四丁目の神様【短編小説:約5,000字】
「だるぅっ。だっるるるるぅぅぅっ」
東京は豊島区西巣鴨四丁目にある安アパートの一室で、六畳一間の畳に横たわりながら、さも面倒くさそうに中年男が叫んでいる。
「田中さん、ご指令ですよ」
そう言ったのは同居のお目付け猫、名前をイナリという。純白の毛色にぽっちゃりボディ、目は細く垂れ気味である。
「手術を手伝って来いだそうです。2丁目のハルって女の子が今日手術らしくて、その執刀医がヤブで、バレていニャいだけで何回も手術失敗していて、その内何人かは死んでるって」
「とんでもねーな。