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読書のススメ

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読書感想と創作小説&エッセイ集 読書感想記事はネタバレはしないように、あくまでも自分自身が感じたことを中心にしたもの。 創作ものは私の好みで独断と偏見で選びました。
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2023年7月の記事一覧

夏の夜の夢

夏の夜の夢

さあ、明日からもぼちぼちがんばるか、と自分を励ましながら
日曜の夜、私は電灯を消し、ベッドに入った。

窓から月あかりがさしている。
明日も晴れみたいだから、朝から草刈だな。
また班長からダメ出しされるのかな。
磯田さん、明日は機嫌がいいといいな。

とにかくお弁当はスタミナ重視で行こう。
経口補水液を忘れるな!

スタミナかあ。豚のスライスがあったから、生姜焼きにしようかな。
千切りキャベツを敷

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ある集落の物語 ♯シロクマ文芸部

ある集落の物語 ♯シロクマ文芸部

「食べる夜かぁ」
娘が言った。
「あぁ、今夜だな」
父親も頷く。
「嫌だなぁ。やめれば良いのになぁ」
俯き加減の娘が物憂げに言う。
「そう言うな。昔からの仕来たりなんだ」
父親は諭すように伝えた。この話をこれ以上続けることは不毛だからだ。
「はぁ」という娘の嘆息で会話が途切れた。
十四になったばかりの娘も、疑問は感じつつソレを受け入れ始めているのだ。

Y県の山奥にひっそりと佇む小さな集落。そこが

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ショート: モテない思考パターン

ショート: モテない思考パターン

食べる夜の癖が付いて、半月。
体重は加速をつけて増加し、ますます自分に自信がなくなってきた。

やっと彼氏ができても、愛を確かめずにはいられず
「そういう人の心を覗こうとする
依存型の子とは付き合えない」
あっさり振られてしまう。

どうして上手く行かないのかな。
そもそも
恋人は作るものじゃなく、できるんじゃないの?
だから、恋人に駆け引きしてもよくね?

努力し、意図して関係を積み重ねる…占い

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歴史ファンタジー/風来夢曹・序#1

歴史ファンタジー/風来夢曹・序#1

歴史とはファンタジーだ、と思う。全て、という事ではないが。
一級資料の記録や発掘された遺跡から、歴史におけるいくつもの“点”を
一つ一つ検証し、繋げていく事が歴史の醍醐味だとすれば。

“点”の周囲の余白を、
そこで積み重ねられてきた月日という圧倒的な質量を持った余白を、
妄想で埋めていくのもまた歴史の醍醐味ではないだろうか。
根と葉みたいなものがくっついたファンタジーとして。
それが事実に伍して

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「いつかの旅」を再び。私も冒険の旅に出よう。

「いつかの旅」を再び。私も冒険の旅に出よう。

7月に入って少し時間に余裕ができたので、またゆっくりと読書をしている。
忙しい時でも本は読むが、この「ゆっくりと」という点が肝だ。
移動中や夜寝る前に読むのではなく、昼間の気分の良い時に、「よし、これから30分、本を読もう」と決めて、おいしい紅茶など用意してソファでくつろぎながら読む。そういう“ゆとりのある”読書ができている。

だから、そのような読書にふさわしい本を選んだ。何か月も前から買ってい

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村上春樹「1Q84」について感想とご意見をお願いします!

村上春樹「1Q84」について感想とご意見をお願いします!

相互フォローさせていただいている奈星さんのstand.fmを聞かせていただいて、古い記憶が蘇りました。

村上春樹氏の「1Q84」の感想を語っておられ、それを聞いて思った事は、この小説の良さを理解するには、私の感性アンテナが作動していないのかもしれません。

私のコメントに対して以下のような返信をいただきました。

要するに答えのない作品が好きか嫌いか…
ちゃんとした答えを求めて考えるのではなく、

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#創作大賞感想『カール大公の恋』

#創作大賞感想『カール大公の恋』

私は西洋史が好きで、その分野の小説を読むことがあります。

ただ日本語で読める作品はどうしても限られており、これまで手に取った作品はマリー・アントワネットやナポレオンなど華やかな有名人を扱ったものが殆どでした。

しかしこの度 創作大賞応募作品の中から、渋めの主人公ながら非常に心に残った歴史小説を見つけたので 熱くご紹介したいと思います!

✤作品概要タイトル

『カール大公の恋』

登場人物(一

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ショート: 惹かれていく自分が悔しい

ショート: 惹かれていく自分が悔しい

白いフレアスカートの真ん中はプリーツで、
ほんの一部スイカ柄が覗いている。
黒のタイトなTシャツとよく似合い、夏らしい。

「本当にお願いを叶えてくれたのね」

成美は、上目遣いのまま僕を鼻で笑った。
成美が僕に、女装してデートをすれば
付き合うと約束した割には塩対応で、
自分が試されたのが腹立だしい反面、
嫌いになれない。

むしろ惹かれていく自分が悔しい。

「私は相手が女の身なりでも
好きに

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738.愛されていることを知らない少年と、愛したいと思う少年と、愛する少女のお話。

738.愛されていることを知らない少年と、愛したいと思う少年と、愛する少女のお話。

A story about a boy who doesn't know he is loved, a boy who wants to love him, and a girl who loves him.
【お馬鹿なcoucouさんの逆さま論㉗】

世の中で、
in the world,

一番価値のあるもの、ってなんでしょう?
What is the most valuable thing?

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『街クジラの季節』 # シロクマ文芸部

『街クジラの季節』 # シロクマ文芸部

街クジラの季節になった。
毎年、この季節、つまり梅雨が明けて、小学生ならあと少しで夏休みという季節になると、街クジラがやってくる。
と言っても、街クジラが見えるのは僕じゃない。
弓削くんだ。
この季節になると、弓削くんは、授業中もずっと窓の外を見ていた。
休み時間も、ひとりで、校庭の半分だけ埋められたタイヤに腰掛けて、空を見上げている。
ある時、僕は弓削くんに尋ねてみた。
「何を見てるんだよ」

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