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続ちょこっとひとこと

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故郷・神戸に戻り、今を綴るもまだまだヨチヨチのエッセイ集。
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2022年2月の記事一覧

今、マトリョーシカは何を想う

今、マトリョーシカは何を想う

1980年にはコンテナの取扱量がニューヨーク港、ロッテルダム港、香港港に次いで世界4位だった神戸港。
古くから天然の良港・大輪田泊として日宋貿易や日明貿易でも繁栄し、幕末の開港でいち早く西洋文化を取り入れる窓口ともなった。

だからだろう、神戸には各国料理が食べられる店があふれる。
それにようやく気づいたのは大学受験の頃。
地図帳を眺めていると、神戸の拡大図にいろんな国旗のマークが落ちていて、何こ

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ここに暮らす人々の、誰からの押しつけでもない自発的なムーヴメント

ここに暮らす人々の、誰からの押しつけでもない自発的なムーヴメント

10月から勤務地となった淡路島。
日頃、北端の淡路市での活動がメインで、めったに市界を越えることはないが、昨日は南の洲本市へ出かけた。

洲本は城下町として古くから島の中心で、生活に必要なものはすべて揃い、便利な町ではある。
ただ、明治以来町の繁栄を支えた国内最大規模の紡績工場が昭和の末に閉鎖され、多くの女工が行き交ったという商店街も今ではシャッターが多い。

そんな商店街の近くに〈レトロこみち〉

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デジタルはあらかじめ意図的に情報を劣化させている

デジタルはあらかじめ意図的に情報を劣化させている

先日、ドット絵をモチーフに、ギザギザがデジタルの証と記事にした。

記事中、デジタルが現実より汚いことについてまた書くと宣言したので、そろそろと思い、まずは自分の過去記事を検索したらデジタルに関する10年前のエッセイがヒットした。
(300字の短篇なので、この際読んでいただければ嬉しい)

今日はこの記事から引用しつつ、少し説明を補ってみよう。
デジタル化にもいろいろあるが、話を簡単にするために音

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3/1から始まるイカナゴ漁の豊漁を願う。近年は不漁続きでたった1日で禁漁になったりも。これまでの獲りすぎがたたったのだろう。神戸の味・イカナゴの釘煮を食べたい。
周りで高熱を発して休む人続出。しかも全員PCRは陰性だ。いったい何がはやっているのだ? 僕も扁桃腺が怪しくなってきた。

これ以上タフな葬式を僕は知らない

これ以上タフな葬式を僕は知らない

「どうすん?」
20ほどもある目が一斉にこちらを向き、僕に回答を促す。

「明日は葬式を手伝います」
しばらくの逡巡のあと、僕はそう答えた。

***

1999年、僕は東京から愛媛の山中に移り住んだ。
前職を辞し、転職雑誌で見つけたのが愛媛の村おこしだったのだ。
何度かの下見のあと、腹をくくり移住した。

赴任後しばらくは家で新生活の形を整えることに精を出した。
そしていよいよ翌日から出社という

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元町、ごちそうさま!

元町、ごちそうさま!

神戸・元町の山手に、以前からお気に入りの広東料理がある。
〈良友酒家(りょうゆうしゅけ)〉だ。

広東料理とは、中国南部の広東省の料理を総称していう比較的あっさり系の中国料理で、ツバメの巣、フカヒレなどの高級食材で知られる。
いかにも美食家を想起させる香港やマカオも広東エリアだ。

〈良友酒家〉はこれまでに何度か訪れたことがある。
オープンは平成元年と新しいが、それでも30年を越すことになる。

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これまでの道のりはきっと孤独だったことだろう

これまでの道のりはきっと孤独だったことだろう

先日、茨城からレンコンが届いた。
茨城といえばの名品だが、このレンコンには特別の思いがある。

昨年5月、ある農家の下で農業研修を受けたとnoteでもチラッと書いた。
これが実はレンコン農家・山田さん(仮名)だったのだ。

農業なんてまるで経験ないのに、いきなり難易度の高い水田で1週間泥まみれになった日々を昨日のように思い出す。
研修中に植えつけ作業はなかったが、その下準備として田んぼの草を取り、

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認めてもらえるなら、これも薬膳料理と呼ばせてほしい

認めてもらえるなら、これも薬膳料理と呼ばせてほしい

週末は料理が楽しい。

どんな料理のレシピもネットで検索できないものはない時代になった。
そういったものも参考にすることももちろんあるが、僕は過去にテレビで見たレシピをなんとなくなぞることが多い。
最初に勤めていた出版社を辞めて主夫をしていた頃は、「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」を見て夕食の材料を買いに行くのが日課だった。

昨日作ったチキンカレーも、NHKの何かの番組で見たレシピがベースだ。

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それはそうだ、僕は煌めきに引き寄せられた大型魚なのだから

それはそうだ、僕は煌めきに引き寄せられた大型魚なのだから

夜、何食べよう――

昨日、昼にオムソバが食べたくなって朝からスーパーに来たが、昼は雨の予報だったから、夜用の買い物もいっしょに済ませておきたかった。
昼もまだなのに夜を考えるのはあれこれ迷って時間がかかる。

と、前方の鮮魚コーナーにふだんあまり見かけない煌めきが見えた。
何だろうと人ごみをかき分け突進したら、鹿児島のキビナゴだ。
残り数パック、すわ逃すまじ! と勢いよく手に取りカゴに入れたが、

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移住希望者にとって実はいちばん知りたい話かもしれない

移住希望者にとって実はいちばん知りたい話かもしれない

移住の手伝いをする役に就いていたことがある。
2005年だったか、愛媛県から「移住サポーター」の役を委嘱されたのだ。
まだ移住が一般的でなく、行政も人口減に直面してようやく重い腰をあげた頃だ。

僕に白羽の矢が立ったのは、僕がまったく縁もゆかりもない愛媛に飛び込み、住み着いた移住者だったからだろう。
後に総務大臣賞を受賞することになる村おこしの事業を切り拓くのに心血を注いでいた頃だから、県からすれ

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ここ数日、カーリングやってみたい熱に冒されている

ここ数日、カーリングやってみたい熱に冒されている

カーリングが、熱い。
4年前の平昌オリンピックまではそのスポーツの存在すらしらなかったのに、今ではすっかり熱狂的な観戦者である。

残念ながら日常的になじみのあるスポーツとは言いがたい。
どんなリーグがあって、競技人口がどれくらいなのかも知らない。
もちろんオリンピック以外では観戦したこともないし、その機会もない。
もしかすると北海道では盛んなスポーツなのかもしれないが。

でもオリンピックだけで

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こうやってちゃんと包丁で削げばきれいなのか

こうやってちゃんと包丁で削げばきれいなのか

イワシといえば、安いのに栄養豊富というイメージがある。

ところが過去には不漁が続き、築地でマグロ並みのキロ5500円(1匹換算で1200円!)で取引されたことがあるという。
ふだんはキロ200円ほどというから不漁時の高値には驚くが、それでも買い手がつくほどみんな食べたい魚ともいえる。

そんなイワシをしっかり高級魚として食べられる店がある。
神戸・三宮のイワシ専門店、その名も〈いわし屋〉だ。

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僕の筆の旅はまだまだ続く

僕の筆の旅はまだまだ続く

朝、いつものように記事を書こうと思ってnoteにやってきたら、唐突にバッジが2周年を知らせてくれた。

2年ってそれなりに大変だったよな…と感慨に耽る気も失せる、あっさりしたバッジだけど。

2月にnoteを始めたことはうっすらと覚えてはいた。
2年前の元日づけで今の会社に転職し、だいたい2か月ほど経った頃に始めた記憶はあったから。
でも月末くらいだと思っていたので、今朝のバッジは不意討ちだった。

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これは日本の香りの伝統なのだ

これは日本の香りの伝統なのだ

「淡路島は日本の香りのふるさとです」

毎朝、島へ向かう高速バスの車中で聞く広告のナレーションだ。
4kmもある明石海峡大橋を神戸側から3kmほど進んだ海上で、ある線香メーカーの広告が流れ出すのだ。

『日本書紀』にはこうある。

推古三年夏四月、沈水、漂着於淡路嶋、其大一圍。嶋人、不知沈水、以交薪焼於竈。其烟氣遠薫、則異以献之。
――595年4月、大きな沈水が淡路島に漂着。島民がそれと知らずに薪

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