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#祈り

夜伽ヶ浜|詩

夜伽ヶ浜|詩

「夜伽ヶ浜」

月影さやかな浜に鳴く自鳴琴の
その啜りに耳を傾ける法師のうた

愛されたいさ、僕だって

風簫に搔き消されてしまいそうな
そんな水平線を遠くにみて
終わりの分からない唄をうたう

疲れきった貝の殻に
誰かの声が聴こえた気がした
長編のような星座の連なりから
君の祈りが溢れ落ちていくようで

祈り|詩

祈り|詩

「祈り」

透け見ゆような心もとなげ
必ずだとか永遠ほどに
哀しく聴こゆもの他にはなくて

下手くそで佳い
否、それがいいのだと

小指の代わりに絡めんや
ひとつとして要らぬ糸はなし
きみへと繋がる祈り
揺れのぼる静穏なる想いたち

潮風と星のすな|詩

潮風と星のすな|詩

「潮風と星のすな」

分かたれた南の海と夜の空
瓶詰めされた潮風と星の砂が
あの娘の腰に揺れている

誰が悪いとかじゃない
あのね、
季節が違っていたんだよ

せめぎあう
みなもの小さな子供たち
浜辺には恋を知った歌うたい
ほら、誰かのために
今日も明日を弾き語っているよ

きみが里|詩

きみが里|詩

「きみが里」

空に去りゆく影法師
海へと飛びたつ鼻の唄

ほ、ほっ……

ほたるの里すぎ見知らぬ土地ぞや
そちらの水は甘いであろうか

寂しくなったら還っておいでと
いつぞの優しい夢をみる

ほ、ほっ……

ほら視てごらんよ
あの日の景色
そちらの暮らしは如何なるものか
風は、想いを運んでおるか

祈り星|詩

祈り星|詩

「祈り星」

噛られた空に浮かぶ月
夜を紡ぐ白い風の足どり朧に

追いかけ見つめるその先に
名のない星座を貼りつけながら

知っている
そこに名前をつけたなら
風は空には居られないこと

濡れた朝の霧のように
堕ちて地球へと還ること

かの國|詩

かの國|詩

「かの國」

伸ばした指さき
すり抜けゆく風の影
追い果てたどるや
薄紅の微睡みに抱かれて

健やかであれ
唄い流れる水の音

懐かしさに類義した
温もり愛しさと名付けて

微睡みに繋いで|詩

微睡みに繋いで|詩

「微睡みに繋いで」

何もない空に朝がやってくる

瞳のまえに広がる
きっと淡いであろう赤子のみどり
産声をあげたひかりの匂い
それは素足の心に
くすぐったいを教えてくれる

背から絡みつく
まるでカフェモカのような温もりと
何もないはずの空に手を伸ばす

微睡み……

昨日より、きょう
今日よりも明日なんだって

違うよ
深い眠りにつく前に
僕たちは誰よりも何よりも、ふたり

風にとける|詩

風にとける|詩

「風にとける」

透明の言の葉をふた指つまんで
青い風に透かし瞳をとじる
聴こえてくるのは何時かの鈴の音
真暗な峠に灯ったあかり

沈んだ夕陽の代わりの文字に
旅雨たゆたう君の心音
いつかのボクだと細めた声を
背中で拾うて眉間で哭いた

もうすぐ夏がやってくる
庭先わすれた風鈴が
今年も君の名を呼び続けている

ひとつぼし|詩

ひとつぼし|詩

「ひとつぼし」

君を独りにはしないから

空に
まだ星が遊んでいた

存在意義を失くした僕と
見失いそうに立ち尽くす君と

決して、君を……

あの日の君が
そう言って空を見上げていた

深森のなみだ|詩

深森のなみだ|詩

「深森のなみだ」

吐ききった呼吸の彩に
緩やかにあつまる影あそび

瞳を閉じたあわい魂の
その指先が
セルロースの傷痕をそっと舐める

ちりちりと音をたてている
其は、
旅の終わりを知らない約束の端っこ

焦らなくていい
ひとり何処へも逝かぬ昊
その痛みすらも愛おしくなるほどに

Ka'pilina|詩

Ka'pilina|詩

「Ka'pilina」

蹴破られた扉の向こう側
弱さの中にある強さの意味を知る

甘くて苦いひかり白く激しく
メザメルト消えていく黒の記憶たち

愛してると触れる指先
永遠を意味する
マウロアのくちづけ心地よく

君は知っていた|詩

君は知っていた|詩

「君は知っていた」

小さな笑い声と涙たちが
長い時をかけひとつの物語になる

あの日、君と出会った姿で
僕はひとりこの街へと帰ってきた
朽ち果てた換気扇の下
脳裏に転がる路地裏の風

ピン刺したポイントを指でなぞると
妙に全てのことが腑に落ちた
君が託した願いの意味と
僕を待たずしてこの街を去った理由

あの頃と同じ空に手をのばす
独り、此処から……