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弁護士だけが知っている 反論する技術 (木山 泰嗣)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 酷暑続きで、しっかりしたものを読む元気がなかったときに読んだ本です。How Toものはあまり好きではないのですが、気楽に読めるだろうと手に取ってみました。

 「反論する技術」とのタイトルですが、正面からのストレートな「反論」方法だけではなく、「質問で返す」「話題を変える」といった変化球も紹介されています。
 また、正しい反論の前提となる「相手の意見理解」ための方法として、「言葉の定義の明確化」「問題点の整理」「争点の設定」等の重要性にも言及しています。
 このあたりは、奇を衒ったものではなく至極正論ですね。

 議論は、まさに自分自身が当事者である場合もありますが、他人の「代弁者」という立場で関わる場合もあります。著者の場合は「弁護士」なので、その職務においては「代弁者」との位置づけになります。

(p94より引用) 弁護士にかぎらず、立場上その意見をいわざるを得ない場合、意見としては弱い部分がたくさんあるけれど、その意見を諸事情から貫かなければならない場合が、社会ではあります。その立場もわかってあげることです。

 相手の立場も気遣うこういった作法は大切ですね。

 こういう「相手への気遣い」という点では、著者は、しばしば守旧派・抵抗勢力の姿勢として非難される「総論賛成各論反対」という手法に積極的な評価を与えています。

(p127より引用) 「総論賛成、各論反対」の表明は、相手を全否定しないという点に意味があります。・・・
 相手の意見でもよい部分はよいとしながら、より具体的な部分でのわずかな違いを問題にするのです。そうすると、相手も納得しやすくなります。・・・
 全否定ではなく、どこまでは賛成で、どこからは反対なのか。
 こういった分析的な視点は、相手に対する配慮という面だけでなく、実際に緻密な議論をするうえでも非常に重要です。

 そして、反論に限らず、自分の主張を理解してもらえる鍵は、相手から「信頼」されるかという一点に収斂されるのです。
 仮に、同じ根拠を示し、同じ言いぶりをしたとしても、発言者に対して「不信感」を抱かれていると、結局その人の主張は受け入れられません。

 「信頼」を勝ち取るには、小手先のTipsを駆使してもだめですね。



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