ななしの23区外@ざらりとした話

サラッと読めて、ザラリと終わる後味の1分間ショートショート。 1話完結。気になるタイ…

ななしの23区外@ざらりとした話

サラッと読めて、ザラリと終わる後味の1分間ショートショート。 1話完結。気になるタイトルをサクッと読んでみてください。 フォロー・コメント・スキ・シェアしてもらえると嬉しいです。

最近の記事

「ということはお前はゲイだな!? 論理学を披露した者~令和版論理学の憂鬱」ショートショート

 彼は酒場で論理学の教授と知り合った。 「論理学ってのはどういったもんですか?」 「やって見せましょうか。お宅には芝刈機があります?」 「ありますよ」 「ということは、広い庭があるわけですね?」 「その通り! うちには広い庭があります」 「ということは、一戸建てですね?」 「その通り! 一戸建てです」 「ということは、ご家族がいますね?」 「その通り! 私には妻と2人の子供がいます」 「ということは、あなたはゲイではないですね?」 「その通り! ゲイじゃありません」

    • 罪悪感なき いじめ/透きとおるほど酷たらしい教室

      「きりーつ きをつけー れーい」  いつもどおりの授業開始の挨拶。  それを俺は机に座ったまま見ていた。  みなが席を立ち、頭を下げる中、教室で唯一人だけ悠々と席に座っていた。  それを誰も咎めない。  教師さえも俺を一瞥もしない。  それは俺が特別だからじゃない。  不良で、声をかけるのを躊躇われているわけではない。  皆、俺を無視しているのだ。  いや、正確に言えば無視ではない。  このゴミクズみたいな連中はもう、無視していることにさえ忘れているだろう。  いまはみ

      • 誰にも伝わらない感動/届かない気持ちと仮初の感情

        映像ドラマの作り方は大きく様変わりした。 大作を作るためにはそれこそ大金が必要で、長期間が必要だった。 それがいまは一変した。 AIの登場でコストが大幅に下がった。 が、デジタル化の波はコスト削減だけでは済まなかった。 それ以前からマス的なドラマの作り方は下火になっていた。 多数のドラマが作られ、動画アップロードサイトができてからは個人が好きな動画を上げ、自分の好みにあう作品を見るようになった。 が、そんなものの中では駄作も多い。 そして、個人の趣味趣向も細分化していっ

        • 整形サイボーグの投資術 もっと美しく美しく美しく・・・!

          最初はちょっとした化粧のつもりだった。 私は顔にメスを入れた。 いわゆる美容整形というやつだ。 しかし、それが癖になった。 それまで鏡を見るのが苦痛だった。しかし、自分の顔に自信を持てるようになってからは、鏡を見るのが好きになった。 他人の目を気にしていたのが、気にならなくなった。 それどころか、他人の目が心地よく感じることができた。 男性からの欲望にまみれた視線もいいし、女性からの嫉妬に駆られた視線も気持ちいい。 私は顔を作り変えることにした。 そのレベルになるほど

        「ということはお前はゲイだな!? 論理学を披露した者~令和版論理学の憂鬱」ショートショート

          やさしさは要らない/心を捨てて競争社会で生き抜く技術

          「本当にいいのですね」 「……はい」  医者の最終確認の言葉に俺は同意した。    そこから人生が一変した。  ビジネスもうまくいき、人間関係も良好になった。    優しい人が一番なんて言われることもあるが、あれは嘘だ。  俺がそうだった。  子供のころからいわゆる感受性が強かった。  思いやり深い。優しい。  しかしそれは裏を返せば繊細で、なんでも気にしてしまう。  それでも学生時代くらいまでは少しオドオドしている性格ということでおさまっていたが、社会人生活ではうまくい

          やさしさは要らない/心を捨てて競争社会で生き抜く技術

          悪意の値段/1円の報酬と衆愚の投票

           殺し屋稼業は儲からなくなった。  理由は単純。  単価が下がったんだ。  昔ながらのやり方が通じなくなった。  ずっと昔、依頼主の大半は”国”だった。  御国様が自らの手を汚したくない、もしくはバレた時のことを考えて、俺たちに頼んできた。  もちろん報酬はたんまりだ。  あちらさんも自分のカネじゃないんだ。金払いは良かった。  その次の時代、依頼主は企業になった。  国が荒っぽいことをしなくなった代わりに企業同士の争いが盛んになった。  その中で荒っぽいことで物事

          悪意の値段/1円の報酬と衆愚の投票

          夢の職業・悪夢の現実 理論上、世界一自分に合っている職業

           昔の人は「自分に合う職業」を探すのに苦労したらしい。  自己分析やら自分探しの旅やら企業分析などをして、自分の適性や仕事との相性を調べたりしたとのことだ。  だがいまはもうそういった苦労をする時代ではない。  そもそも”適性”というものは生まれながらにほとんどが決まっている。  昔は生まれか育ちか、という論調があったりしたが、遺伝子解析などが進むほどにその人その人のポテンシャルや傾向が生まれながらに決定していることがわかった。  それを非人道的だという人もいたが、ずば

          夢の職業・悪夢の現実 理論上、世界一自分に合っている職業

          魂のカウントダウン/命の上限数と輪廻転生システム

           人類の人口は増加を続け、肥大は無限に続くと思われた。  だが、全人口が100億人を超えた段階で、人類の増加は止まった。  正確には10,001,131,561人で、自然増加が停止した。  初めは、その仕組みに気づかなかった。  出生率が下がった。しかし、まったく0になったわけではなかった。  しかし、技術進歩によって飛躍的に上がっていた人工授精等の成功率が極端に下がり、ついにはほぼゼロとなる事態に人々は困惑した。  科学的な結論が出ない中、一つの悲劇がきっかけとなっ

          魂のカウントダウン/命の上限数と輪廻転生システム

          100点満点のあなたが好きなの 数値化された最高の幸福

          「はい。これ、プレゼント!」 「ありがとう! …なんだいこれは?」  彼女から誕生日プレゼントを渡された。  それは金属製の輪っか。  一見、指輪のようにも見えるが少し違うようだ。 「コレはね。貴方の心身を管理してくれるのよ」 「これが?」  そういって彼女はその器具の説明をしてくれた。  この小さな輪っかには超高度なセンサー類が詰め込まれており、つけているだけで対象の身体状態をスキャンしてくれるらしい。  その上、現実世界の様々な場所に置かれたカメラなどのネットワーク

          100点満点のあなたが好きなの 数値化された最高の幸福

          うみがめの血と肉の味わい あの時、お前は俺に

          「昨日、うみがめのスープを飲んだんだ」  そう友人に話しかけた。 「そうか」  そう、淡々と友人は返事をした。 「ずっと……ずっと心の奥底にひっかかっていたんだ。あのときの、あのスープがウミガメのものだったのか、と」  独白するように、そして、吐露するように友人喋る、それは友人への問いだった。  自分と友人は、過去、海で遭難した。  乗っている船が難破し、海に投げ出された。なんとか救命ボートの一隻に乗り込めた。  その救命ボートに乗っていたのは3名。  自分と友人

          うみがめの血と肉の味わい あの時、お前は俺に

          心が擦り切れるまで家族を愛そう 愛情過剰家族

          「課長、今日の夜とか飲みどうですか?」 「いや、すまない。今日の夜は家族と過ごす予定があるんだ。息子の誕生日でね」  そういって男は同僚の誘いを断った。 「へぇうらやましい。あれ? お子さん、おいくつでしたっけ?」 「ちょうど五歳になるよ」 「かわいい盛りですね」  そんな会話をして、男は帰路についた。 【あなた、今日は予定通り帰ってこれる?】 「ああ。いま会社を出たところだから、予定通りに家につくよ」 【よかった。この子がもう待っているわよ】  会社から駅への道

          心が擦り切れるまで家族を愛そう 愛情過剰家族

          生まれの呪縛:家庭環境がもたらす勝者と敗者の決定論

           知識に意味はなくなりました。  教育は価値を失いました。  そういわれて久しいのはご存じですよね?  かつては知識を得るには本や人から得るくらいしかありませんでした。それがネットが普及し、だれもが同じ知識に平等にアクセスできるようになりました。  結果、頭の中にどれだけの知識を蓄えているか、ということの価値が急落しました。  教育も同じです。  かつては限られた人たちだけが高等教育を受けられました。それがハードルが下がり、多くの人が初等教育以上の教育を受けられるように

          生まれの呪縛:家庭環境がもたらす勝者と敗者の決定論

          退職記念日――最後に花束を妻に

          「○○さん、おつかれさまでした!」「おつかれさまでした!」  そう言われて何十年と勤め上げた会社を後にした。  今日は定年退職の日。  自分でいうのもはばかられるが、仕事一筋で勤め上げた。  懸命に働き、身を粉にした。  しかし、自分の生きがいでもあった。  が、その分、家族を犠牲にした――  ふと、自宅の最寄り駅の改札を出たところで、花屋が目に入った。  いつもそこにあったはず。そして、あることは知っていたが気にも留めなかったその店が今日は目についた。  会社の人

          退職記念日――最後に花束を妻に

          人権に配慮した最先端の牢獄

          「さぁ――こちらですよ」  そう案内されたのは、最先端の”牢獄”だった。    刑務所と言われてどういったものを想像するだろうか?    高いコンクリの塀。  鉄格子。  厳しい規律の生活。  看守。  いろいろな要素を思い浮かべるだろう。  だが、ここにはそれらが何一つない。    いや、本当に何一つないのだ。  クリーンでただっぴろい部屋。  心地よい空調  整列して並べられた棚。  たとえるならば図書館やサーバールームに近いだろうか。  一昔前の刑務所と言えば、罪

          人権に配慮した最先端の牢獄

          平等のための逆ボランティア:不幸に注ぐギフティング

           この国は”寄付”が根付いていない――そう感じないだろうか?  俺は痛切にそう感じていた。  他国では富める者が貧する者に施すのが文化として根付いている。  いろいろな国があるのはわかるが、それでもこの国にそういった崇高な精神性はない。そう肌身で感じないか?  なぜか。  それは宗教的な精神性が根付いていないことだったり、と理由はいろいろ言われているが、他者に施しを与えること自体に一種の忌避が働いているように思える。  なぜならこの国では平等――横並びが善とされているか

          平等のための逆ボランティア:不幸に注ぐギフティング

          咎と罰 物静かなSNSと加虐の発露

           最近のSNSは静かになった。  一昔前のインターネットはひどかった。  掃き溜めといってもまだ生ぬるいようなものだった。  匿名と勘違いした罵詈雑言。  マウント合戦に弱者ムーブ。  多様性を勘違いした排他性。  ちょっとしたことで炎上し、袋たたきだ。  言葉尻一つで晒され、間違いがあったら血祭りだ。  間違った情報で攻撃され、命を断つ人も続出した。  それはSNS上だけにとどまらず、日常生活にも緊張感を満たした。  万人による「1984年」のようだ。  自由を履き

          咎と罰 物静かなSNSと加虐の発露