見出し画像

猫日和 21 猫語☆空耳アワー

猫との会話。猫が飼い主の言葉を解するのは当たり前だが、猫から人間に語りかけることはあるのだろうか。
フランス育ちの猫なら、フランス語を、日本なら日本語を。
猫を飼う人間は、日常当然のこととして、猫を会話している。
行ってきます、を初めとして、ご飯よ、とか、待って、とか、いい子ね、とか、今日はいい天気ね、とか、その他諸々。
家の中で精神的に少し危なくなって独り言を言っている人のようにも見えるだろう。

時々Youtubeでしゃべる猫の動画が上がる。有名なところでは、黒猫しおちゃんの「おかえり~~」。「おかえり」にとどまらず、様々な場面でそれらしい対応をして、日本語で「嫌だ」とか「そう」とか「しらない」とか、返事をしているように聞こえる。
また、たいそうおしゃべりな野良猫の白黒猫が、急に話しかけてきて、「我々は寝ないんだよお」「「お風呂入りたい」「我々は・・・怪しい猫では・・・あれあれあれ」「ランランルー」と。これは字幕がついているので、そのように誘導されて、そう聞こえる、ともいえる。

タモリの「空耳アワー」では、世界の有名な歌の歌詞が、日本語として、突飛もない言葉の連続に聞こえ、その飛躍の面白さを競うコーナーがある。
スタンド・バイ・ミ―の歌い始めの「When the night・・・」という部分が「便座ない」と聞こえるとか。それは見事な聴き取りチャッチ能力で、こういうことを常日頃興味を持って追及する人には脱帽である。

猫を飼って、日常会話していると、本当に、猫は人間言語を話すのだろうか、と思うことがあった。

夜になって、布団に入る。季節が秋から冬になると、猫たちは、私の布団の中が暖かいので、肩口からそろりと入ってくる。中で温まると、あったまりました、満足、と言った様子で鼻の先をピンク色にして、出て行く。それが数匹となると、出たり入ったりの回数が多くて、眠りを妨げられることが多い。布団から出た猫は、今度は掛布団の上に乗り、それが両脇と足元だと、重石になって、私はツタンカーメンのように動けなくなる。

ある夜、布団に入った猫が気分よく寝ているところに、次の猫が入り、寝ぼけた猫が侵入者に対して怒って、私の布団の中で、喧嘩が起こった。
さすがの私も「あなた達!いい加減にしなさい」と声を上げ、「もう、明日の朝は早いのよ」と怒って、隣の納戸に避難したことがある。
納戸に布団を敷き、扉を閉め、さて寝ようとすると、扉の向こうに猫たちが並んで、ごめんなさいと言っているように聞こえた。
知らんぷりをしていると、「おかあさん」「おかああさん」「おかーーーーさん」「おかあ」「おかん」・・・と懇願が止まらない。
え?もしかして、おかあさん、って言ってる?それって人間の言葉?
これは凄いことかも知れない。
何年も暮らして、ついに日本語を意味を分かって使う猫になったのだわ。
飛び起きて、机の引き出しからカセット録音機を持ってきて、納戸に戻り、
猫たちの声を記録しようとした。

けれど、録音ボタンを押したとたん、猫たちはふっつりと叫ぶのをやめ、静寂が広がった。
さっきまであんなにみんなして声を揃えて、私を呼んでいたのに。
こちらも息をひそめ、わずかの音も逃すまいと思ったが、そのまま、時が経ち睡魔に襲われ、眠ってしまった。
翌朝、120分テープを再生してみたが、ひとことも「おかあさん」の声は入っていなかった。

本当は話せるのに、きっと猫の国の決まりで、それをしたらもう猫に国には戻れない、ということになっているのかもしれない。
残念だが、我が家の猫の日本語は、記録として残せなかった。

このことを、息子に言ったら、
「ええ?納戸で寝た?それって、押入れで寝るドラえもん以下じゃん?」
と笑われた。
私は世紀の大発見が出来るかとかなり真剣だったのだが。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?