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小説まとめ

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僕の書いた小説の類いをまとめました。
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記事一覧

東京献血奇譚 〜滝沢正義の場合〜【短編小説:約9000字】

「ったく、なんでこんな時に」 独り言を呟きながら、滝沢正義は駅に繋がる道を走っている。 …

camyu
1日前
41

誘惑銀杏 #毎週ショートショートnote

ある日のこと、ぶらぶら散歩していると、植え込みの辺りに銀杏が一粒落ちていた。 皮は剥けて…

camyu
2週間前
100

四丁目の神様【短編小説:約5,000字】

「だるぅっ。だっるるるるぅぅぅっ」 東京は豊島区西巣鴨四丁目にある安アパートの一室で、六…

camyu
3週間前
87

黒幕の涙 #毎週ショートショートnote「黒幕甲子園」

その年の夏の甲子園大会、初出場の私立松緒高校が旋風を巻き起こし、決勝に進出した。 売りは…

camyu
4週間前
83

迷宮入り #毎週ショートショートnote「鋭利なチクワ」

「死因は失血死だそうです」 俺は先輩と二人、殺人現場に向かっていた。 「失血死か」 「は…

camyu
1か月前
71

同級生 #毎週ショートショートnote『リベンジトリートメント』

「このトリートメント、私たちでもなかなか手に入らない貴重品なの」 丹念に、客の髪に揉み込…

camyu
1か月前
65

海のピ。 #毎週ショートショートnote

「えーっと、プだったっけ?あれ?ぺだったかな…」 「ピでしょ、ピ。海のピでしょ、お父さん」 「あー、それそれ海のピだわ。あれはさ、焼くと美味いんだよなぁ」 「そうそう、両面に焦げ目がつくぐらいしっかりめに焼くとね、想像するだけで香ばしい香りがたまらない。よだれが出そう」 「おいおい、よだれ垂らすなよ。しかしさ、焼くのも良いけど、煮ても良いし、そのまま食べるのもありだし、本当に万能だよな、ピ。」 「本当よね。海の三冠王の異名は伊達じゃないわね」 「いや、もはやメジャー級だよ」

天の川de文春砲 #毎週ショートショートnote『彦星誘拐』

厳密に言うと、今年は七夕が無かった。 どういうことかって? 七月七日の七夕のその日に、彦…

camyu
2か月前
71

下ごしらえは丁寧に。 #毎週ショートショートnote「一方通行風呂」

「あれっ、ここ一方通行かよ」 番組制作の為のロケハンの帰り道、男はカーナビの表示に騙され…

camyu
2か月前
92

仕事人間サラリーマン!! #シロクマ文芸部『月曜日』

月曜日が好きだ。 神に「仕事人間」というアビリティを付与され生きてきた私にとって、「休日…

camyu
3か月前
76

地獄の沙汰も… #毎週ショートショートnote『友情の総重量』

「次の方どうぞ」 案内係に呼ばれ、ドアを開けるとそこには閻魔大王が座っていた。想像してい…

camyu
3か月前
102

杏は祈願上手 #毎週ショートショートnote

「杏も最後の七五三だねぇ」 母が言うと、 「うん!」 杏は元気に返事をした。 今年七歳にな…

camyu
3か月前
104

文学トリマー #毎週ショートショートnote

「えっとぉ、ここちょっと長かったんで短かくしてぇ、こっちも全体見てバランスとってみました…

camyu
4か月前
84

再生の森 #毎週ショートショートnote『記憶冷凍』

「記憶冷凍」 ナギがそう呟き、掌をヌイの額の辺りに乗せるとヌイはそのまま眠りについた。 「彼女は幼い頃に見知らぬ連中に拐われて、奴隷として買われた家で、主から酷い目にあっていたのだそうだ」 ナギはテラにそう説明した。 「それでトマが此処に連れて来たの」 「あぁ。その家から逃げ出して、隠れていたところをトマが保護した」 翌朝、眠りから目覚めたヌイの表情は、別人のように明るかった。 「ありがとう」 晴れやかな表情のヌイを見て、迎えに来たトマが礼を伝えた。 「ヌイの新しい人生