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【読書ノート】『「妹」という祝福』(『家族シアター』より)
『「妹」という祝福』(『家族シアター』より)
辻村深月著
主人公(私:亜希)には1こ上の姉(由紀枝)がいる。
由紀枝は真面目だ。そして、親の言うことをよく聞いて、習い事も、成績も良い。そして、何より「イケてない」。「私」は由紀枝ことを馬鹿にしていた。そんな姉とは、当然仲はよく無い。由紀枝のようにはなるまいと、「私」は、ファッションを研究したり、髪型を工夫したり、明るくて、中学では、主流を標榜して
【読書ノート】『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら』
『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら』
汐見夏衛著
反抗期真っ只中の、中学2年生の主人公(加納百合)が、親子喧嘩で飛び出して、防空壕跡地に入っていくと、昭和20年の終戦前にタイムスリップするところから物語は始まる。
戦時中の日本で、二十歳の特攻隊員佐久間彰に恋するという物語。
物語の主題は何か?
戦争の虚しさを恋愛感情を通してより、リアルに表現するということなのだと思った。
女子中学生に
【読書ノート】『豪奢luxe 』(『常設展示室』より)
『豪奢luxe 』(『常設展示室』より)
原田マハ著
主人公の下倉紗希は、何年もその画廊に通い詰めて、ようやく就職することができた。
バリバリ仕事に取り組んでいた時、クライアントであるイケイケのIT企業の社長に見そめられて、彼の愛人になる。彼はお金にモノを言わせて高級ブランド品で、紗希を飾りつける。紗希は、常に待機していることが求められて、画廊の仕事を辞めることを迫られる。紗希もあっさり画廊を
【読書ノート】『自転しながら公転する』
『自転しながら公転する』
山本文緒著
中卒フリーターで元寿司職人の貫一と高卒でアパレルブランドショップの契約社員の都の出逢い、別れ、再会の物語。
・自転しながら公転するということはどういうことか?
個人や社会が常に変化し続けるということ。自転は個人の内面的な変化や成長を指し示し、公転は社会や環境の中での関係や立場の変化を示している。
この概念は、個人の発展や社会の変革に関連する哲学的なテーマ
【読書ノート】『チャーリーパーカー・プレイズ・ボサノヴァ』(『一人称単数』より)
『チャーリーパーカー・プレイズ・ボサノヴァ』(『一人称単数』より)
村上春樹著
モダンジャズの代表のチャーリー・パーカーは、天才と言われながら、晩年、薬漬けになって廃人の様に亡くなったとされているのだけど、実は、秘蔵のアルバムがあったという妄想の不思議な世界の物語。
モダンジャズとボサノヴァの違いは?
ボサノバはリズムを強調しない静かな8ビートの特徴がある。ボサノバの基本的なリズムはギターで刻
【読書ノート】『ラーゲリより愛を込めて』
『ラーゲリより愛を込めて』
辺見じゅん著
一言で言えば、
第二次世界大戦後のシベリアで日本人捕虜たちは過酷な環境で労働させられる。ロシア語が堪能な山本幡男は帰国の希望を持ち続け、仲間を励ます。幡男は終戦後帰国することができず、シベリアで咽頭癌で、なくなる。そして、幡男の遺書は、日本にいる幡男の家族に伝えられるという話。
インテリな幡男が、書き記す遺書は、捕虜仲間たちが、手分けしてそれぞれの記憶
【読書ノート】『雨上がりの花』(『ギフト』より)
『雨上がりの花』(『ギフト』より)
原田マハ著
「私」の先輩藤田さんは、仕事ができる。自分にも厳しいが、後輩にも厳しい。ところが、藤田さんは、離職することになった。仕事ができる彼女は、ヘッドハントされたのだろうと噂されていた。
彼女の離職で、「私」は内心ほっとしていた。そして、藤田さんの後任としての地位を引き継いだのだった。出て行く藤田さんには、最早何も感じなかったのだけど、実は、彼女の離職は
【読書ノート】『ミツザワ書店』(『さがしもの』より)
『ミツザワ書店』(『さがしもの』より)
角田光代著
主人公(ぼく)は、サラリーマン作家。ある文学賞に作品を応募したら、選考で選ばれたところから物語は始まる。
受賞時のインタビューの時、受賞の喜びを誰に伝えたいかという質問に、本当は、ミツザワ書店の店主とこたえたかったのだけど、無難に両親と言ってしまった。
ミツザワ書店は、高齢のおばあさんが、一人でやっている田舎の本屋だ。様々な本が無造作に積み
【読書ノート】『白夜行』
『白夜行』
東野圭吾著
大阪の廃墟ビルで質屋を経営する男性が殺害された。被害者の息子、桐原亮司と容疑者の娘西本雪穂には、不可抗力から、それぞれに過ちを犯してしまう。
その過ちに漬け込でくる裏社会の人々の中で、静かに、抵抗しながら、表社会への復帰を試みる。
盛り沢山な、悲劇。登場人物がそれぞれ非常に魅力的で、物語に惹き込まれる。
罪を意識した者が、世の中生き抜いていくために、そして、お互いの
【読書ノート】『マイホーム』(『この世の喜びよ』より)
『マイホーム』(『この世の喜びよ』より)
井戸川射子著
非常によくわからない物語なのだけどね。
芝川(主人公)という主婦は、荒川という主人公の旧姓の分譲住宅の販売員から、新築戸建てのセールスを受けるところから物語は、始まる。販売員の荒川さんは、主人公(芝川)の旧姓であり、かつての自分が、投影されているようだ。
荒川さんは、誰もが憧れるとされる新築戸建てこそが、幸せを象徴するものとして、芝川に体