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せーかつ

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まいにちのららら。*・゚
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#おすすめ

好きな色、それぞれ。

好きな色、それぞれ。

プロジェクトがひと段落し
メンバー数名で、簡単な打ち上げでも、
ということになりました。

小料理屋さんで
夏めいたおばんざいをいただきながら、
私は、皆が楽しそうに話すのを
聞いていました。

おしゃべり好きが集まっている今日の会。
ひょんなことから話題は
「好きな色」の話になりました。

テンポよい掛け合いを聞きながら、
私もこころのうちで
自分の、好きな色のことを思いました。

私にもつい、

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四月には 心を輪にする演出を

四月には 心を輪にする演出を

金曜、四月から入社されたTさんの
歓迎会が開かれました。

和ふうの、小洒落たお食事処に集まったのは
同じ課に所属する、十人。
年代は色々ですが、全員が女性です。

掘りごたつの個室で、
ひと続きのテーブルに
十人が五人ずつ、向かい合うように座ります。
皆が席に着くと前菜が手早く提供され、
一杯目の飲み物が行き渡りました。

「Tさん、これからよろしくお願いします。
では、かんぱい」
上司の音頭の

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この春に、綺麗な栞をひとつ

この春に、綺麗な栞をひとつ

小説って、編み物みたい

と思います。

かぎ針を
毛糸の、ちいさな輪っかへ通し
ひとつひとつ手を動かして
糸を列へ、列を面へと仕立てていくように

選りすぐった言葉を、重ねて結んで
一行ずつ丁寧に
文章を紡ぎ、物語へと仕立ててゆく。

どちらも本当に時間のかかる作業です。

でもそうやって、手間を惜しまず
細やかに編み込まれた細工が
ひとの心を魅了し、
そのやわらかい布地が
肌をあたたかく包み込

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菜の花といちご、それから玉子焼き

菜の花といちご、それから玉子焼き

菜の花が
風に吹かれて
ゆうらり、ゆうらり、と波を打ちます。

一面の黄色。ビタミンイエロー。
花盛りを迎え、
彩度に満ち満ちた葉の花のパノラマが
目の前に広がっています。

黄色い海のように広大な光景も、
そのひとつひとつをよく見ると
それは小さな花たちの集合体。
すっくと伸びた茎先が枝分かれして
そこにいくつもの十字状の花を
ほころばせています。

今日は、近隣の町で開かれた
菜の花まつりにや

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本を「聞く」ことが好き

本を「聞く」ことが好き

深い瑠璃色の空に
一、二粒の星が
音もなく点る如月の早朝。

私は、パジャマに
あたたかい上着を羽織って
ひとり、キッチンに立ちます。
それから
携帯電話を片隅に置き、
液晶の上の再生ボタンを押して
昨晩の続きをリクエストします。

ナレーターの方の声が
シンとしていた空気の中に、
しっとり響きゆくのを聞きながら
私は、朝食の支度にとりかかります。

流れるのは
川端康成作「伊豆の踊子」。
ナレー

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お い と ま の 流 儀

お い と ま の 流 儀

たとえば小さなベーカリーで

楽しみにしていた
お目当ての商品が売り切れていたとき、
あなたは、どうされますか?

私は、以前まで
こじんまりとした商店では
何も買わずにお店を出ることに
少々きまりわるさを感じて

売り場にある商品を適当に見繕い、
買って帰ることがしばしばありました。

レジのところに
店員さんがいらっしゃる手前、
スーッと入ってきてスーッと出てゆくのは、、と
ヘンに気を巡らせて

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真っ白なノートの上に

真っ白なノートの上に

机の上には
ノートと万年筆、
カップに淹れた茜色の紅茶。
それから、読みさしの本が1冊。

そうして、栞を頼りに
本を開いたら、
私の、好きな時間のはじまりです。

万年筆にインクを十分に充填して
姿勢をととのえて
書かれている文章に目を落として。

本の中の、
美しい響きの言葉や
新鮮に感じる表現、
思わず共感する部分だったり、
心に触れた台詞を
真っ白なノートの上に
ひとつひとつ、拾い集めてゆ

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読書好きなあの子への贈りもの

読書好きなあの子への贈りもの

第一子の出産を、8月に控え
里帰りをした友人へ
郵便を出しました。

同封した
“おすすめ図書のしおり”には
こんな本を載せました。

*------------------*

○ 愛のエネルギー家事

心を健やかに整える「きっかけの言葉」に出会えますように。この本には、やさしい暮らしを送るためのヒントがいっぱい。本田亮さんが描かれている挿絵は、見ているだけでほっこりしてきます。心がすこし疲れた

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17:00  よりみちパン屋さん

17:00 よりみちパン屋さん

かるい気分転換にと
ほんのり暮れていく町を
気まかせに散歩していた時のことです。

大きな通りを折れ、
路地を少し入ったところに、ぽつんと
みかん色に灯っている窓が目に入りました。

ふつうのお家のようですが
よくよく見ると看板が立っています。
黒い板に白いチョークで書かれているのは
「本日のぱん」という文字と
英文字のメニュー。

あら、こんなところに、
隠れ家のようなパン屋さんです。

木製の

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自分の感受性くらい

自分の感受性くらい

窓を網戸にすると
足先へ、僅かにひんやりした空気が
流れてきました。
つい先日までのハッキリした夏が
少しずつ姿を消して
秋の気配が滲みはじめた
過ごしやすい夜です。

リィン、リィンと
遠くの暗がりから聞こえる、鈴虫の声。
さざ波のような、透明な音が
耳当たりよく吹き抜けていきます。

思うようにいかないことばかりで
心が埋もれそうになる毎日。

足元に扇風機のよわい風をあて、
ソファの背もたれ

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花に 音楽を添える 時

花に 音楽を添える 時

静かな部屋にひとり、
ソファに体育座りして
肌なじみの良いブランケットにくるまっている。

午前8:20。

少し疲れたので、今日は
お休みを取った。
体調崩壊前の予防的休暇取得である。
大切なお休み、なにをしようか。

部屋の中を見回すと
外から注ぐ、白くて淡い光が
窓辺に広がっていた。

今日は、天気がいいらしい。



先日お家に迎えたアネモネの苗は
あれから次々に新たな蕾をつけ、
ぷっく

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坂 の 上 の う つ わ 屋 さ ん

坂 の 上 の う つ わ 屋 さ ん

小高い坂の上にあるうつわ屋さんは
とても可愛らしい佇まい。

真っ白な壁に濃いブルーの屋根、
木製のドアと大きな窓。
アトリエとお店がひとつづきになっています。

のどかな街にぽつんと現れる
この可愛い器のお店を訪れたのは
まだ暑さの残る秋の日のことでした。

きっかけとなったのは
SNSで見かけた、ひとつの器。

ポテッとした丸みのあるフォルム。
正円に近い形の取っ手。
注ぎ口の、チュッととかが

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◇ ふたりのチーズトースト日和

◇ ふたりのチーズトースト日和

窓ガラスにやわらかく
水滴がつくような、寒い朝。

彼とふたり、台所に並んで
チーズトーストをつくる。

今日は『のび〜るチーズ選手権』。

昨日の夜、スーパーで
めいめいに「これぞ」と思うチーズを選出。

彼は森永製菓のモッツァレラチーズで
私は雪印メグミルクのとろけるスライス7枚入。

「チーズを長くのばせた方の勝ち」
たった一つの簡単ルール。

彼は食パン2枚に
スライスしたモッツァレラチー

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