとします。そこは素直に凄いと思いますが、いくつかアメリカ系のクリエイティブ本を読んでみた率直な感想としては、意欲を掻き立てはする

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読書記録(2024年6月分)

読書記録(2024年6月分)

気圧の乱高下などひどい有様でしたが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。部屋に籠って本を読むというのは猛暑の回避策として伝統的に支持されてきたはずです(適当)

文芸書①九鬼周造随筆集

『いきの構造』などで知られる日本哲学の巨星ですが、随筆の名手であることは知りませんでした。内容は素朴な街歩きから高踏な舞楽についてまでありますが、あまり力んでいない端正な文章で面白かったです。論文と異なり、論理性の

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落日

落日

美術品を収蔵することは当たり前ですが美術館の責務です。日本の美術館は概ね新収蔵品用の予算がないという悲惨な事態であり、よく「欧米では~」という言葉とともに嘆かれます。

とはいえ英国もその点で非常に悲しいことが起きているのは事実で、ヨーロッパがこうだから日本もさもありなん、というようなことになりつつあります。収蔵予算の大幅な減額です。
周辺で戦争が起き、庶民の暮らしが悲鳴を上げる状況だから買えない

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EURO2024⚽️

EURO2024⚽️

予選リーグの注目カードの試合は生中継及び見逃し放送で全て観たくらい、サッカーヨーロッパ選手権は私にとって白熱するものでした。心なしかインバウンドにヨーロッパ系の人が少ないのはユーロ観戦に勤しんでいるからかもしれません。

単に面白いだけでなく、観ているといくつかの気づきというものもあります。

①アルバニア・サポーター🇦🇱の熱狂

バルカン半島の国アルバニアは死の組に入って気の毒でしたが、ドイ

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β

β

当然ながらどれだけ綺麗事を言ったところで、美術館も文芸出版もビジネス的な要素はあります。各種支援が無くなってきているため、集客の見込める展示で得たお金を学術的な企画に補填する、不動産で得た利益で誰が読むのか分からない文学雑誌を継続するなど、諸々のシステムの中に一切はあるわけです。

ですから彼らも(専門家も加担しているのですが)ある種のアイドル産業と同じで、スターが必要になります。この作家は優れて

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ホルバインのグラス

ホルバインのグラス

まさかホルバインの《死せるキリスト》がバズるとは思いませんでしたが、この大巨匠の絵が一万数千もいいねされる状況は、客観的にみてもTwitterの人たちは教養高い集団と言えるのではないでしょうか。

どこか楽天的な気分になりますが、ホルバインは油彩画だけでなく多くのステンドグラスのデザインもしています。デューラーもやっていますから、ルネサンス期のドイツ圏の芸術家の大きな仕事のひとつだったのでしょう。

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