マガジンのカバー画像

旅行記いろいろ

18
ちょっとした旅行についての小文をまとめました。
運営しているクリエイター

記事一覧

飛んでエル・エスコリアル🇪🇸

飛んでエル・エスコリアル🇪🇸

理由は分からないですが、世界史の教科書でフェリペ二世についての記述を見て、一目ぼれしてしまいました。あの顎ではなく、別名書類王というところです。

彼は大王国の君主としてアメリカ大陸、ヨーロッパ、フィリピンなどアジア植民地、そしてポルトガル併合によって現在のブラジルまで支配下に置きましたが、ほとんど遠征に出ることはありませんでした。

マドリード近郊エル・エスコリアルに建てた宮殿兼修道院から、文字

もっとみる
南へ。サレルノと中世文化🇮🇹

南へ。サレルノと中世文化🇮🇹

中世のかなしみが、すすり泣くような美しさが私を捉えたのは、サレルノの街の夕暮れだった。

フレッチャロッサに乗ってヴェスビオの麓から遠ざかり、南へ。最古の医学部があったという世界史資料集の記述と、アマルフィ海岸の絶景を浴びる前に集う「玄関」としてしかこの街を意識していなかったが、どんな街にも歴史が詰まっているのがイタリアだ。きっと何かあるだろうと深く調べずに飛び乗った次第である。

天気は曇りだが

もっとみる
シュチェチン独行🇵🇱

シュチェチン独行🇵🇱

ベルリンがなぜか肌に合わなくなって、心は東方へ向かい、いつしかポーランドへ行こうという意志が芽生えてきました。
とはいえ、あまりに突発的な考え故にワルシャワまでは行く余裕がなかったので、ドイツの国境沿いでそれなりに大きそうなシュチェチンという街に行こうということになりました。それまでシュチェチンという名前すら知らなかったのですが。

市内中心にある14世紀に建てられた城館へ。シュチェチンは中世から

もっとみる
エストニア美術🇪🇪探訪

エストニア美術🇪🇪探訪

極寒のエストニア。首都タリンは鈍重な灰色の圧が脳にのしかかってくるようでした。

人はあまり歩いておらず、幾何学的な郊外の街並みはソ連的な雰囲気が色濃く漂っており、氷点下の冷気よりもそちらに身が堪えます。

こちらがKUMUと呼ばれるエストニア国立美術館です。日本で言えば国立近代美術館のようなもので、エストニアの古〜近代美術品が並んでいます。最近は日本のチームラボの作品が置かれるなど、現代アート関

もっとみる
雲の都 エディンバラ🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿

雲の都 エディンバラ🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿

この街には半年ほど生活したことがあるので、思い入れは他の都市よりあるかもしれないです。しかしあまりにも暗いので性格に悪影響が出ました。実際のところエディンバラは酒飲みが多く、そうでもないとやっていけないなと思うくらいです。

エディンバラのイメージはほぼ100%、エディンバラ城とその周辺の旧市街に限定されます。この前日本にもコレクションが来た、スコットランド・ナショナル・ギャラリーとて、城の麓にあ

もっとみる
隠岐ふらり

隠岐ふらり

後鳥羽上皇や後醍醐天皇が流された由緒ある流刑地も、今では最も成功した地方創生の例として、全国の自治体から熱い視線を浴びています。歴史と自然と最新の取り組みなどで、今最もホットな離島です。

海士町へ

大阪伊丹空港から直行便が出ており、それを活用いたしました。

単純に隠岐といっても二つに分かれています。島後と島前で、島後が飛行機や島根県からのフェリーで行くことができる玄関となっています。私は今回

もっとみる
カゼルタ宮殿探訪🇮🇹

カゼルタ宮殿探訪🇮🇹

ヨーロッパにはルイ14世が建てたヴェルサイユ宮殿を模倣した、擬ヴェルサイユが山ほどありますが、その中では最もちゃんとしていると思ったのは、ナポリ近郊にあるカゼルタ宮殿です。
ナポリ王はスペイン・ブルボン家から来ていたので、血縁的な正統性もあるからでしょうか。

狂騒のナポリ市街地を抜けてローカル電車に乗り、カゼルタへ。こじんまりした可愛らしい街並みを抜けると、巨大な館がドンと映り込んできます。圧倒

もっとみる
ヨーク探訪🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿

ヨーク探訪🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿

ロンドンから北に2時間のところにあるヨークは、約2000年の歴史を持つイングランドの古都です。ローマ帝国の最北端、ヴァイキングの拠点、ノルマン・コンクエストで破壊されるもの開運の中心地として繁栄、大聖堂を建てて栄華の極みを達するものの、17世紀の内戦で衰退し、鉄道が敷かれて近代化という街です。

徘徊開始

歴史の色々な事象が詰まっている英国有数の古都であり、ロンドンが国際都市であるのに比べれば格

もっとみる
大連散策🇨🇳

大連散策🇨🇳

だいぶ前の滞在でしたが思い返すことがあり、まとめてみたいと思います。1945年8月まで日本だった中国の東北部。そこの遼寧省に大連という都市があり、一帯の中核都市として開発が進められています。

日本との繋がりが強く、多くの日本企業が未だに大連に存在していますし、中国国内唯一の中日文化交流協会はこの街にあります。聞いたところによると地元の名門である大連大学で一番優秀かつ人気なのは日本語学科(2023

もっとみる
会津若松とムッソリーニ

会津若松とムッソリーニ

福島県会津若松市に観光で立ち寄った時、まずこの城を訪れました。中は資料館になっています。やはり展示のメインは戊辰戦争の頃の会津藩についてで、敗者というよりは、忠義を尽くして勇敢に戦ったことが強調されています。教科書の官製の歴史とは違う面から書かれていて、歴史の多面性に思いを馳せました。

同行者は歴史にそこまで興味がなかったので、早急に城を降りて周りの茶室を覗いたら、飯盛山に向かいました。お目当て

もっとみる
「読書感想文」旅を糧とする芸術家(2006年)

「読書感想文」旅を糧とする芸術家(2006年)

西洋美術史の巨匠たちは旅をどのように作品の進化に活かしたか、また彼らにとって旅はどのような意義があったか、についてまとめられた本。各著者の論考がまとめられている、論文集です。

目次

・美術の展開に果たした芸術家の旅行の意義
小佐野重利 (総論)
・さまよえるヤーコポ・デ・バルバリ
秋山總 (ルネサンス)
・1603年のルーベンスのスペイン行と二点の絵画
中村俊春 (バロック)
・イタリアへの旅

もっとみる
モノカルチャー観光 ボン🇩🇪

モノカルチャー観光 ボン🇩🇪

大聖堂で有名なケルンからすぐ行ける街ボンは、東西ドイツ時代の西側の暫定首都の役割を果たしていたところです。それ以上に作曲家ベートーヴェンの出身地として有名だと思います。

この街に行くことは当初のドイツ観光の目的でもなく、ケルン大聖堂とその付属博物館を思ったよりも早く観終えてしまったために、どこかへ行こうということで急遽決まった目的先でした。今の自分なら街を散策する愉しみや名物を堪能する悦びに浸れ

もっとみる
バングラデシュの詩②

バングラデシュの詩②

ダッカの旧市街へ。カオス、アメ横が永遠に続く感じで地図もない。掘建小屋ばかりが延々と続く。どこがどこなのか分からない。私は現地の同行者といるのに、怖くなってすぐに抜け出した。観光客にはハードルが高すぎる。

ここで、はい解散と言われたら間違いなく迷子、かつ死ぬなと身体が反応する。あまり見応えのあるものはないが、この雰囲気は全くの未知のものだった。

もっとみる
バングラデシュの詩①

バングラデシュの詩①

動機は今となっては不明だが、ヨーロッパについては相当な経験値があると自惚れていたこともあって、海外に行くなら全く異なる世界に行きたくなった。とはいえアジアは日本のバリエーションで都会はどこも似ている(と思っていた)ので、文字通り全く違う世界となるとどこだろうかと考えた結果、バングラデシュがピンときた。天啓というべきものだ。

たまたま現地にNGOで働く友達がいたり、かつてバングラデシュに縁のある人

もっとみる