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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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2023年1月の記事一覧

波のかたみ ― 清盛の妻 (永井 路子)

波のかたみ ― 清盛の妻 (永井 路子)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 通勤電車の中で読む文庫本が切れたので、自宅の書棚から取り出してきました。

 先年のNHK大河ドラマは「平清盛」ですが、本書の主人公はその妻時子。
 武家としての平氏というより、公家としての平氏の盛衰を清盛の妻の目線で辿る物語です。

 著者の語る「歴史の綾」の深遠さ、平治の乱の後、頼朝が許されて配流される日のことです。

 清盛を中心とし

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ある老学徒の手記 (鳥居 龍蔵)

ある老学徒の手記 (鳥居 龍蔵)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 著者の鳥居龍蔵氏は明治期の考古学者・民族学者です。
 小学校を中退し、その後独学で必要な語学や専門の人類学を学んだとのこと、そういった厳しい環境下においても国際的な業績をあげた在野の研究者の自伝です。

 鳥居氏の最初の強烈なエピソードは、尋常小学校を止め独習を始めるときです。そのあたり、鳥居氏はこう述懐しています。

 10歳に満たない年

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ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉 (リンダ・グラットン)

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉 (リンダ・グラットン)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 友人の評価が高かったので読んでみました。
 将来の“働き方”を問う内容です。

 著者の主張のスタートは、「これからの世界は『産業革命』以上の変化に直面する」という認識です。そして、その変化に伴い人々の「働き方」も大きく様変わりすると指摘しています。

 これら5つの要因は、漫然として受け入れると私たちの将来を暗鬱たるものに貶めてしまいます

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京都の平熱 哲学者の都市案内 (鷲田 清一)

京都の平熱 哲学者の都市案内 (鷲田 清一)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 「京都」というコトバには独特の響きがありますね。

 本書は、京都生まれの哲学者鷲田清一氏による「京都の町」「京都の人」をテーマにしたエッセイ風の読み物です。京都に馴染みのない私にとっては、とても興味深いくだりが満載でした。

 まず、私などは、「京都」といえば「日本の古都」というイメージをいの一番に思い浮かべますが、著者によると、それは「

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弁護士だけが知っている 反論する技術 (木山 泰嗣)

弁護士だけが知っている 反論する技術 (木山 泰嗣)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 酷暑続きで、しっかりしたものを読む元気がなかったときに読んだ本です。How Toものはあまり好きではないのですが、気楽に読めるだろうと手に取ってみました。

 「反論する技術」とのタイトルですが、正面からのストレートな「反論」方法だけではなく、「質問で返す」「話題を変える」といった変化球も紹介されています。
 また、正しい反論の前提となる「

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光圀伝 (冲方 丁)

光圀伝 (冲方 丁)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 冲方丁氏の小説を読むのは、ベストセラーになった「天地明察」に次いで2冊目です。

 今回の主人公は「水戸光圀(黄門)」。
 水戸黄門といえば東野英治郎さんの姿をいの一番に思い浮かべてしまう世代ですが、本書ではどんな人物として描かれているのでしょうか。

 まだ光國が若いころ、宮本武蔵と沢庵に邂逅したシーンの描写です。
 このころは、如何とも

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日本人が「世界で戦う」ために必要な話し方 (北山 公一)

日本人が「世界で戦う」ために必要な話し方 (北山 公一)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 レビュープラスというブックレビューサイト(当時)から献本されたので読んでみました。

 これもビジネス・コミュニケーションをテーマにした実践的How to本です。

 著者の北山公一氏は日本の金融機関を経て、ヨーロッパ系のグローバル企業で15年間マネジャーとして従事。本書では、その実体験に基づいた価値観の異なる相手に対するコミュニケーション

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伝え方が9割 (佐々木 圭一)

伝え方が9割 (佐々木 圭一)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 とても評判になっている本なので、手にとってみました。
 コミュニケーションをテーマにした実践的なHow To本です。

 著者のアドバイスは2つ、第2章 「ノー」を「イエス」に変える技術 と第3章 「強いコトバ」をつくる技術 で開陳されています。

 まず、「ノー」を「イエス」に変えるエッセンス。

もうひとつ、「強いコトバ」をつくる技術は

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老荘思想の心理学 (叢 小榕)

老荘思想の心理学 (叢 小榕)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 ちょっと前に、加島祥造氏の「荘子 ヒア・ナウ」を読んだのですが、それに続く“道家入門”的な著作です。
 巷間で耳にする老子・荘子を元とした言葉を材料に、その背後にある思想をわかりやすく解説していきます。

 ここでは、いくつかの「老荘のことば」とそれにまつわる著者の解説・コメントの中から、ちょっと気になったものを書き留めておきます。

 ま

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奇跡の営業 (山本 正明)

奇跡の営業 (山本 正明)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 レビュープラスというブックレビューサイト(当時)から献本されたので読んでみました。

 対人営業の実践的How to本です。

 40歳過ぎまで技術職だった著者は、家庭の事情から生命保険の営業マンに転職しました。そして試行錯誤の末、「お客様からの紹介を最重要視する」という営業姿勢を徹底することにより、素晴らしい営業成果を上げ続けることができ

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電話交換手たちの太平洋戦争 (筒井 健二)

電話交換手たちの太平洋戦争 (筒井 健二)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 8月、毎年この時期には「戦争」関係の本を1冊は読むようにしています。
 今回選んだのは、元NTT職員の方が書いたドキュメンタリーです。

 本書のプロローグには、こう記されています。

 主人公はこの“電話交換手”たち。
 本書では、全国各地の彼女たちをめぐる11のエピソードが紹介されていますが、それらの中から印象に残ったくだりを書き留めて

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二重らせん (ジェームス.D・ワトソン)

二重らせん (ジェームス.D・ワトソン)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 先日読んだ「知の逆転」のインタビューにも登場したジェームス.D・ワトソン博士の有名な著作です。

 DNAモデルの発見経緯についてはいろいろなエピソードが世の中的にも語られていますが、本書はまさに当事者の筆によるドキュメンタリーです。
 歴史的発見を競う科学者間の赤裸々な絡みやワトソン博士自身の心理的な葛藤等がリアルに記されていて、なかなか

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ずる ― 嘘とごまかしの行動経済学 (ダン・アリエリー)

ずる ― 嘘とごまかしの行動経済学 (ダン・アリエリー)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 ダン・アリエリー氏の本は、以前「予想どおりに不合理」を読んでいます。最近はやりの行動経済学の入門書としてはなかなか面白かったですね。

 本書は、不正と意思決定をテーマにした同じ流れのものです。

 まず、著者は、本書での立論における基本的仮説を設定します。

 この二つの動機は相容れないものですが、私たちのもつ「認知的柔軟性」という能力は

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世界の経営学者はいま何を考えているのか ― 知られざるビジネスの知のフロンティア (入山 章栄)

世界の経営学者はいま何を考えているのか ― 知られざるビジネスの知のフロンティア (入山 章栄)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 ちょっと評判になっている本なので手にとってみました。

 国際的な経営学の興味がどこにあるのか、米ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授(当時)の入山章栄さんがライトなトークで紹介していきます。
 とても読みやすい内容ですが、改めて「なるほど」と思う点が数多くありました。

 その中の一つが「ポーターの競争戦略論」を取りあげているくだりで

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