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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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2023年4月の記事一覧

ファーマゲドン 安い肉の本当のコスト (P・リンベリー/I・オークショット)

ファーマゲドン 安い肉の本当のコスト (P・リンベリー/I・オークショット)

(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)

 レイチェル・カーソンの『沈黙の春』は、以前から読んでおこうと思っていた本なのですが、そちらより先に本書を手にとってみました。

 今、世界的に拡大している「農業・畜産・漁業の工業化」がもたらす地球規模の影響について、著者たちのリアリティ溢れる警鐘が興味を惹きます。

 著者が特に注目して取り上げているのは「第一次産業の工業化」ですが、この急

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プレップ 法学を学ぶ前に (道垣内 弘人)

プレップ 法学を学ぶ前に (道垣内 弘人)

(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)

 友人の薦めで、中学校からの共通の友人が書いた本を読んでみました。(こういうことでなければ、手に取らないジャンルの本です)

 薄ぼんやりと思い出す今から35年(今からだと45年)以上前、当時大教室で星野英一教授から教わった法学の入り口に改めて立ち戻ったような感覚ですね。ただ、私の場合は、情けないことに、それ以降、「入り口」から半歩ぐらい中に

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〈持ち場〉の希望学: 釜石と震災、もう一つの記憶 (東大社研/中村 尚史/玄田 有史)

〈持ち場〉の希望学: 釜石と震災、もう一つの記憶 (東大社研/中村 尚史/玄田 有史)

(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)

 いつも行く図書館の新着図書の棚で目についたので手に取ってみました。
 以前、編者のひとり玄田有史氏の著作で「希望のつくり方」という本を読んだことがあったので興味を惹いたのです。

 本書の内容は、釜石を舞台にした東日本大震災の記憶を社会学的観点から記録したものです。

 今般の大震災で釜石も大きな被害を受けたのですが、その津波被害を少しでも

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小説日本婦道記 (山本 周五郎)

小説日本婦道記 (山本 周五郎)

(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)

 会社の同僚の方のお勧めでお借りして読んでみました。こういう形で手に取る本は、通常の私の視野の外にあるものなので、楽しみも増しますね。

 1958年出版の本ですが、タイトルの「婦道」という言葉は目新しく印象的です。
 一つひとつの物語は、それぞれ閑かでありながらも、抑制されたサスペンスのような緊迫感があります。
 作者が舞台としている封建的

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里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (藻谷 浩介)

里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (藻谷 浩介)

(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)

 話題になっている本ですね。タイトルからして耳慣れないもので、興味をそそられます。

 本書において、著者の藻谷浩介さんが昨今のわが国の閉塞感に満ちた社会状況を俯瞰する中で、その元凶として最も懐疑的なテーゼとして捉えているのが「マネー資本主義」です。

 この近年来先進諸国を中心とした世界の経済政策をリードしその破綻により大きな経済危機を招い

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手にした人だけが次の時代に行ける黄金のボタン (小楠 健志)

手にした人だけが次の時代に行ける黄金のボタン (小楠 健志)

(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)

 自分の興味を惹いた本だけ読んでいると、当然偏りが出てきます。もちろん好きでもない本を読むのは苦痛以外の何物でもないのですが、とはいえ少しでも手に取る本の幅を広げる方法のひとつが、外から与えられた本を読んでみるというやり方ですね。

 そういう意味では、本書は “黒船”。レビュープラス(当時)というブックレビューサイトから献本していただいたの

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仕事に効く 教養としての「世界史」 (出口 治明)

仕事に効く 教養としての「世界史」 (出口 治明)

(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)

 ちょっと話題になっている本です。以前の同僚の方のお薦めでもあったので、読んでみました。

 著者の出口治明氏は、ライフネット生命保険株式会社会長兼CEO、歴史の専門家ではありませんが、稀代の読書家としても有名な方です。

 本書は、その出口氏が、人類の長い歴史の中から10のトピックを取り上げ現代を読み解くヒントを解説したものです。
 具体的

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被災弱者 (岡田 広行)

被災弱者 (岡田 広行)

(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)

 「決して忘れてはいけない記憶」というのも正しくないでしょう。
 それは、まだ「過去のもの」になっていないからです。まだまだ、多くの被災者の方々にとっては “現在進行形” なのです。

 本書では、未曾有の被害をもたらした東日本大震災の復興から取り残されている人々の今の姿(注:2015年時点)や、被災者支援のために、今なお様々な分野で尽力して

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進化とは何か :ドーキンス博士の特別講義 (リチャード・ドーキンス)

進化とは何か :ドーキンス博士の特別講義 (リチャード・ドーキンス)

(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)

 新聞の書評で紹介されていたのですが、最近ちょっと「生物の進化」に興味をもっているので手に取ってみた本です。

 著者のリチャード・ドーキンス博士は「The Selfish Gene(『利己的な遺伝子』)」という著作でも有名なイギリスの進化生物学者です。

 本書は、そのドーキンス博士が、1991年、英国王立研究所が子供たちのために開催してい

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増補 八月十五日の神話 : 終戦記念日のメディア学 (佐藤 卓己)

増補 八月十五日の神話 : 終戦記念日のメディア学 (佐藤 卓己)

(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)

 8月15日が「終戦記念日」とされていることに、私は何の疑問も感じていなかったのですが、著者の探究はそこから始まっています。

 そもそも8月15日が「終戦記念日」と定められたのは終戦まもなくではありませんでした。

 そして、確かに「8月15日」はいわゆる天皇による玉音放送があった日ではありますが、日本がポツダム宣言を受諾したのは「8月14

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自分のアタマで考えよう (ちきりん)

自分のアタマで考えよう (ちきりん)

(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)

 先日、稀代の読書家である出口治明氏の著作「本の「使い方」 1万冊を血肉にした方法」を読んだのですが、その中で出口氏がお薦めの本として紹介されていたので手に取ってみました。

 内容は、タイトルどおり「自分の頭で考える」ための具体的ヒントを分かりやすく語ったものです。

 まず、著者のちきりんさんは、「考える」ための “知識/思考の意味づけ”

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本の「使い方」 1万冊を血肉にした方法 (出口 治明)

本の「使い方」 1万冊を血肉にした方法 (出口 治明)

(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)

 ライフネット生命の経営者といえば、岩瀬大輔氏の著作は読んだことがありますが、出口治明氏の本は初めてです。ちょっと気になっている方なので期待して手にとってみました。

 さて、著者にとって「本」は、新しい知識を俯瞰的・総合的に身につける最大の源でした。
 他方、毎朝の「新聞」からも有益な情報を得ているとのことですが、著者の説く新聞の役割は「価

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通訳日記 ザックジャパン1397日の記録 (矢野 大輔)

通訳日記 ザックジャパン1397日の記録 (矢野 大輔)

(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)

 サッカーは大好きです。とにかく面白いサッカーを見るのが好きです。その点、日本代表のスタイル(注:2015年当時)は正直あまり好きではありません。ワクワクしないんですね、
 日本代表にはロナウジーニョもズラタン・イブラヒモビッチもいないのです。もちろん「監督のチーム構想に応じた代表選出」がベースにありつつも、やはり素材としての選手のタイプから

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「自分」の壁 (養老 孟司)

「自分」の壁 (養老 孟司)

(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)

 久しぶりの養老孟司氏の著作です。
 大ベストセラーだった「バカの壁」から、もう11年も経つんですね。本書でも、歯切れのいい “養老節” は健在です。
 ここでは、その中からちょっと気になった指摘を、覚えとして書き留めておきます。

 まずは「日本のシステムは生きている」という章から、日本における「思想」の位置づけについて語っているくだりです

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