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散文詩

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#自分自身

ハイボール 《詩》

ハイボール 《詩》

「ハイボール」

小さいけれど確かな幸せって

人は見逃してしまう

夏の夕暮れの風が心地良かったり

あの娘が笑いかけてくれたり

確か前に 

私は不適切な人間だと 
あの娘は話してた

其れは社会に対してであり 

また自分自身の心に対して

上手くコントロール出来無いんだ 

そう言って俯いた

居場所がわからないと

だったら此処に居れば良い

此処が君の居場所であり
僕の居場所だよ

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言葉 《詩》

言葉 《詩》

「言葉」

非調和性を帯びた不協和音と

トランス状態に似た
微かではあるが確実な狂気

意識と無意識の境目が手招きをする

僕は半円形の世界を見ていた 

其れはただ

見る必要性に迫られたからで

本当に見たいから

見ていた訳じゃ無い

いつしか僕は
現実では無い世界の中に

自分の見たいものを

自分自身で見つけ出した

其処には僕と個人的に

結びついているとしか思えない

そんな言葉が

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静脈 《詩》

静脈 《詩》

「静脈」

時間が不規則に揺らぐ

僕が心の中の牢獄に

閉じ込められている事を

誰も知らない 

其の牢獄を出る事は 簡単だ

自分自身の意志で出てゆけば良い

鍵をかけたのも
鍵を開けるのも全ては自分自身

周りの声達は

もう僕に話しかける事を辞めていた

僕は誰にも

見る事の出来ない風景を睨みつける

其処には枯渇した水脈がある

僕が解き明かすべき暗号を
君は持って居る

現実と仮説

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月明かり 《詩》

月明かり 《詩》

「月明かり」

満月がくまなく街を照らす夜

僕は自分自身が
失われるべき場所のドアを開けた

その場所に君が

閉じ込められている事を

知っていたから

君は残された短い命を慈しむ様に

詩を書いていた

その事だけは僕には 
はっきりとわかっていた

その場所には僕達ふたりしか居ない

そのドアは一方向にしか開かない

僕等は

正しく人を愛する事が出来なかった

そしてまた

自分自身を正

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冬の月 《詩》

冬の月 《詩》

「冬の月」

死がふたりを分かつまでは…

そんな言葉を何処かで聞いた

冷気を含んだ丘からの風が
僕の前髪を揺らす 

空は灰色の雲に覆われ

静かに雨が降り始めた

大きくて白い冬の月を見たのは

いったい いつだったろう 

思い出せない

僕は

其の小説を書きあげてはならない

其れは未完成で無くてはならない

姿形を持たない

観念的な象徴の中にだけ

物語は生きている

其れを具現化

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左利きの彼女 《詩》

左利きの彼女 《詩》

「左利きの彼女」

濃密な空気の塊に雨の予感がした

もう時間が無い 

僕は高く茂った 

緑の草を掻き分けて  

綺麗な湖へと向かう 

野生の花の匂いと
幻想的なオルガンの音

ある時点で僕の感覚が

内圧と外圧に押し潰され 

其の接地面にあったはずの感情が

崩れ始め痛みと喜びを失った

綺麗な湖の辺りには
大きな木があって

その下に白いベンチがある

其処に君が居る 

その事だけ

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月の南 星の下 《詩》

月の南 星の下 《詩》

「月の南 星の下」

辛い時には幸せなふりをするの 

君の口癖

僕は瞳を閉じ耳を済ませ 

其処にあるはずのものを思い描いた 

ほんの少しの間だけ
手を握り合っていた

僕は世界に近づこうとしていた

近づきたかった 

その普通と呼ばれる世界に

僕は自分が自分自身であり

君は君自身である 

他の誰でも無い事に

不思議な安心感を覚えていた

彼等の創り出したものは いつも

僕や君を

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Yes Sir 《詩》

Yes Sir 《詩》

「Yes Sir」

目の前にある現実を離れ夢想に耽る

其れは僕にとっても君にとっても

別の世界に通じる秘密の扉だった

その扉を開くのは自分自身の想像力

上手く強く想像する事が出来れば

その扉は開き

現実から遠ざかる事が出来る

其れが生きて行く為に
欠かせない必要な事なの

そう彼女は僕に微笑みながら囁いた

僕は彼女の瞳に

自分自身の反映を見る事が出来た

時には傲慢で身勝手で

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ジムビーム 《詩》

ジムビーム 《詩》

「ジムビーム」

雨上がりの空は

まだ灰色の雲に覆われ

地面は黒く冷たく濡れたままだった

他人と比較する事の無意味さを知る

自分自身の中にある

淀みなき流儀がメッセージを持つ

僕が感じていた乾きと刹那 

形を変えて行く雲

沈黙が旋律の様に舞い降りて来る

君は君自身が世界にある何かに

きっちりと結び付いている
証を探していた 

此処は単なる通過点であり

目的地へ向かう階段だと

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核 《詩》

核 《詩》

「核」

誰かの意見に

対抗出来るような意見も人格も

持ち合わせていない僕は  

ただうなずく事しか出来なかった

時には誰かの意見を借用して

さも自分自身の考えであるかの様に
振る舞っていた

自分の価値観を持たず 

いつも 

他人の視点と 
尺度を借りて来なければ

何ひとつとして

判断出来ない人間だった

他人の目に良く映る僕の形を

自分の中に創り出していた

人畜無害を装い

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最終章 《詩》

最終章 《詩》

「最終章」

其処に君が居ると

思い込むんじゃ無くて

其処に君が居ない事を

忘れてしまえばいい

それが僕の恋の始まりだった

僕等を隔てる
距離や周りの雑音は消え去り

僕は常に君を感じる事が出来た

遠くに輝く星はいつも

僕の手を伸ばした少し先にある 

決して触れる事の出来ない虚しさに 

押し潰されそうになっていた

数々の記憶の中から

質の良いものだけを

セレクトして再生した

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小さな世界 《詩》

小さな世界 《詩》

僕等は小さな世界の中に居る 

痛みと苦しみが
歪み堕ち螺旋を描く

自分自身の中に

上手く位置付ける事が出来ないまま

相手を傷付けない様に 

そしてまた
自分も傷付かない為に

明日を変えるには
今日を変えなくちゃ

今日を変えるには
今を変えなくちゃ 

そう誰かが言った

わかってる  

わかってるよ だけど

何処へも行けない僕は 

何ひとつ変える事なんて
出来ないままで

ベッ

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