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もう一回読むやつです

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もう一回は何度でも訪れる
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#エッセイ

これからは自分の足で(ローファー)

これからは自分の足で(ローファー)

お気に入りだったローファーの靴底が、とうとう剥がれた。

ジェフリーキャンベルのパールヒールローファー。

甲と踵にパールがずらっと並んでいて、両足の合計でなんと“20個もあるの”(cv アリエル)。
うっかりイヤリングや指輪にパールのあるものを合わせてつけてしまった日には、全身パールだらけになってしまう。でも私のスタイルは「宝石よりパール」なので、自分を象徴するものとしても気に入っていた。

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棘には、棘を(6/9)

棘には、棘を(6/9)

6/9(日)10:00。

職場の先輩が「前にも1回教えたんだけど〜」と言いながら初めて聞く業務の説明をしてくる。以前にも全く同じことがあり、その時は「俺が忘れてるのかもしれないな」と思えたが、今回教えてもらった業務内容は少し特殊だったため、一度聞いていたとしたら忘れるわけがなかった。

めちゃくちゃ言い返したかったけれど、今の立場で歯向かってしまうと自分にとって不利益な気がしたから〝仕事を2回

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僕は母が泣いているのを見たことがない

僕は母が泣いているのを見たことがない

同世代に「母親」が増えた。
30代だ。当然のことだと思う。

「子供を風呂から上げたあとあまりの寒さと子育ての辛さで涙が出てきた」
「子連れで買い物に行ったら一杯一杯になってしまって泣きながら帰った」
そんな話を彼女たちから聞くことがある。

そうか、母親だって辛かったら泣いたりするよな。
そんな当たり前のことに気付かされる。

そしてふと思う。
僕は自分の母親が泣いているのを見たことがない。

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パートナーとの話

パートナーとの話

 愛について相当長い間考えていたし、相当長い間悩んだ、と思う。Aはアロマンティック/アセクシュアルで、つまり恋愛感情も性的欲求も持たない人だ。私の周りにはクィアの友人が数人いて、ゲイセクシュアルやバイセクシュアルの友人と恋バナをして生きてきた。が、恋愛自体に感情が向かないというのはAが初めてだ。そんなAを一目惚れで好きになってしまった私は一体どうするのが正解だったのだろうか。今でも答えはわからない

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京都でパン屋さんを巡った話

京都でパン屋さんを巡った話

【京都でパン屋さん巡りをしてきたことを自慢しているだけの雑文】

「京都パン巡りをしたい」

 名古屋在住の友人からそんな要望が届いたのは、3月下旬のことであった。曰く、テレビで特集が組まれていたらしい。京都がパンの激戦区だということを、私はそのとき初めて知った。
 半分に切って分けたらいろんな種類が食べられるし、その分たくさんのお店を回ることができる。キッチンばさみとジップロックは必須だねと盛り

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関係につける名前なんて問題にならないぐらいの、あなたなのだ。――「ことぱの観察 #15〔友だち(訂正)〕」向坂くじら

関係につける名前なんて問題にならないぐらいの、あなたなのだ。――「ことぱの観察 #15〔友だち(訂正)〕」向坂くじら

詩人として、国語専門塾の代表として、数々の活動で注目をあびる向坂くじらさん。この連載では、自身の考える言葉の定義を「ことぱ」と名付け、さまざまな「ことぱ」を観察していきます。

友だち(訂正) 三十になろうかという秋の夜、「お友達になりたいです」と言われた。この、もっぱら人づきあいが苦手で、友だちの少ない、そして「友だち」という語のうまく使えない、わたしが。そうメッセージをくれたのは同年代の女性で

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父、30歳こえた私と手を繋ぎたい理由

父、30歳こえた私と手を繋ぎたい理由

「もう、今日くらいしかないだろう」

 私の父はわかりやすい。動きを見たり、表情を見たりすれば一発である。何度も窓の外に目をやったり、もう朝に掃除をしたはずの場所を何度も布巾でこすっている。ぼんやりしているふりをして、私の方に目線を向けているのがばればれすぎて可笑しくなってしまう。

「しばらく一緒に出かけられないかもしれないしね」

 そう気恥ずかしそうに私は答えてしまった。もっと、孝行を伝えた

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そのための春

そのための春

 自転車がパンクした。家からちょっと走ったところで後輪からパンッという音がして、ペダルを漕ぎ出してからついに「ああ、やっぱりパンクか」と現実を受け入れた。
 買ってからまだ三ヶ月も経たないが、空気が抜けてしまったのだろうか。空気入れを借りるため、近くの自転車屋へと駆け込んだ。

 新代田の近くの商店街にあるサイクルショップ。その店先におばちゃんがひとり佇んでいて、「あのう…」と小さく声をかけた。

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卒業袴

卒業袴

小学生の卒業式に袴を着ようなんてこと、一体いつごろ、どこの誰が思いついたのだろう。

個人的に、桜の御所車の宝尽くしの撫子の振袖に藍の浅葱の紫の袴を合わせたお嬢様方が、桜待つ弥生の街を華やかに和やかに歩く様を見ることは、大変好ましい。

でも12歳か、早生まれなら11歳の年端もゆかない女の子たちが袴姿で卒業式というのは、流石にちょっとやりすぎではないかしらん。それも普通の、公立の小学校で。

そう

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できたてのドーナツは温かい

できたてのドーナツは温かい

大学生の時、某ドーナツ店でアルバイトをしていた。
家の最寄り駅近くで、子供の頃から利用したことのある店舗だったので、とりあえず応募したら、受かったので何となく働き始めた。
生まれて初めてのアルバイトだった。

ドーナツはかわいらしいイメージがあるが業務内容は意外と厳しかった。
通常の商品に加えて、期間限定の商品など、ドーナツの数がとても多い。
それに加え、ドリンクや飲茶などの作り方も覚えなければい

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漬ける楽しみ

漬ける楽しみ

ここ数年、少しずつ「漬ける」ことを楽しんでいる。まず一つが梅干し。今年は3回目で、今までで1番おいしくできた。少し寝かせると、もっとおいしくなるんだろうけど、着々と食べてしまっている。そして今年は梅酢がたくさん出たから、茄子をしば漬け風にしたり、新生姜を紅生姜風に漬けてみた。

この新生姜の梅酢漬け、とってもおいしくて今年2回目を漬けた。新生姜を切って軽く茹でて、梅酢を入れて一晩くらい漬けるだけ。

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ほんとうは自炊したかったのかもしれない話

ほんとうは自炊したかったのかもしれない話


食欲がおかしいなんだか食欲がおかしいな、と気づいたのは昨年10月末ごろのことだった。

ここ数年は体質改善につとめており、その甲斐あってか、貧血やむくみも解消できた。いちばん太っていた時期からくらべると、なんだかんだで7kgほど落ちた。やせたかったというよりは、慢性的なだるさや身体の重さをなんとかしたかった。
体質改善をはじめるにあたって参考にした食事法にのっとって、自炊のメニューや買いものの内

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平日にケーキ (12/29)

平日にケーキ (12/29)

雑記新年早々アイコン変えました。(正確に言うとめっちゃ昔使ってたアイコンに戻しました)

1年間で名前3回くらい変えてるし、アイコンはその倍くらい変えてる気がする。記事にも統一感なくて「ほんとすまんねえ〜」という気持ちです。

こんな変動的な僕ですが、2024年もよろしくしてくれたら幸いです。ハッピー龍イヤー〜

12/29(金)恋人と遊んだ。

地元で恋人と遊ぶ時は、11:30に集合ということが

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さもないごちそう 「はじめてのシュトーレン」

さもないごちそう 「はじめてのシュトーレン」

買って食べるものだと思っていたシュトーレン。
毎年決まったお店で買うわけでも、どこのが美味しいとか知ってるわけでもないのだけど、やっぱりこの時期になると食べたくなって、見つけたときに買ったり、買ってもらったりして食べていた。
去年ふと、「これ自分で作れるんかな?」と思い調べたところ、初見でわりと手間がかかるレシピにあたってしまったようで、自作することは光の速さで諦めた。

たけどやっぱり世の中がシ

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