吶喊003

吶喊003

身投げの塔

身投げの塔

 西地区の英雄トロスの活躍は、瞬く間に街中に広がった。勝利した西地区の広場では、ささやかな祝宴が開かれていた。 「トロス万歳! 西地区万歳!」 「今年の報酬はなんだろう。去年は食べ物と衣類だったな」 「なんだっていい、生活が楽になることは違いないんだ」 「俺の活躍見たか? 今回の勝利は俺のおかげと言っても過言じゃないね」  滅多に飲むことのない酒もふるまわれ、思い思いに騒ぐ人々。その中にはトロスの姿もあった。  騒ぐわけでも無く、一人離れたところで酒を煽るトロス。その胸中には

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10 スカイ・ロード

10 スカイ・ロード

 目を覚ますと、まだ薄暗くぼんやりとした闇が病室を支配していた。  カイザーはうつろな眼差しで天井を見上げたまま、静かに息を吐いた。  毎朝、明け方近くに夢を見る。  あの日の光景だ。カイザーが最後に空を飛んだあの夜。そして撃墜されたあの夜の夢。  夢は寸分たがわず、同じ光景を見せ付ける。スクランブル要請を受けた第一飛行隊が、あの月のない夜に飛びだったあの日。  所属不明のステルス戦闘機とのドッグファイト。そして失速し、コントロールを失ったカイザーの機体目掛けて撃ち込まれたミ

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吶喊002

吶喊002

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吶喊001

吶喊001

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アンドロメダのおっちゃん 1

アンドロメダのおっちゃん 1

 炎天下、清志郎は高さ三メートルほどの擁壁の上で体育座りして、ゲームに熱中していた。近くに日差し遮るものが何も無く、自分の頭で液晶画面を庇っていたので、うなじのところが特に強く焼けている。せわしなく変化する画面を目で追う。清志郎は忙しい。すぐ隣の公園から響いてくる同級生たちの大きな叫び声や金属バットが軟球を叩く音は耳に入らない。  ハーフパンツの裾を揺らす様なクマゼミの鳴き声が延々と響く。草いきれがむせかえり、清志郎の肌を焼き付けた。それは、子供の柔らかい肌にいくつもの赤い筋

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西地区の英雄

西地区の英雄

 レガの父トロスが広場に着いたとき、そこには既に二千人以上もの人がいた。人の波は一定の流れを作っており、その行きつく先は、タカダガが牽く荷台に腰かける男の元だった。 「よしよし、今回も勝つぞ」  トロスよりも一回りは若い、恰幅の良いその男は、自らの元に集う人々の様子を、悦に浸って眺めている。彼はトロスらの住む西地区の地区長。街いちばんの膨らんだ腹を一度さすると、集まった人々に聞こえるように声を張った。 「いいか! 今年もこの時期がやってきた! 我々西地区は、去年同様勝利を収め

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7月20日 (火)

7月20日 (火)

 大抵はつまらない時もあるかもしれないけど、それでも仕事に行かなくてはいけないのが社会人でもあるが、僕的にはなぜか希望を持っている時が、あるかもしれない。  竜とそばかす姫の姫の仮想空間、Uはそんな生易しい世界ではないかもしれないけど、未来的な希望を持っているのはなぜだろうか?自分の妄想か?それは定かではないかもしれないけどやはり未来を肯定的にとらえているのかもしれない。  今回の話はあのサマーウォーズを越えるダークかもしれないけど、その分肯定的な希望にもつながる最後はあ

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#05  1982  E.T.

#05 1982 E.T.

このNoteは、1980年前後ののSF(空想科学)作品を回想してゆく第5回目となります。 第4回目までを、以下のNoteにまとめました。必要に応じて、リンク・リストとしてご活用ください。 around 1980 / 宇宙にまつわるサイエンスフィクション#05 1982 E.T. ・概要スティーヴン・スピルバーグ監督の映画作品であるE.T.を紹介したいと思います。 E.T.とは、 Extraterrestrial life の略称であり、地球外生命を意味します。

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タカダガ飼いの少年

タカダガ飼いの少年

 タカダガが道を行く。その蹄が立てる音は、土でできた道に積もった塵に吸い込まれる。 「道を空けろ! 物資の配給だ!」  荷台を牽くタカダガの手綱を握っている男。布であしらった服は所々の糸がほつれている。男は手を大きく降り、皆に到着を知らせた。  その知らせは広場に集まっていた者たちに伝わり、知らせを受け取った者たちが広場から四方へ駆けだした。降り積もった塵が一斉に宙に舞う。 「配給だ! 配給が来たぞ! 十五を超えた男はみんな広場に集まれ!」  その声は街中に響く。休むことなく

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