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日常雑感

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雑記 1     Sちゃんのヴァイオリン

雑記 1 Sちゃんのヴァイオリン

おい、二階から変な音がしとるぞ。誰がハモニカ吹いとるんか。

とベッドで父。晩年は、眠ることも趣味の一つで、食ってない時は寝とるに決まっとるがや方式で、いつもベッドの上にいた。

ああ、あれは、Sちゃんが弾くヴァイオリンの音よ。

ブーコブーコ聞こえるが、あれがブァイオリンか?

そうよ。

そう言えば、昔彼女が大学生の時も、定期演奏会の練習と言って、二階の自分の部屋で弾いていたことがある。

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雑記 2 「声」の値段

雑記 2 「声」の値段

 ある脚本家が書いていた話だが、今から15年以上も前に読んだ話なので、どう言う本で読んだのかも、その人の名も忘れてしまった。

台本のト書きに「ここで百舌(モズ)が鳴く」
と書いたら、得体の知れない爺さんがやってきて
「旦那さん、その鵙が鳴く時間は朝ですか、夕方ですか」
と言う。
「朝と夕方と鳴き方が違うのか」
と尋ねると
「はい左様でございます」
と言ってやってみせた。
自分の耳には、鳴き声の長

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雑記 3  「拝啓、オヤジ殿」

雑記 3 「拝啓、オヤジ殿」

東海道新幹線のグリーン車に乗ると、椅子の前のポケットに『Wedge』という雑誌が入っている。JR東海を利用する客は、ポイントがたまると普通車の料金でグリーン車に乗れる特典があり、時々私はその恩恵に浴する。
この雑誌の中の連載に「拝啓、オヤジ殿」という息子・娘からオヤジに向けての手紙が載っているページがある。

親と子の関係は、幸せの原点、であると同時に、永遠の迷路、挫折の源、と編者(相米周二)は言

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雑記 8    私と猫 猫を飼うということ

雑記 8 私と猫 猫を飼うということ

私は、自分の年齢を考えると、飼い遂げる(そんな言葉ないですけど)確信が持てなくて、もう猫を飼うことはしない、と心に決めています。
猫に関しては、まだ逝って間もなく、心の余裕もなく、

捨て猫がいるんだけれど、あなたのところにはもう1匹もいなくなったんでしょう? 寂しくない?

というお誘いを受けますが、お断りするのは大変心苦しいのですが、その猫ちゃんは、どなたか飼ってくださる方が見つかるといいと思

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猫日和 21  猫語☆空耳アワー

猫日和 21 猫語☆空耳アワー

猫との会話。猫が飼い主の言葉を解するのは当たり前だが、猫から人間に語りかけることはあるのだろうか。
フランス育ちの猫なら、フランス語を、日本なら日本語を。
猫を飼う人間は、日常当然のこととして、猫を会話している。
行ってきます、を初めとして、ご飯よ、とか、待って、とか、いい子ね、とか、今日はいい天気ね、とか、その他諸々。
家の中で精神的に少し危なくなって独り言を言っている人のようにも見えるだろう。

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雑記   13   私と猫   猫を飼うということ-3

雑記 13 私と猫 猫を飼うということ-3

猫と暮らして一番辛いことは、その猫が死んで別れなければならない時だ。そもそも寿命が違うのだから、送ることになるのは決まっている。猫を遺して自分が先に死んで世話が出来ない心残りと比べれば、送れることが幸い、と思っているが、その死が突然で、死に方が理不尽であると、失う悲しみは筆舌に尽くし難い。

爪を切ることについては、うちの貓は従順だった。
一匹の爪を切っていると、次は誰の爪を切ってくれるの? とば

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雑記   26    7月の薪割り

雑記 26 7月の薪割り

日記。7月15日。
夜の間降り続いていた雨は朝には止み、友人から誘われていた薪割りを見に行く。
この別荘地に健康上の理由から東京を捨てて移住。彼は12年前から既にテレワークの人だった。難病を抱え、その他にも心臓も腎臓も肺も血管も目も、あまりにもあちこちそれぞれに難しい問題があり、病気自慢をしているようにも聞こえ、悪くないところを探すのが難しいくらいだが、心の在り方は常に前向きで感心する。
言葉遣い

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雑記   27   犬か猫か

雑記 27 犬か猫か

犬が好きか、猫が好きか、という話題は時々出くわすが、犬と猫は同じには語れない。

犬に価値を置く人と猫に価値を見出す人との判断の基準は平行線どころか、その二本が立体交差しているくらい違っている。

犬派か猫派か、という話題になると議論は白熱し、犬の味方、猫の味方というより、自分が犬や猫になったくらい興奮し、何とか言い負かそうとして険悪にさえなる。
犬には犬のいいところがあり、猫は猫として認めよう、

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雑記   33    Sturgeon Moon  スタージェンムーン 8月の満月

雑記 33 Sturgeon Moon スタージェンムーン 8月の満月

2020年8月4日午前1時、月齢がほぼ15.0になる頃に撮影。スタージェンムーンと呼ばれる8月の満月。

最近、毎月、満月近くになるとカーテンを閉めないで眠る。月が出ていれば、光が窓から差し込み、枕元を照らす。
初めは、意図せず、月の光が差し込んでいるのを眠りながら感じて、何て気持ちが良いのだろうと思った。そして習慣になった。
日光浴ならぬ、月光浴、と言うのだそうだ。
パワーが強いので長い時間月光

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猫日和   75   台風11号猫イワン  多分こうだったんじゃないか劇場

猫日和 75 台風11号猫イワン 多分こうだったんじゃないか劇場

飼い主が莫大な借金を抱えてしまい、返済の目処が立たず、世にはよくあることだが、夜逃げ同然で引越した。
その時、私は10歳になっていた。

「すまないね、ひとりで生きていってくれ」

飼い主は飼い猫に心を残しながらも、去った。猫を連れて行く余裕はなかった。私は誰もいなくなってしまった理由が分からず、何度も灯りのついていない家に戻ったが、飼い主は戻って来なかった。

食べ物もなく腹を空かして公園に行く

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雑記   50   不思議の国のアリスの庭の塗りかけの赤いバラ

雑記 50 不思議の国のアリスの庭の塗りかけの赤いバラ

A large rose-tree stood near the entrance of the garden: the roses growing on it were white, but there were three gardeners at it, busily painting them red.(『不思議の国のアリス』女王のクローケー・グラウンド より。Lewis Carroll)

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